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カフカ没後100年。カフカはただただリアルを書いた

フランツ・カフカは
1924年6月3日に逝去した。
今から100年前のことですね。

ある知人から、
猫町倶楽部という
読書会の存在を教わりました。
彼が参加した時の課題図書は
カフカの『城』でした。

会場に着いた時、
そこに集まった参加者が
みんな、カフカの長編『城』を
読んできたのかあ、と思うと
感銘に打たれたと言っていた。

猫町倶楽部は、
毎回、100人は集まる読書会です。

あのカフカの城です、
ただの長編ではありません。
何を伝えたいのか
よくわからないクダリも多々ある、
読み辛くもある長編小説を、
その会場にいる人びとは
みんな読んできたのか?
と思うと、壮厳な感動を覚えたらしい。

長編が苦手な私にとって、
カフカは『変身』や他の短編ばかりで
『城』は毎回、途中で挫折してばかり。

いつか読み通したいのですが(汗)。

でも、カフカは
短編や中編でも、
その魅力や世界観は十分に
分かる作品が多いです。
 
『変身』『審判』『流刑地』など。
文学的には不条理と形容されます。
一般的にはシュールというべきか。

不条理でも、シュールでも良い。
肝心なのは、
カフカの創作の掟としては、
「書いてはいけないルールはない!」
という掟やぶりの掟。
何が起きたっておかしくないんです。
小説作りに決まりなんてない、
ということ自体、
相当なメッセージかもしれませんね。
だって、なぜ突然、朝起きたら、
自分がカブト虫になっているんですよ。
意味なんてわからないんです。

1924年に、40歳の若さで
カフカはプラハで死んでしまった。
ちなみに、その1年前の1923年には
アドルフ・ヒトラーが
クーデターを起こした
ミュンヘン一揆の年として
世界史では知られます。
すでに、ヨーロッパでは
あのナチスがむっくりと
台頭し始めていたのです。

ヒトラーはこのミュンヘン一揆を
糧として、野望を拡大させていく。
そうして、カフカはユダヤ人です。
あと5年長生きしていたら、
カフカも収容所に送られていたでしょう。

ある日、突然、自分の体が
カブトムシになることや
区役所に行ったらいきなり
逮捕されて連行されることと、
ある日、突然、ユダヤ人である、
ただそれだけで、収容所に
連行されてしまうこととは
そんなに違わないかもしれない。

カフカは決して、
荒唐無稽なシュール劇を描いた
訳ではないのかもしれない。

カフカは、ともすると、
サイエンスフィクションと
紙一重なのに、
なのに、カフカはSFではないですね。
特別な世界観の持ち主だ。

あ、そういえば、
生誕100年の安部公房は
時折り、カフカと似ていると
言われてきましたが、
カフカと安部公房では
どうも何かがちがう。

安部公房には、エロスがあるのに、
カフカには、エロスはない。

安部公房には、暴力性はないのに、
カフカはに、暴力性がある。

安部公房には、前衛さがあるが、
カフカには、普遍性がある。

ただ、この二人には
どちらも希望がなかった。

カフカを理解する上で、
安部公房との比較は、なかなか
収穫になるかもしれない。

それより、
もっとカフカをよく理解するには、 
当時のヨーロッパ史を
知ることがさらに大きい。

カフカが青年期には、
第一次世界大戦が起こり、
ロシアには、マルクス革命が
起きていたりする。
そんな暴力的な時代の渦中にいた
カフカにとって、
現実と不条理は、
イコールだったにちがいない。
空虚な絵空事ではなかったに
ちがいないでしょう。

そんな作家が書いた作品が
今、なお、読者を広げているとは。
カフカはまだまだ奥が深そう。

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