包摂の転機【最終章】【6】連載最終_包摂の転機としての経済的リアリズムの意義
包摂の転機【最終章】【5】展望:包摂が日本の国力低下を逆転させる
【前回から続きます】
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日本社会が円安・低賃金・国力低下という厳しい現実に直面する中、外国人労働者や留学生を「どう扱うか」は、もはや社会的・文化的な側面だけの問題ではありません。
むしろ、「稼ぎたい」という外国人自身の強い金銭的モチベーションをどう活かすかが、企業や自治体が新たな付加価値を創出し、国際競争力を高めるための決定的なカギとなるでしょう。
マガジンのタイトル『包摂の転機』が示すとおり、ここで重要なのは、外国人を一方的に利用するのではなく、彼らの経済的利害を尊重しつつ、日本社会全体が“高付加価値モデル”へと移行するターニングポイントを迎えるという視点です。
たとえば、これまで「安い労働力を確保したい」という発想だけで外国人材を受け入れてきた企業や自治体にとって、円安が進行する今こそが、付加価値の追求と報酬アップの両立に向けた体制を構築する絶好の機会となり得ます。
たとえば、円安基調の下、輸出型企業は海外市場へ製品を売りやすくなりますが、単にコスト競争力を高めるだけでは長期的な成長は期待しづらいでしょう。そこに外国人材が持つ国際的なネットワークや母国語のスキル、異文化の感覚を掛け合わせることで、思わぬ国や地域へ輸出を拡大するチャンスが生まれます。
さらに、「売れた分だけボーナスを外国人スタッフに還元する」といった仕組みを取り入れれば、外国人は“日本で稼げる”という実感を得やすくなり、長期定着にも前向きになりやすいと考えられます。
このように外国人の金銭的利害を包摂することが、企業や自治体の利害(付加価値創造・地域経済再生)と見事に合致すれば、まさに“転機”が訪れるのです。
こうした形で外国人が「日本で十分稼げる」「長期的に生活できる」仕組みが整えば、海外の働き手たちも日本を魅力的な市場だと再評価します。
円安による給料の目減りが懸念される中、付加価値の高いビジネスや海外市場での成功に基づく報酬アップが見込めるなら、外国人労働者は短期間の稼ぎにとどまらず、長期的なキャリアを日本で築く意義を見いだすでしょう。
そして企業や地域社会も、海外販路の拡大やブランディング向上、国際競争力の再獲得などの恩恵を得られ、経済と共生の両面で“逆転”を成し遂げる可能性が高まります。
また、農業や介護といった人材不足に悩む分野においても、外国人材が単なる“不足の穴埋め”で終わるのではなく、彼らが海外販路の開拓やコミュニティイベントの企画といった“プラスアルファ”の役割を果たすことで、企業や自治体にも新たな収益とブランド力がもたらされます。
こうした好循環の前提となるのは、外国人の金銭的モチベーションを決して軽視せず、正当に利益をシェアし合う仕組みを編み込むことでしょう。さらには、日本人社員たちにとっても良い刺激となり、前向けでより積極的な社風への変革が果たされると思います。
たとえば成果連動型の賃金制度を導入し、「外国人のアイデアや海外ルートで売上が伸びたら、その分を本人に還元する」と明示しておくのです。また、日本人社員たちにもその仕組みを導入して、一体となれる仕組みを構築することができます。
そうすれば、外国人も企業や地域の成長を自分事として捉え、高い意欲で挑戦を重ねるインセンティブが生まれます。
これこそが、“包摂”が経済的リアリズムと結びついたときに生まれる大きな意義です。つまり、多文化共生や外国人との共存を“人道的”あるいは“抽象的”に語るだけではなく、日本企業や自治体が円安やGDPの低下という苦境から脱するための具体的な経済戦略として位置づけるのです。
ここで外国人の高い金銭的欲求を“エンジン”として活用し、同時に日本の産業や地域社会にイノベーションを巻き起こせば、労働市場の再編と共生社会の構築が同時並行的に進み、国力を再び押し上げるだけの持続力が獲得できるかもしれません。
一方で、そうした仕組みを整えずに安価な労働力として使い捨てる方向に固執すれば、外国人の早期離脱や在留資格の制約などによって、企業や地域はさらなる衰退を余儀なくされる恐れが高いのです。
だからこそ、これからの日本にとって“包摂の転機”を本当に起こすためには、外国人材の経済的利害と日本の産業や地域社会が国際競争力を取り戻す必要性を、あえて正面から統合する戦略が不可欠となります。
外国人に付加価値の創造を任せたら不正利用されるかもしれないと懸念する企業や自治体もあるでしょうが、そのリスクを管理しつつ、思い切った利益配分のルールを導入すれば、双方にとって計り知れないリターンが待っています。
まさにこの視点こそが、「外国人の強い金銭的モチベーションを生かし、日本社会も高付加価値モデルへ転じる」という“包摂の転機”の核心なのです。
『良い人良い思い出を心に残そう』🙋🏼
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