包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第二章】多元共生への新パラダイム④ 「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」
【第二章】多元共生への新パラダイム④「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」
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包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第二章】多元共生への新パラダイム③「包括的労働市場理論」」
【前回から続きます】
第二章の3番目の視点です。
「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」とは、日本各地の地方が直面している深刻な問題に、新たな解決策のヒントを与える考え方です。
多くの地方では、若者が都会へ移り住み、高齢化が進むことで、地域の人口は減少し、産業は縮小を続けています。
その結果、地元の産業は後継者不足で活力を失い、商店街はたくさん稼ぐことを諦めて、シャッターが降り、農業や伝統的な工芸が衰退するなど、地域全体が元気を失いつつあります。また、近所づきあいやコミュニティの結びつきが薄れ、人と人とのつながりも弱まりつつある現状があります。
こうした厳しい状況の中で、「グローバル人材」、つまり海外出身の人材が活躍する可能性が注目されています。
決して彼らは「足りない人手」を埋めるための単純な労働力ではありません。
むしろ、海外で培った感性や発想、知識やノウハウを地域に持ち込み、地域が元来持っている資源や特性を、新しい形で活用するきっかけとなり得る存在なのです。
しかし、現在の在留資格制度では活動制限が厳し過ぎた彼らの存在に対して、「グローバル人材」として日本社会が認めてこなかったことを認めるべきだと思います。
地方社会での活躍を多く期待できない制度であると言えます。
たとえば、農業の分野を考えてみましょう。地方では、高齢化や過疎化によって後継者不足が深刻です。
しかし、海外から来た人が、独自の農法や生産管理手法、ブランド開発のアイデアを持ち込むことで、これまでうまく利用されていなかった土地や作物が見直される可能性が出てきます。
現在は、その可能性を見出す道筋はまったくモデルとして成り立つ芽もありません。
しかし、新しい販売戦略やSNS活用によって、これまでローカルでしか売れなかった特産品が、国内外へと販路を広げられるかもしれません。
また、農村の生活様式や自然環境に魅力を感じた外国人が、長期的な新たな移住者となり、「田舎暮らし」の価値を再発見してくれることは、現実に高い可能性です。
介護や福祉の現場でも似たような可能性があります。
高齢化が進む地方では、介護人材の不足が深刻ですが、海外出身のケアワーカーや看護師、専門的な福祉知識を持った人々が地域に根付くことで、高齢者に対する新しい長期的なケアモデルが生まれるかもしれません。
多文化的な視点を持つ人材が加わることで、お年寄りへのアプローチがより多面的になり、互いの文化を尊重し合う温かい環境が築かれる可能性があります。
さらに、地域活性化プロジェクトや社会的なビジネス起業(ソーシャル・エンタープライズ)にもグローバル人材は大きな役割を果たせます。
観光資源の再発見や国際的な文化交流イベントの企画など、海外の目線で地域を捉え直すことで、その土地の人々自身が見過ごしていた魅力に気づくことがあります。
また、異なる文化圏から来た人たちが地域に定住することで、コミュニティは自然に多文化化します。これによって多様な人々が出会い、それぞれの価値観や習慣が交わり、新しい発想が生まれやすくなります。
地方が人口減少で苦しむ中、もし海外から多様な人材を呼び込み、その人々が地域社会の一員として活躍できるようになれば、「人が減る」という事実を新しい価値創造のきっかけに変えられます。
例えば、農業×外国人IT技術者の組み合わせで、新たなスマート農業に挑戦してみたり、介護×海外出身の料理人による高齢者に喜ばれる多文化食事プランの導入を試してみたり、観光×留学生クリエイターの力で新たな物産ブランドを立ち上げたりと、組み合わせは無限大です。
これらは決して幻想ではなく、実際に小さな成功事例が生まれ始めている領域でもあります。
「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」という考え方は、単に海外から働き手を呼ぶという発想にとどまりません。
むしろ、地域が持つ資源や特徴を改めて評価し、多文化的な人材と力を合わせることで、今までにはない付加価値を生み出す戦略です。
ここでは、外国人はあくまで「助っ人」や「代わりの労働者」ではなく、「共創パートナー」として存在します。
地域とグローバル人材が互いを高め合うことで、寂れかけた土地も、国際的な注目や新たなイノベーションを呼び込める、活気あるコミュニティへと生まれ変わるチャンスがあるのです。
このように、人口減少という厳しい現実をただ嘆くのではなく、国際的な人材交流をきっかけに新たな力を得ることで、地方にはこれまで想像できなかった活気が蘇る可能性が秘められています。
これこそが「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」が目指す姿であり、世界と地方が闘えるように、「現代の日本が抱える難題を突破する一つの有望なアプローチ」なのです。
【次回に続きます】
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