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包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第一章】②

第一章 日本の人口動態や労働市場の変遷〜歴史的連続性 ②

【1,090字】

包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第一章】①
【前回から続きます】

こうした内部化モデルにより、製造業を中心とした日本の企業は安定的な品質向上と技術蓄積を可能にし、国際競争力の源泉を確保することとなっていきます。

 内部労働市場は、労働者にとっては安定した職業キャリアと生活設計の基盤となり、企業にとっては熟練労働力を長期的に確保する戦略的武器となっていきました。

 高度経済成長期、日本が「輸出立国」として世界で確固たる地位を築いた背景には、この内部労働市場モデルが生み出した品質管理や技術改良の蓄積が大きく寄与していきました。

 しかし、このモデルには初期からいくつかの歪みが存在していました。

 女性や地方・周辺地域出身者、外国人労働者への就業機会は制限的で、男性中心・都市集中型であることが前提とされていました。

 また、非正規雇用やパートタイム労働者は限定的な存在にとどまり、異なる属性・背景を持つ労働者が正社員ルートに組み込まれる機会は十分に拡張されないままとなりました。

 結果的に、社会は「一億総中流」といった幻影を抱きながらも、雇用機会と待遇に潜む潜在的な不均衡を抱え込むことになっていくのです。

 1970年代に入ると、オイルショックが経済を揺さぶり、成長路線が転換を迫られることとなっていきます。原材料価格やエネルギーコストの上昇は、従来の「内部労働市場」モデルの維持を難しくし、企業は経営の合理化とコスト削減を求められるようになっていきます。

 さらに1980年代末にはバブル経済が沸き起こり、不動産や株式市場の高騰が表面的な繁栄をもたらしていきます。しかし、1990年代初頭のバブル崩壊によって企業収益は急速に悪化し、抱え込んだ過剰人員への対応、さらには終身雇用・年功序列が前提としてきた安定的成長シナリオの崩壊が顕在化することとなりました。

 1990年代以降、日本経済は「失われた10年」「20年」と呼ばれる長期停滞期に突入していきます。企業は人件費を抑えるため非正規雇用を拡大し、多様な雇用形態が普及することが正義かどうかも充分な議論されずに進む「堂々たる企業理論に従わせる社会」となっていきす。

 これは一方で、内部労働市場が前提としてきた均質な技能蓄積や安定的なキャリア形成を揺らがせ、不安定就業者の増加や賃金格差の拡大をもたらしていきます。

 若年者や女性、地方在住者は従来より不利な条件に置かれ、社会は静かに格差や不満を蓄積いくしかない泥沼の中に追い込まれていくのです。

【次回に続きます】


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