属人化がもたらす様々な弊害と対策方法
ある経営者の方は「属人化こそ諸悪の根源だ!」とおっしゃっていました。確かに属人化は多くの問題をはらんでしまっています。では具体的にどんな問題があるのでしょうか。今回は「属人化がもたらす弊害」についてまとめてみました。
属人化がもたらす弊害
知識の集中:
特定の従業員がビジネスプロセスやプロジェクトに関する重要な知識を持っている場合、その人が退職したり不在になった際に大きな問題が生じる可能性があります。
業務の停滞:
特定の従業員に業務が過度に依存している場合、その人が仕事を遂行できないと業務が停滞する可能性が高まります。
リスクの増大:
特定の個人に依存している場合、その人の判断ミスやエラーが致命的な結果をもたらす可能性があります。このリスクは分散されていないため、組織全体に影響を与える可能性があります。
スケーラビリティの低下:
プロセスやプロジェクトが特定の個人のスキルや経験に依存している場合、組織が成長するにつれてスケーラビリティが低下します。新しいメンバーが迅速に参加することが難しくなります。
業務の均等な分担が難しい:
属人化が進んでいる場合、業務の均等な分担が難しくなります。そのため、従業員のモチベーションや効率が低下する可能性があります。
変化への適応性の低下:
ビジネス環境が変化する際に、属人化されたプロセスや知識が新しい要件に適応できない可能性があります。これが組織の変革への適応性を低下させます。
その他にも多くの弊害があるでしょう。実は上記のような属人化がもたらす弊害が「ストレスチェック」で示唆されることがあります。ストレスチェックをうまく活用している企業ではあるチームの問題について属人化が課題であると設定することができ、属人化解消を進めた結果高ストレス者が減少し職場の一体感が醸成されたという事例もあります。ストレスチェックと属人化については別記事にて記載していこうと思います。
属人化された部署では次のような問題が現実として起こっています。
1か月程度の男性育休の取得でチームが崩壊(うまく引継ぎができておらず、何からカバーしていいか分からず)
チーム内で業務のプロセスや個人スキルなどが可視化されておらず、結果サポートし合うということが難しい(気持ちはあるが、何を手伝っていいか分からないから手を出せない状態)
上長が部下の業務を把握しきれず、納期限切れ、提供するサービスの品質低下(またはバラつき)が発生
入社して戦力化されるまでの育成プランがなく、仕事を教えるリーダーの元につければラッキー、そうでなければ不幸という状況が作り出される
これらの問題は経営層のみならず、管理職の頭を悩ませていると思います。我が社でも同様の事態があったな…と離職手続きをしたことを思い出す方もいるのではないでしょうか。
ではどのようにしてこの「属人化」という強敵に挑めばよいのでしょうか。
属人化問題への対策
マニュアルツールでは不十分
属人化問題への対策としてよく上がる方法がマニュアル作成です。マニュアル作成により業務の標準化ができ、誰がやっても同じ結果が出る仕組みを作り出せることになります。最近ではマニュアルツールも様々なものが出てきており、SaaSと言われるクラウドで稼働するサービスが増えてきています。
マニュアルツールもサービスによって仕様が異なり一概に言えないので、一般的にマニュアルでは対応できない(解決できない)属人化問題について記載しようと思います。
マニュアルがあることと、できることは別。業務遂行における知識・技能や職権・責任などはマニュアルとは別に規程しなくてはならない
マニュアルがあっても現在進行形で誰がどのような業務を遂行しているかのタスク管理は別問題となり、マニュアルで解決できることは一部でしかない
そもそもマニュアルを作成するための棚卸しができない
という問題が発生します。では順に解説していきます。
マニュアルがあることと、できることは別。業務遂行における知識・技能や職権・責任などはマニュアルとは別に規程しなくてはならない
「マニュアルがあることと、できることは別」というのは感覚的に分かるのではないでしょうか。極端な例えになりますが、ある心臓手術のやり方がマニュアル化されていたとして、素人が手術できるわけがありませんよね。やり方が記載されていることと、それを「出来る」ことには大きな隔たりがあります。マニュアルではその業務を遂行するために必要な知識・技能要件が明確になりにくいということ(それを査定する仕組みもない)と、遂行に際しての職権・責任までは記載することができないということに最大の問題があります。
マニュアルがあっても現在進行形で誰がどのような業務を遂行しているかのタスク管理は別問題となり、マニュアルで解決できることは一部でしかない
マニュアルを作成することと、業務を管理することは別の仕組みになってしまいます。業務を作業レベルに落とし込みタスク管理ツールで管理していても、マニュアルは別で管理することが大半なためマニュアルが形骸化していく可能性が出てきます。気づいたら「1年前のマニュアルで更新がない」ということがザラに出てきます。つまり日頃の業務遂行プロセスとの連動がないことでマニュアルが更新されず、結果属人化から脱することが難しいということになってしまうのです。
そもそもマニュアルを作成するための棚卸しができない
表題の通り、業務の棚卸し自体が困難でありマニュアル作成ができないということです。業務の棚卸しができない要因としては、日々の業務が多忙であり棚卸しの時間がない、棚卸しの方法が分からない、自部署の業務は標準化しにくく棚卸し自体向いていないと思い込んでいる、というパターンが考えられます。いずれのパターンも、私が現場の管理職から直接聞いたリアルな声です。
属人化対策の具体的方法
属人化対策の具体的な方法について解説します。まずは部署の中から数名ピックアップし、1日の業務を出勤から退勤まで書き出してもらうことから始めます。
これは職務予備調査票と言われるフォーマットを使って行います。職務予備調査票では下記のことを書き出していきます。
業務の中分類
小分類
遂行レベル
発生頻度
具体的課業内容(手順)「~を〇〇する」という表現で記述
遂行上の問題点およびリスクとその解決方向
なかなかうまく書き出すことができないことが多いので、コンサルタントはうまく引き出してあげる必要があります。上記の職務予備調査票をしっかりと作成することで、その部署が抱えている業務内容の骨格が見えてきます。
まだ骨格が見えたにすぎませんので、ここからしっかりと肉付きをしていく作業に移ります。次に使うフォーマットは「プロセス展開表」というツールになります。
プロセス展開表では業務を作業レベルにまで落とし込んだ小さなブロックにしていきます。その小さなブロックに対し、下記の項目を洗い出していきます。
KPI
アウトプット
インプット
機能内容(PDCAのどの機能があるか)
必要とされる知識レベル
必要とされる能力レベル
遂行上のリスク
関連プロセス
以上のものを洗い出し、設定することでその業務を遂行するのに必要なプロセス・必要な能力・どのプロセスとの関連性があるのか、などが明確になります。業務の棚卸しとはここまでやることを言います。マニュアル作成は業務を棚卸しした後にマニュアル作成がハマるところとそうでないところを踏まえて作成していくと良いでしょう。
職務予備調査票でざっくりと洗い出し→プロセス展開表で深掘りして輪郭をクリアにしていく作業こそが属人化対策の手段であり、標準化作業の必要な通り道となるのです。
業務の棚卸しなどは専門家に依頼することが早道になります。ツールがあれば全て解決する、のではなくまずは地道な作業で業務を棚卸しし、その後にツールをハメるほうが運用に乗せやすくなります。ツールも含めてコンサルティング可能なのでお気軽にご相談ください。コンサルティングの依頼でなくても、現在抱えている課題に対してのアドバイスも可能です。
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