トットちゃん〈黒柳徹子さん〉とお話して世界を知った日の話
小学校6年生のとき、わたしは全国紙の小学生新聞のリポーターに選ばれた。
リポーターは、自分が感じたことを書いて新聞社に送ると、掲載してもらえたり、著名人へのインタビューに参加できたり、いろんな素敵な経験をさせてもらえた。
わたしが書いた記事は、目が見えにくいわたしの勉強の仕方や本の読み方、そして拡大写本を書いてくださる方への感謝の気持ちを込めた記事だった。
拡大写本とは、弱視のわたしが教科書を読むために、当時はボランティアさんたちが全ての教科書を手書きしてくれた大きな文字の教科書のこと。
noteにもその話を書いたことがある。
母も、拡大写本を書いていて、ピアノの楽譜も全て大きな手書きの文字にして、練習していた。
今考えれば、あのころのわたしが今のわたしの原点だったのかもしれない。
一人でも多くの小学生に、弱視のことを知ってほしいと思って、新聞に記事を載せてもらっていたのだ。
なんだかnoteを書き始めたわたしと、小学校6年生のわたしが重なる。
著名人へのインタビューは、小学生リポーターのなかから、その著名人に会って対談することがいいだろうと思われる人を、新聞社側が選んで決めたようだった。
野球好きの子は野球選手、お料理好きの子はお料理関係のお仕事の方など。
そして、わたしがインタビューさせていただけることになったのは、黒柳徹子さんだった。
なぜわたしが黒柳徹子さんなのか…それはやっぱり、読書好きで、【窓際のトットちゃん】を大きな文字の拡大写本で読んでいたことが理由だった。
新聞社から電話が来た日、母が興奮していたのを覚えている。
「リコちゃん!黒柳徹子さんに会えるのよ!!」
母、大興奮。わたしは、最初はよくわからなかったのだが、母に聞くとそれがわたしの大好きな”トットちゃん”だと知って、ドキドキした。
そして同時に不安な日々が始まった。わたしはうまく話せるのだろうか…。
だけど不安がっている場合ではない。新聞社から「これで勉強しといてね~」と黒柳徹子さんのウガンダ訪問のビデオや本が送られてきて、ユニセフのことや世界の貧困のことなど、学ばなければいけないことが沢山あったからだ。
インタビューまでの期間、わたしは一生懸命、ビデオを見て、本を読んで、自分の感じていることをまとめた。
世界の子どもたちの現状を、よく知らなかったわたしは、驚くことばかりだった。
そして迎えたトットちゃんこと黒柳徹子さんとの対面。インタビュー当日。
インタビューはホテルの一室で行われた。
わたしのほかに、あと2人。5年生の女の子と2年生の男の子。
わたしたちが部屋で待っていると、黒柳徹子さんがやってきた。
テレビで見る黒柳徹子さんのまま。とても明るく包み込むような優しさのある、そしてパァッと存在感のある素敵な方だった。圧倒された。
最初に、それぞれが自己紹介をした。事前に伝えられていた情報もあったのか、黒柳徹子さんは優しくこちらを見ながら、
とわたしに微笑んでくれた。
わたしは、黒柳さんの真横に座っていたので、そのパァ~っと明るい存在感に圧倒されて、恥ずかしがっていたようなきがする。
インタビューが始まって、わたしたちそれぞれがユニセフのことや貧困のことなど思い思いに質問をして。
それから、黒柳さんは途切れることなく、色んなお話を聞かせてくださった。
なんだか10歳のときに亡くなった明るくおしゃべりな祖母に似ている雰囲気だな、と思った。
わたしは、ずっと緊張していたけど、黒柳さんの話ぶりに引き込まれて。
あのトットちゃんがこうして大人になって、こんなにすごい事をされていて、そのお話をわたしが聞けている。それがすごく嬉しかった。
わたしはシャイだったので、もう一人の女の子のように、積極的に話しかけることはできなかったけれど。
それでもいくつか質問して、会話ができたことが嬉しくて。トットちゃんと話せた!って。
そして、黒柳さんが話してくださった、一人一人が身近に困っている人を助けることの大切さや、その先にある世界にも目を向けてみることの大切さを胸に刻んだ。
6年生のわたしはそんな風に思ったことを覚えている。
黒柳さんは、トットちゃんだったころ沢山大変な思いをした。
でも、あんなに素晴らしい人になっている。
わたしもがんばらないといけない。
身近にいる困っている人に優しくする。その先にあるもっと広い世界にも目を向ける。
わたしは大切なことを学んだ。
あの日わたしが会ったのは、黒柳さんだけれど、わたしが小さなころから何度も本のなかで出会っていたトットちゃんだったから、わたしの心に大きく残ったのだ。
もうすぐ息子が1年生になる。
わたしが【窓際のトットちゃん】に出会った年齢に近づく。
男の子でも読むだろうか?読んでほしい。そして、あのときわたしが感じたトットちゃんへの気持ちと、黒柳さんとの出会い、世界の話…いろんなことを話したい。
身近な困っている人に手を差し伸べてあげる優しい子に育ってほしいから。