HRテックカンファレンス2024から令和以降のHRトレンドを分析してみた
HRテックカンファレンスは世界最大の人事・HRテックの祭典だ。
米国における最新のHRの潮流がメインだが、大体3-10年後くらいに日本でも話題になるテーマが集まっている。急速に進化するHRテクノロジーの世界における最新のトレンドや戦略を探るために、多くのHRリーダーや専門家が参加するイベントになっている。
今年2024は9月末に実施されたが、ジェネレーティブAI、スキルベースのタレントマネジメント、データ駆動型の意思決定、従業員ウェルビーイング、そしてタレントモビリティといった重要なテーマが取り上げられ、HR業界における革新を支えるさまざまなテクノロジーやプラットフォームが話題になったが、各項目を主に米国の記事中心に分析してみる。現地ラスベガスに行きたかったが自社カンファレンスと思いっきりバッティングしたため、外部記事の情報のみになるが、それでも参考になる部分は多々あった。
1. 吹き荒れるジェネレーティブAIの嵐(これが一番注目されたトピック)
ジェネレーティブAIは、2024年のHRテックカンファレンスで最も注目されているトピックの一つ。
世の中AIばかりで食傷気味だが、人事界隈でのAI活用はあまり日本国内では語られておらず個人的には新鮮だった。
AIはすでに多くのHR業務に浸透しており、米国のテック企業は採用やタレントマネジメントの自動化、データ駆動型の意思決定などで広く活用されているとのこと。
ジェネレーティブAIはこれらの機能をさらに強化し、特に従業員のスキル管理、キャリアパスの最適化、パフォーマンス向上に寄与する取り組みを指す。
代表的なサービスには、Eightfold AIやGreenhouseが紹介されていた。
Eightfold AI は、AIを活用して従業員のスキルを解析し、最適なタレント配置やキャリア開発を支援するプラットフォーム。
Greenhouseは、AIを用いて採用プロセスを効率化し、候補者体験を向上させるソリューションを提供
さらに、Visier というピープルアナリティクスツールは、企業がリアルタイムのデータを活用して従業員のパフォーマンスやエンゲージメントを分析し、HRの意思決定をサポートするAI技術がウリ。
まだ、実証効果が出ていないが、HR業務全体がより迅速かつ効率的に行われ、組織のパフォーマンスが飛躍的に向上することが期待されている
筆者の個人的な経験則による意見だが、会社によって「企業文化」「企業側に求められる人材要件」「活躍すぎる条件」が業種・規模が同じであっても、違いすぎるので、学習データがwebベースであればあまり参考となる結果は見出だせない印象だが、今後気になるトピックです。
2. スキルマネジメント(これが個人的に最も面白かった)
スキルが「ジョブ型にうっすら移行しつつある社会において、企業間の新しい通貨」としての役割を強めている(らしい)中で、スキルベースのタレントマネジメントはHR戦略における重要なテーマとなっている。
そもそも人事とは「ビジネスにおいて、明確な差を生むための、人の採用・オンボーディング」を行うことだと定義しているが、ビジネスにおける重要な成果指標である「売上指標」を高めるためにはこの3つしか基本的にはない
その中で①メンバー個人の成長に寄与するものが「スキルマネジメント」である。
従業員のスキルを正確に把握し、それを基にした戦略的なタレント配置やキャリア開発は、変化の激しいビジネス環境での競争力を維持するために欠かせない。
そして、日本は「ひたすら量で成長させる方法論しか知らない人が多い」国なので、残業規制が入った2017年あたりから、明らかにメンバーを成長させられる企業とそうでない企業が明確化して、その競争力にも差が生まれていることが、国全体の課題だと認識している。
非常に重要なトピックだと感じるのは気のせいか。
弊社は国内初の「スキルマネジメント」サービス「コチーム」を展開している。
「即戦力採用より、速戦力育成」をコンセプトにしているが、採用難・人口減・成長させることが苦手と3拍子揃った日本なので、スキルマネジメントの領域は間違いなく伸びると思う。
この分野では、Degreedや老舗のCornerstone OnDemandといったプラットフォームが紹介された。コーナーストーンは以前と変わらず実際はただのオンライン学習プラットフォームなので紹介割愛するが、Degreedは、スキル管理と学習支援を統合したプラットフォームで、従業員のスキルギャップを特定し、適切な学習機会を提供することで、スキル開発促進につながる。
スキルギャップを見つけられるところがポイントだろう。
ただ、まだ米国においてもただのEラーニングの域を飛び出ていないというのが残念。
ロミンガーの法則というものがあるが、研修の効果は非常に限定的で、座学における成長に寄与できる領域は多くても10%ほどしかない。
