包摂の転機【第五章】人材活用と地域活性の新時代【3】地方自治体の独自性と地域連携の重要性
【第五章】人材活用と地域活性の新時代～制度・地域・企業・コミュニティ・教育の総合ロードマップ
【3】地方自治体の独自性と地域連携の重要性
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包摂の転機【第五章】人材活用と地域活性の新時代
【2】中央政府の制度設計と国際的視点【前回から続きます】
地方自治体には、地域独自の特性や資源を活かしながら多文化共生を推進する力があります。
カナダのトロント市では、自治体が中心となって移民向けの言語教育や職業訓練を整備し、地元NPOと協力しながら外国人コミュニティとの橋渡しを担っていると報告されております。
あるトロント市職員へのインタビューでは、「国の移民政策の枠組みを尊重しつつ、地域の現状に合わせた柔軟な支援制度を構築することがカギです。私たちは、移民が直面する生活上の課題を把握し、NPOと連携して小回りの利く支援を提供しています」
との言葉が印象的でした。
日本国内でも、ある地方都市が外国人技能実習生向けの研修センターを設置し、地元企業と連携しながら研修プログラムを改善している事例があります。
そこでは、研修内容を随時アップデートしながら、多文化コミュニケーションや地域行事への参加を取り入れることで、外国人技能実習生が早期に地域社会へ溶け込みやすくする努力が行われているとのことです。
自治体担当者は、「中央政府の制度だけでは拾いきれない課題を、地元企業やNPOと話し合いながら適宜修正できるのが、地方自治体の強みです」と語っておりました。
こうした試みは、地域の実情に合わせたきめ細かな対応こそが、多文化共生を前進させる原動力になることを示唆しています。
ドイツの一部自治体では、移民コミュニティとの定期的な対話会を開き、地域づくりに関するアイデアを双方が共有する仕組みが根づいていると伺います。
インタビューを受けた自治体職員は、「住民投票の制度設計では、まだ国の規定に縛られる部分もありますが、地域が主体的に動いて、多言語の情報発信や対話イベントを増やした結果、移民の方々から新たな観光企画が提案されるなど、思わぬ成果が出始めました」と述べていらっしゃいました。
こうした事例は、自治体が中央政府にただ従うだけでなく、独自のイニシアチブを持つことが、多文化共生の幅を広げるうえで重要であることを証明していると思います。
自治体が主体的に動き、中央政府や企業、NPO、教育機関などのパートナーと連携するからこそ、地域に適した多文化共生のかたちが現実化しやすくさせてくれています。
しかも、そこには現場ならではの即応性が発揮されるため、外国人住民が抱える生活上の問題やコミュニケーションギャップなどを素早く把握し、必要な施策を臨機応変に打てる利点があるのです。
カナダのトロント市やドイツの移民受け入れ自治体の成功例は、日本にとっても大いに参考になるのではないでしょうか。
日本国内の先進事例として挙げられる地方都市の研修センターは、外国人技能実習生が地域コミュニティに溶け込み、地元企業の生産性向上につながるような好循環を生み出しているとの報告がなされています。
そこでは、自治体がコーディネーターとして活躍し、企業が抱える人材不足や外国人の職場定着の問題を密に聞き取りながら、必要な研修や生活サポートを的確に用意しているそうです。
まさに、自治体だからこそ行える「顔の見える調整」が重要な役割を果たしているというわけです。
多文化共生を推進するうえで、地方自治体の独自性や地域連携の仕組みが持つ意義はきわめて大きいと考えられます。
中央政府からの一律的な支援策だけでは、各地域の多様な状況に十分対応しきれない場合があるからでございます。
むしろ、地域ごとの特性や資源を活かしながら、外国人労働者や留学生、起業家など多彩な人材を地域の一員として迎え入れ、共に成長をめざす土壌を育むことこそ、自治体が貢献できる最も大きなポイントではないでしょうか。
こうした主体的な取り組みが全国各地で積み重なれば、日本全体としての多文化共生と地域創生が大きく前進する可能性が開かれると期待されるところです。
【次回へ続きます】
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