包摂の転機【第四章】海外事例の比較検討と検証③【2】失敗例から学ぶ受け入れ政策のリスク
【第四章】海外事例の比較検討と検証③
【2】失敗例から学ぶ受け入れ政策のリスク
【1,420字】
【第四章】海外事例の比較検討と検証②【1】海外事例の多面的比較
【前回から続きます】
海外の移民政策における失敗事例を分析することは、日本がこれから進むべき方向を見極めるうえでとても重要です。
移民を受け入れることは、単に外国人労働者を増やすことにとどまらず、社会全体の多文化共生に向けた包括的な取り組みに気を配る必要があります。
フランスにおける移民政策では、大規模に外国人労働者を受け入れたものの、行政の制度整備が十分ではなく、特に都市部においての労働市場及び住居供給に関する適切な支援が欠如しており、その結果として外国人労働者専用の集住地域が孤立し、地域社会との摩擦を生じました。
このような分断は、言語教育や地域住民との交流機会が不足していたこと、さらには雇用契約が不安定であったことが重なったことで深刻化しました。
フランスの事例のように、移民を受け入れた国であっても、受け入れ体制を整備する前にただ移民の数を増やすだけでは、言葉や文化の違いから双方にストレスが生じ、共生へとつながりません。
また、移民労働者の生活に関するサポート体制が不完全な場合、彼らが職場での孤立や差別を感じたり、コミュニティ内でも疎外されたりする事態が生まれ、結果として社会的な分断が拡大することとなってしまいます。
これを回避するためには、移民政策の初期段階から行政主導で、包括的な制度整備を行い、生活支援や言語教育、文化的相互理解を深めるための施策を整える必要があります。
別の事例として、ドイツも挙げられます。
ドイツは、特に他の欧州諸国よりも移民受け入れの規模が大きく、その後の社会統合に取り組んできました。
しかし、こちらも移民労働者の受け入れ時に、地域社会との連携不足や言語教育の不備が問題となりました。
その結果、多くの移民が社会に定着するには時間がかかり、時には根本的なコミュニケーションの断絶が生じて、共生が難しくなるケースも見られました。
これらの事例は、言語や文化の共有を欠くことが、移民の成功的な統合には大きなリスクを伴うことを示しています。
これらの失敗を防ぐためには、日本も同じ過ちを繰り返さないために、移民を受け入れる前に十分に社会統合モデルを意識し、移民労働者の雇用安定だけでなく、地域社会の調和を考えた包括的な施策を講じる長期ビジョンが必要です。
また、生活基盤としての住まいや労働契約の安定化を図り、地域住民との相互理解を深める活動を促進することが最重要となります。
特に、言語教育やコミュニティセンターを活用した地域交流の場を提供することで、移民労働者が居住地において孤立することを防ぎ、周囲の住民と積極的にコミュニケーションを取れるような体制を作り上げることが求められます。
このように、フランスやドイツの事例から学ぶべき教訓は、移民政策の成功には多岐にわたる継続的な努力が必要であり、特に移民が社会の一員として認められるための基盤をしっかりと作り上げることがとても大切だということになります。
これらの失敗や課題を日本に取り入れ、将来的な受け入れ政策に反映させることが、より良い多文化社会を構築するための道に繋がる政策の鍵となります。
【次回に続きます】
『良い人良い思い出を心に残そう』🙋🏼
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