【推し書店の話 #2】『本屋 Title』のふたつの思い出話
総武線、中央線、丸ノ内線など、複数の電車が停まる「荻窪駅」。
北口を出て西へ徒歩10分の位置に『本屋Title』があります。
↑のリンクを貼るために久々に公式サイトを開いたんですが、『ACCESS』のページに『荻窪おすすめマップ』と題したお店のご紹介が載っていました。
荻窪の街を堪能するために、おおいに参考になりそうなページです。
さて本題、推す理由です。
文庫も単行本も品揃えのバランスが良くて、いつ行っても「欲しい本」「気になる本」との出会いが複数冊あります。
規模が大きくないからこそ、大型書店だと見逃しかねない本と出会える。
独立系書店の強みですよね。
駅を出て、てくてく歩いて行くことも含めた「体験」をくれる。そんな本屋さんです。
このお店には、印象的な思い出がふたつあります。
ひとつ目は昨年、イリナ・グリゴレのエッセイ『優しい地獄』を購入した時のこと。
店頭の台に積んであったラスト一冊が視界に入って「これ気になってたやつ!」と購入を決意。
で、お会計を終えた後に、店主さんがレジから出ていったんです。
しかし深く気にせず奥のカフェスペースへ向かい、おいしいフレンチトーストとコーヒーを堪能して、ほくほく退店しようとした時。
ふと店頭の台に目を向けると、ラスト一冊だったこの本が置いてあった空白のスペースに、別の本が置かれていることに気付きました。
あのお会計直後のタイミングで、店主さんがレジから出ていったのはそういうことだったのか…と時間差で理解しました。
多種多様な本たちの在庫数が頭に入っているのか、それともレジの仕組みで在庫数も把握できるようになっているのかは知る由もないんですが…。
それでも店頭の目立つ位置にある台に、何も置いていないスペースを残さないよう、すぐ動かれたこと。プロフェッショナルの仕事だなあ、と今でも思い出します。
ふたつ目は、6年ぐらい前の話。
この時は一人で行ったので、カフェスペースで何か読みたいな、と考えて吉本ばなな『ハチ公の最後の恋人』を購入しました。
その後、フレンチトーストとコーヒーを味わいつつ、買ったばかりの本を開きました。
150ページにも満たない短編です。
にもかかわらず、予想外なぐらいめちゃくちゃに泣いてしまうというまさかの事態。
幸いにも他にお客さんがいなかったので、顔を伏せて声を殺して、必死に涙を堪えたものでした。
時間をかけて落ち着いた頃。
さすがに長居してしまったことが申し訳なくなったので、二杯目のコーヒーを注文したんです。
そのコーヒーに、単品で注文した時についてくるものとは別の、小さなお菓子が添えられていました。
泣いてたの、バレてたんだろうな。
すみっこの席とはいえ一人しかいなかったし…。
根っからの人見知りなので、カフェ業務を担当してくださっている方とお話など出来ず、真相は分からないままです。
そしてここまで書いたところで、普通に分け隔てなく二杯目のサービスとしてついてくるんだったら若干恥ずかしいかも…とは思ったんですが、いまだに忘れ難い出来事なのでそのままにしちゃいます。
そんな感じで、品揃えも雰囲気も全部ひっくるめて、本当に大好きな空間です。長く続いてくれていることが嬉しい。
これからも頻繁に通いたい、まさしく「推し」書店です。
お近くにお越しの際は、ぜひ足を運んでみてください。