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包摂の転機~人口減少時代の労働市場改革と新たな共生社会の展望【序論】①

今日から、長い連載となる論説を展開したいと思います。今までの断片的なものを構築し直すものにしていきます。

序章①【1,108字】

 日本社会は、今、深刻な転換点に立たされています。少子高齢化が進行する中で、労働力不足と地域社会の疲弊、さらには社会保障制度の維持困難性といった問題が次々と顕在化し、国全体がかつて経験したことのない課題構造に直面しています。

 かつて日本は、人口増加を前提とした経済成長モデルを確立し、その恩恵を享受してました。戦後復興期から高度経済成長を経て、豊富な若年労働力は国内の産業発展を支え、地方から都市への人口流動が高効率な生産と消費を可能にし、社会保障制度は現役世代の厚い層によって下支えされてきました。

 だが、そうした「人口ボーナス」を当然視してきた時代は終わり、今や出生率の低迷と高齢者人口の増加は、労働市場の仕組みからコミュニティのあり方までを根底から揺るがしています。

 このような人口動態の変化は、決して生産年齢人口の単純な増減にとどまる問題ではないことは明らかです。労働市場では、人手不足を背景に新たな雇用形態が模索され、企業は求める人材像を再定義しなければならなくなっています。

 また、地方都市や農村では、若者の流出による空洞化が深刻化し、地域コミュニティを維持すること自体が課題と化しています。

 一方で、外国人労働者の受け入れ拡大や在留資格の緩和によって、国内に滞在する異文化背景をもつ人々の数は確実に増加し、社会内部に多文化的要素が根付き始めています。

 こうした変化は単なる人的補完策で終わらず、言語・習慣・宗教・生活観といった多層的な違いを抱え込むことで、日本が従来当然とみなしていた「同質性」を前提とした社会モデルそのものを問い直す契機となっています。

 グローバル化やテクノロジーの進展もまた、この状況に拍車をかけています。

 かつて経済成長を牽引した製造業は、今や国境を越えた供給網と激しい国際競争の中に組み込まれています。

 情報通信技術や自動化技術は、新たな生産性向上策として期待される一方で、人々の働き方や雇用関係を根底から再編する圧力でもあります。ロボットやAIが普及するにつれ、単純労働の需要は縮小する一方、高度人材や異文化対応力を有した人材へのニーズが拡大していきます。

 こういう視点において、人口減少は、国内の人的資本戦略を練り直す要請となり、世界中から多様な人材を惹きつける社会インフラの整備と、旧来の価値観を超えた新たな文化的共存関係の構築が求められることとなります。

【次回に続きます】


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