本とパン、「ぽん」な人々と出会って。
ずっと歩いていた、記憶はある。
「仕事」を求めて。
「人」に会いたくて。
虚無感に囚われて。
不眠と痙攣が止まらない数ヶ月を超えて。
2020年9月末。
私は、近所のパン屋あぷぷれを訪ねた。
「あの、アルバイトとか募集…していたりしますか?」
まもなく、あの頃から10ヶ月が経過しようとしている。
もう段々と、コロナ前の記憶が薄れつつある。
あぷぷれのInstagramの名物、「うぱ語」で喋るストーリーズはとうとう100回目を超え、我ながら完全にコロナ禍に適応したな、と感じる。
それでも、ふとした時に、「そういえば前はみんなで盛り上がっていたな」とか、「いつも飛行機に乗っていたな」とか。「いつもたくさんのお客さんが来ていて、忙しかったな」とか。人前で説明したり場を盛り上げることが仕事だった頃を懐かしんで、涙が出てしまう時も、ある。
「年中行事」、いや、そもそも人と会う機会自体が大幅に減り、静けさが街を覆っていた2020年の初夏。私は、ほぼ毎日朝6時に起きて約6時間(長い時には半日)の「散歩」に出掛けていた。それはもう、ありとあらゆる場所を歩く一種のチャレンジのようなもので、鶴見と菊名の間にある自宅から、東横線の元住吉駅まで向かい、徒歩で帰ってきて、また妙蓮寺まで行ってお寿司を買って帰る…というような超ロング散歩も経験した。(往復約10キロ)
今のようにワクチン接種の話も出ていなかったので、「本当にこの先何年も、世界は止まったままなのだろうか…」という漠然とした不安。そして何もせずに延々と町を散歩・1日中東横線の各駅停車に乗り続ける日常に、穏やかさどころか恐怖や焦りを覚え始めていた頃。
たぶん、土日のどちらかだったと思う。昔から馴染みのある、東急東横線・妙蓮寺駅の商店街の中に、扉の無い小さな本屋を見つけた。
本屋「生活綴方」という看板と、一方の壁にたくさんの本。
もう一方には真っ白い壁。
店員さん1人だけの店内で、ぼーっと本棚を見つめながら、「そういえば今年の春、桜がきれいな季節に立ち寄ったこともあったっけ」と思い出していた。
「ここ良いですね。最近開いたんですよね」
「はい。お向かいの石堂書店さんの姉妹店として、今年の2月OPNEしました。緊急事態宣言が出た関係で、しばらく閉めていたんですけどね」
「実は春、寒い時に立ち寄って。素敵なお店だなって思って。石堂書店さんの去年のイベント、まちの本屋リノベーションプロジェクトのイベントにも参加させていただいて…」
「あ。そうなんですね。お近くにお住まいですか」
「はい。子どもの頃から、妙蓮寺にはよく訪れていて…。春先、大切にしていた本をたくさん捨ててしまって。ここの本棚を見ていると、ああこういうの読んでいたなぁ…って思い出して」
「ほう…。じゃあ、もしよかったら、ここの本屋のお店番役、ご興味ありますか」
「へ?」
「今のところ土日だけ空いているので、できる日に3時間だけ。ここの本棚を、自分の本棚と思って、自由にしちゃって大丈夫なので」
「はあ」
…というような、まるで映画かアニメのワンシーンのようなやり取りを経て、かくして私は本屋・生活綴方のお店番役としての役割を手に入れた。
この時に私に声をかけてくれた、伊従さん。
その後、ご挨拶した三輪社の中岡さん曰く、
「詩を書く人はみんな詩人、写真を撮る人は写真家。絵を描くならば絵描き。小説を書く人なら、みんな小説家ですよ」とのこと。
これが、物語が始まる前の、真っ白いキャンパスのような本屋との出会いだった。
それから約半年後、2020年秋。
「ねぇ。Nちゃん、これから行く本屋ってどんなところ?」
「うーんとね。こたつがあるよ」
「え?本屋なのに、こたつがあるの?」
「うん、ある」
「本屋のお店番って全部で何人いるの?」
「今はたぶん、40人くらいじゃないかな」
「え‼︎40人⁉︎なんでそんなに多いの!」
「本屋さんに来たお客さんで、本屋のことを好きになった人が『店番になりたいですー』って言ってなるから、段々増えているんじゃない?」
「へー。Nちゃんみたいだね」
「お客さんがバイトになったの、初めてだもん」
「そうなの?」
「そーだよ‼︎今まではみんなママの友達とか」
「ねぇねぇ、本屋の店番、僕もなれるかな⁉︎」
「そこってさ、僕らも入っていいの?」
同時に喋られると、大変ww
「えっと。お店番は大人じゃないとダメだと思うけど、入るのは…私はお店番だから、いいんじゃないかな。一緒に行くわけだし」
