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包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第一章】③

第一章 日本の人口動態や労働市場の変遷〜歴史的連続性 ③

【1,400字】

包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第一章】②
【前回から続きます】

若年者や女性、地方在住者は従来より不利な条件に置かれ、社会は静かに格差や不満を蓄積いくしかない泥沼の中に追い込まれていくのです。

 また、この時期にはグローバル化が加速し、中国やアジア諸国の台頭による国際競争激化、高度技術分野へのシフト要求などが重なり、日本企業はもはや国内限定の人的資本戦略だけでは生き残れなくなっていきます。

 ここで少子高齢化が決定的な圧力を生見出していくのです。出生率低下によって若年労働力資源は細り、熟練技能の継承すら難しくなりつつある中、企業と社会はこれまで避けてきた選択肢――外国人労働者の本格的受け入れ――を現実的なオプションとみなすようになっていきます。

 しかも、労働人口減少は産業構造転換と同時並行で進行し、サービス産業の拡大やIT化、デジタル経済への移行が、これまでの「モノづくり」と「内部労働市場」モデルにはない新たな柔軟性と多様性を必要とせざるを得なくなっていきます。

 2000年代、技能実習生制度の見直しや特定技能の在留資格創設など、政府レベルで外国人労働者受け入れの枠組みが拡大され始めました。

 これは、人口減少という制約下で経済を維持・発展させるための試行錯誤であり、同時に社会の「多文化化」を進行させる装置のようき機能していきます。

 地域社会はこれまでにない異文化接触の機会を得て、相対的にはコミュニティの再編や共生モデルの模索を迫られていきます。

 企業は日本的雇用慣行のみに頼らず、多言語対応や異文化理解、国際標準に合わせた人材マネジメント手法を身につけなければ、成長を持続することが困難になっていくのです。

 このように、戦後ベビーブームによる豊富な若年労働力を「人海改革」的に動員し、やがて「内部労働市場」の確立によって高度経済成長を支えた日本経済は、オイルショック、バブル崩壊、グローバル化、少子高齢化という一連のショックと構造転換を経て、『まったく新しい局面へと追い込まれていること』を理解する必要があります。

 『今日の労働市場再編や多文化共生への要請は、こうした歴史的連続性の果てに現れた必然の帰結である』と結論づけられます。

 「内部労働市場」モデルの優位や民族的・文化的同質性を前提とした社会像が根底から揺らぐ中、いかに新しい人的資本戦略と社会デザインを構築するかが問われているのが今日であると思います。

 まとめとして、この第一章では、これらの歴史的なプロセスと、その中核をなす人口動態、労働市場構造、雇用慣行の転換を丁寧にたどることに論点を置いてみました。

 続く章で展開される理論的枠組みや政策提言、共生社会構築への道筋を理解するための基盤を提示したものです。

 私の認識では、現在起こりつつある変化が決して偶発的なものではなく、戦後から積み重ねられたダイナミックな歴史の連鎖であり、その中には、人海改革や内部労働市場モデルといった過去の遺産と経験が、未来を拓くためのヒントとして潜んでいることを見逃してはならないことにあります。

 私は、こうした背景理解があるからこそ、理論化や問題解決策の提示が、単なる思考実験ではなく、歴史的・社会的リアリティに根差した包括的な構想として成り立つことになると考えています。


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