実践につながらないと学びの意味が非常に薄くなるからだ。
この領域はもしかしたら日本がリードできるかもしれないという可能性も感じたセッションだった。
来年はもっと進化したスキルマネジメントのサービスが登場するのではと楽しみにしている。
3. データ駆動型HR戦略 (これは特に面白みがなかった)
HRテクノロジーの進化に伴い、データ駆動型のHR戦略が急速に広がっていて、ピープルアナリティクスは、HRがリアルタイムで従業員データを分析し、パフォーマンスやエンゲージメントの向上に向けた効果的な意思決定を行うための強力なツールを指す。
代表的なピープルアナリティクスツールには、上記で紹介したVisierやSAP SuccessFactorsが紹介された。進出のSAP SuccessFactorsは、大手向けの人事管理システムとアナリティクスを統合し、企業のパフォーマンスを向上させるためのソリューションを提供している。※ちょうど先日タクシーチャンネルで「中小企業に使えるSAP」といったCMが流れていて、中小を狙っていく戦略取っていそうだが果たしてどうか。セールスフォースの二の舞いになりそうだが。。
人事におけるデータ活用のトピックは別に過去からの流れの順当進化で、個人的に上に書いた本来の人事目的である「ビジネスの成果につながるか?」というところが取り上げられず未知数だったのと、トピックになっていたが参照記事も少なかったのでこのあたりで割愛。
4. 従業員ウェルビーイングとエンゲージメント向上 (これもさんこうになった)
コロナ以降のHRテックカンファレンスで毎回話題になるが、従業員のウェルビーイングとエンゲージメントは、リモートワークやハイブリッドワークの普及に伴い、HR戦略における中心的な議題だった。
HRテックカンファレンス2024では、実際にウェルビーイングを改善し、エンゲージメントを高めるためのテクノロジーが多く紹介されていて、これは日本でも受け入れられそうに感じた。
例えば、Fidelity HealthやVirgin Pulseのようなプラットフォームは、従業員の健康管理だけでなく、財務健全性(ここが面白い)をサポートし、全体的なウェルビーイングを向上させるツールを提供している。
去年も従業員に給与を前払いするサービスが紹介されていたが、そういったサービスも加えたオールインワンサービスが成長しているようだ。
パーソナライズされた健康サポートを提供して従業員の健康を維持しながら、エンゲージメントスコアを計測できる機能もあり、健康とエンゲージメントを両立させるサービス思想が日本のサービスと決定的に違うことか。
ちなみに健康とエンゲージメントを分けずに両立を狙うことは、エンゲージメントスコア向上によるビジネス成果創出の観点でいうと、まったくもって合理的。なぜ日本でこういったサービスがないのか不思議でしょうがない。
5. タレントモビリティと内部昇進の促進
外部からの採用に依存せず、社内でのタレントモビリティを促進することは、HR戦略の中で重要な要素だった。HRテックカンファレンス2024では、AIを活用して従業員のスキルやキャリアパスを最適化し、社内でのキャリア開発を推進するためのテクノロジーが紹介された。
これは上記の「スキルマネジメント」と同じ文脈ではないかと感じる。
代表的なプラットフォームには、iSolvedやGloatが紹介された。
iSolvedは、従業員のスキルやキャリア志向に基づいたタレントモビリティを支援するプラットフォーム。
適切な内部昇進を促進。昇進に焦点を当てているのはおもしろい。日本のような「管理職になりたくない人」が大半を占める国にどれだけ効果的かは非常に興味がある。
また、投資対効果を明確化しているのが潔い。キャッチコピーからも、給与まわりの改善という打ち出し方は効果的なのだろう。
Gloatは、AIを用いて企業内のタレントの適切な配置やキャリアパスの最適化をサポートするソリューション。
結論:エンプロイーエクスペリエンスとスキルマネジメントに尽きる
HRテックカンファレンス2024は、急速に変化する働き方の未来に対応するため、最新のHRテクノロジーを中心に議論が展開されます。特にAIやジェネレーティブAI、ピープルアナリティクス、タレントマネジメントの進化、そして従業員ウェルビーイングやタレントモビリティに注目が集まった。
企業は、AIを活用して業務を自動化し、従業員エクスペリエンスを最適化することで、より多様で柔軟な働き方を実現することが求められているが、HR部門は戦略的パートナーとしての役割を強化し、ビジネスの成功に直結する人材マネジメントを実現しないと生き残れない時代に突入した感がある。
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