「そっかぁ。パン屋が本屋に遊びに行くって面白いね。Nちゃん、午前中はパン屋で、お昼から本屋さんになるんだねー」
本+パン=「ぽん」の方程式。
厚めの上着を羽織り、人恋しくなる季節。両手に持っている、栗やさつまいも🍠、チョコレートのパン🍞は、全てお土産。クリスマスパン「シュトーレン」そろそろ発売だなぁ。。。と考えながら、私は妙蓮寺への一本道を歩いていた。
こんな風に、パン屋と本屋はつながった。
みんな加わって本屋の裏で畑作業を始めるのは、さらに数ヶ月先の出来事だ。
あぷぷれ🌸商品一覧🌸
〈食パン類〉
○食パン(1斤¥310/斤¥160)
○白パン(大¥260/小¥130)
○バゲット(大¥260/小¥130)
○くるみレーズン(半斤3枚切り¥250/1本2斤分¥1000要予約)
〈ハード系〉
○ライ麦35(¥580/ハーフ¥290)
○ライ麦80(土¥350/ハーフ¥180)
○ライ麦80くるみ(土¥450/ハーフ¥230)
○セーグル・ノワ(¥580/ハーフ¥290)
○くるみといちじく(¥200)
○メランジェ(¥300)
○メランジェとクリームチーズ(¥350)
〈カップケーキ〉
○季節の果物のクリームチーズ(¥220)
○いちごパン(¥220)終了
○ゴロッと野菜(¥220)
○コーンとマヨポテト(¥220)
○チョコバナナ(¥220)
〈ミニ食パン〉○くるみレーズン(¥350)
○ライ麦35(¥400/ハーフ¥200)
○かぼちゃクランベリーホワイトチョコ(火水、¥350/ハーフ¥180)
○かぼちゃとくるみ(火水、¥350/ハーフ¥180)
○ショコラオランジェ(¥350/ハーフ¥180)
○全粒粉のミニ食パン(水木¥280/ハーフ¥140)
〈日替わり〉
○季節のピザ(¥300)
○その日のタルティーヌ(¥200〜)
○季節のパウンドケーキ(¥200/1本¥1500要予約)
○プチパン(火水かぼちゃ、金土抹茶、¥90)
○Sさんのキャロットケーキ(火or水、¥340)
○Sさんのビーガンスイーツなど(土¥200〜)
○パニーニ(土¥300)
○ベーコンエピ(金¥300)
○抹茶とこしあん(金土、¥400/ハーフ¥200)
〈タルト〉
○くるみのタルト(¥250)
○伊予柑ピールとノワゼット(¥250)
○ベリーのアマンディーヌ(¥250)
〈調理系パン類〉
○ホットドックミニ(¥200)
○クロックムッシュ(¥350/ハーフ¥180)
○フーガストマト(¥300)
○えだまめ(¥200)
○ジャガイモのフォカッチャ(大¥250、小¥200)
〈その他パン〉
○あんぱん(¥160)
○あんバター(¥200)
○メロンパン(¥160)
○カスタードクリームメロンパン(¥300)
○カレーパン(¥220)
○新玉ねぎ(¥200)終了
○ビェノワ(¥120)
○ビェノワショコラ(¥140)
○ビェノワ紅茶レモン(¥140)
○キャラメルナッツ(¥220)
○はちみつレモン(¥220)
○チョコといちごとクリームチーズ(¥220)
○シュクル(¥160)
○シュガートースト(¥100or¥140)
○レモンカシューナッツ(¥200)
○ガナッシュ(¥200)
○スイートチョコパン(¥300)
○ボストック(大¥220、小¥160)
○オリーブサレ(¥220)
○フレンチトースト(プレーンorベリーソース、¥200)
○パンオレ(¥90)
○チーズパン(¥140)
○抹茶クリームチーズ(金土、¥220)
○いちじくあんこ(¥250)
○チョコとあんずとクリームチーズ(¥220)
○抹茶とつぶあん(金土、¥200)
○明太子トースト(¥140)
〈プチパン類〉
○スモークチーズミニ(¥90)
○レーズンミニ(¥90)
○塩パン(¥90)
○まるパン(¥90)
○全粒粉あんパン(¥90)
○チョコミニ(¥90)
○紅茶クリームチーズミニ(¥90)
〈焼き菓子〉
○チョコとナッツのビスコッティ(3本¥350)
○ディアマンショコラ(小¥120、大¥280)
○ガレットブルトンヌ(¥200)
○プレーンバタークッキー(¥280)
○ほうじ茶ホロホロクッキー(¥350)
〇コーヒークッキー(¥280)
〇抹茶のぐるぐる(¥280)
○オートミール(¥280)
○オートミールシナモン(¥280)
○くるみスコーン(¥350)
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