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【西村賢太】追悼フェアは展開されるか?出版社の良心が問われてる?
西村賢太さんが、2月5日、他界した。
このことで気になることがあります。
書店の世界でどれくらい
追悼フェアを仕掛けるのか?
仕掛けられるのか?ということです。
出版社の人間としては、
それがとても気がかり。
というのも、
西村さんは、芥川賞に輝いた
『苦役列車』以外は、
まあ、それなりに、
ほそぼそ、とはいいませんが、
決して作品ごとに
大部数が刷られていた方ではない。
私も、供養かわりに
1冊くらい買って読もうかと、
Amazonや楽天ブックスで
調べてみたんですが、
40冊近い著書のうち、
紙で今も手に入る本は、
『小銭をかぞえる』の1冊のみ。
ほとんどは電子書籍のみか、
出版社の倉庫にあるから
取り寄せるまで2~3週間かかる、
という表示が出てきます。
出版社の担当者が、
もうこの作家のこの本は
読まれないだろうな、
と思えば、
電子書籍のみにして、
紙の本が品切れでも、
増刷しないですよね。
それが、
西村さんの場合、
揃いも揃って、
紙の本は、文庫も単行本も
みな品切れのままに。
ああ、私もうつで休職中に
すっかり売ってしまったのが
悔やまれます。
さすがに、あの時は、
もう西村賢太の本は読まないで、
青空みたいな心でいよう!
そう考えて、西村さんとは
縁を切ろうとしたんですよね。
西村さんが亡くなって、
三日になります。
文春、新潮、講談社、幻冬舎、カドカワ、
それぞれの文庫編集部は今頃ごろ
大いに頭を悩ませてるでしょう。
追悼フェアをするか?
するなら、
今現在、保存用に確保してある、
倉庫内の僅かな部数、
おそらく数百前後でしょう、
それらを取り出し、
追悼オビをかける、というのが
一番無難なパターン。
いや、亡くなってニュースにも
なったくらいだから
注目度はあがってる。
それに、死亡のタイミングは
最大の売り上げのチャンスなのは
残酷で酷いけど、
出版界ではよくいわれてる事実。
ここは、売れそうなタイトルを
1作品1千部ずつ位は
印刷(重版)してもいいのではないか?
と考える編集者や販売部は、
どの社かにいないだろうか?
重版は、かなりのチャンレンジ。
売れ残りのリスクも高い。
でも、最後のチャンス。
さあ、この数日後に、
西村賢太の追悼フェアが
書店で並んでいたら、
その文庫が、
どこの出版社か?
よく見てみてください。
それは、きっと
西村さんへの出版社からの
最後の供養であるでしょう。
いい出版社です。
でもでもでも。
西村さんが生きている間は、
品切れにしておいて、
亡くなったからって、
急に本を刷るのって、
いやらしくないですか?
そういうお声もあるかと。
わかります。
以前は、私も、
書店で見かける追悼フェアは、
なんだか作家の死を利用して
やらしいな、そう思ってました。
でも、まだ私が漫画編集だったころ、
私は幸運にも、
水木しげる先生の本を
何冊か担当していました。
売れる直前の作品ばかりを集めた
貴重なミステリー作品集です。
そんな私も、
水木しげる先生が亡くなる事態を
もろに経験してしまいました。
最初は、絶対に、
水木しげる追悼フェアは
やらない、先生の死は利用しない、
そう頑なに考えて、
販売部が追悼オビのデザインの
打ち合わせなどを催促してきても
無視というか、逃げていました。
まあ、それで済むはずもなく、
しばらくして編集部長に呼ばれました。
部長は開口一番、
「お前は勘違いしてるよ。
亡くなったからこそ、
たくさんの人に、
ファンにも、これからファンに
なる人のためにも、
売り出していくのが、
先生のためになるんだよ」
………。
私に反論の余地もなく、
慌てて、追悼用のデザインの
打ち合わせに取り掛かりました。