見出し画像

予感


日没どき、巣鴨駅近く、ピンサロ店がポツポツと並ぶ裏道で、警官に職質された。髪を赤色に染めてからよく警官から目をつけられる。持ち物検査をさせられた。俺はカバンを持たない。ジーンズのポケットから、煙草、ライター、iPhone、イヤホン、携帯灰皿、コンドーム(なんで持ってたんだろう)、ポケットティッシュを取り出して、警官に見せた。警官は俺の顔を覗き込んで言った。「失礼だが、君は在日か?」「だったらどうなんだ?」俺はあえて否定しなかった。「別に、こっちの話でね」「帰っていいか?」「ああ、すまなかったね」俺は持ち物をポケットに押し込んで、駅の改札口に向かった。道すがら俺は考えた。俺は明らかに見た目も名前も日本人であるし、疑われる筋合いは甚だ無い。そういえば警官の苗字は新井と言った。顔もどことなく朝鮮人に見えなくもなかった。奴は同士を探しているのか? 何か企んでいるのかもしれない。まあ、どうでもいいことだな。山手線に乗る。行き先は決めてない。多分、新宿で降りるだろう。俺は今日も酒を飲む。死場所を探しながら。

この記事が参加している募集

あなたからの僅かなサポートでわたしは元気になり、それはさらなる創作意欲に繋がってゆきます。