【作家】ミラン・クンデラ…生きる困難の連続に耐えられた人?
東欧出身の作家が死んだ。
ミラン・クンデラ。
東欧という言葉が、
一定の特殊な意味を持ち、
「西側陣営」日本に暮らす人間には、
東欧と聴けば、いつもきな臭さを
感じさせてきたものでした。
世界が西側と東側に分かれ、
大国の意思に常に翻弄されてました。
それがまた、
遠い遠い昔の話ではありませんでした。
1960年代にはそれなりの、
1970年代にはそれなりの、
1980年代にはまたそれなりの、
1990年代にはまたそれなりの
戦争や内乱や事件が
いつも国際ニュース面を、
不気味に彩っていました。
そんな時代に東欧と呼ばれたのは
ソ連圏、今のロシア周辺の国で、
ポーランド、
チェコスロバキア、
ユーゴスラビア、
ハンガリーなどでした。
どれもソ連の衛星的な存在を強いられ
特殊な気配に支配されていました。
そんな不幸な時代には、しばしば
才能ある作家が生まれるものです。
そんな東欧の申し子、
ミラン・クンデラが活躍したのは、
まだアメリカとソ連がバチバチに
冷静を装っていた時代。
いつ戦争を始めるのか、
世界がヒヤヒヤしてた時代でした。
そんな時代の、
ソ連圏で暮らす人々には、
カフカの小説さながら、
容易には認めがたいほどの
不条理な取り決めが
一般人にも降りかかる時代でした。
ミラン・クンデラも
そうした恐怖時代に、
そうした国や政府や魂を売った国民と、
どうやって折り合いをつけて、
生きていけるのか?
悩みに悩んだ人の一人だったでしょう。
一時期、チェコでは
クンデラの作品は発禁処分になりました。
後にフランスに亡命したのも
生国チェコスロバキアに
生きるのは辛くなったゆえですね。
生きていたのは、
1929年〜2023年。
パリに亡命したのは1975年でした。
46才の時ですね。
クンデラのような、
国や不穏な組織から、
常に見張られる環境にいた、
生きる困難が絶えない作家の、
『存在の耐えられない軽さ』や
『冗談』『不滅』など、
ただの恋愛やただの青春を描いても、
クンデラの世界は
自然と壮大になるし、
自然と人間の根本的な問題に
触れているようにも感じられます。
それがクンデラが
意図して書いたのか?
意図せずして書いたのか?は
もやは意味のない詮索ですかね。
ミラン・クンデラで
やはり読んでおきたいのは、
『存在の耐えられない軽さ』と
デビュー作『冗談』は
マストでしょうか。
ちなみに、
クンデラには
小説の描き方指南本が出ています。
『小説の技法』岩波文庫、858円。
ヨーロッパ人が
小説をどう認識し、
どう発展させようと考えるのか。
日本人の小説指南とは
かなり異なるものでもあり、
賛同できない面も出てきますが、
それを知るだけでも、
貴重な読書になること請け合いです。