包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【第二章】多元共生への新パラダイム⑤ 「三つのモデル」
【第二章】多元共生への新パラダイム⑤ 「三つのモデル」
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包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望
【第二章】多元共生への新パラダイム④「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」
【前回からの続きです】
少子高齢化や人口減少、さらに外国からの労働力受け入れといった日本社会の重大な課題を、まったく新しい観点から総合的に捉え直すために考えたのが三つのモデルが、①「社会統合モデル」②「包括的労働市場理論」③「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」という三つの枠組みです。
従来の議論では、経済成長や雇用慣行の歴史的な変遷を俯瞰するだけで、ときに表面的な理解に終わることがありました。
しかし、現代の複雑な状況を乗り越えるには、多角的なアプローチが欠かせません。そこで鍵となるのが、これら三つのモデルが示す多面的な視点だと考えてきました。
一つ目の「社会統合モデル」では、単に外国人労働者や留学生を「不足する人材の穴埋め役」と位置づけるのではなく、社会全体の新陳代謝を促す主体とみなす発想が重視されます。
異文化間の交流や摩擦を、社会を活性化するきっかけとして捉え、共生の仕組みを組み上げて、地域産業と日常の暮らし、経済発展に繋げていこうとするのが、このモデルの特徴と言えましょう。
一方、二つ目の「包括的労働市場理論」は、企業と従業員との関係を狭い範囲で考えるのではなく、地域社会や行政、教育機関、さらには海外のネットワークとの連携までひとつの大きなしくみとして再構築する必要性を訴えます。
こうした考えに基づけば、働き方改革や非正規雇用、リスキリング(学び直し)など、多様な課題をそれぞれ別個に扱うのではなく、一元的な視点から総合的に取り組むことができるようになります。
つまり、労働市場全体を俯瞰し、そこで生じるさまざまなテーマを有機的につなげる発想が重要になるのです。
そして、三つ目の「地域社会再生とグローバル人材活用の交差点モデル」は、地方の人口減少や産業の衰退など切実な課題にスポットを当て、国際的な人材との協働を通じて地域に眠る可能性を発掘し、新たな魅力を世界へ発信していく方法を示唆します。
農業や観光、伝統産業など、古くから続いている活動や文化に海外の技術や視点を取り入れることで、意外な形で地域のイノベーションが生まれる素養を交差点での出会いに求めていくことです。
これら三つのモデルが持つ意義は、もはや旧来の前提や常識だけでは解決できない社会問題に、斬新な見方を提供している点にあります。人口減少を単なる逆風とみなすのではなく、新しい連帯や価値創造の機会ととらえ直す。
外国人との共生を必要に迫られた苦肉の策ではなく、未来を切り開くための協働と考える。企業や労働者だけでなく、行政や教育機関、地域コミュニティが一体となって働き方や社会基盤を設計し直す。
こうした統合的な思考によって、社会の持続的な発展と多文化共生が共に成立する道筋が見えてくるのです。
すなわち、この三つの理論枠組みは、単なる理論の寄せ集めたものではなく、歴史的経緯や国際的な流れをふまえながら、新たな価値観と実践を結びつけるための重要な視点を軸に構築してみたものです。
日本社会が少子高齢化や国際競争といった困難のなかで成長と共生を実現するためには、こうした多面的な視野と柔軟な連携のしくみを逆説的に、意識的に育てていくことが求められるのではないでしょうか。
【次回に続きます】
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