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【評伝】知の巨人ならぬ、祈りの巨人?

若松英輔さんという
作家・評伝家・詩人をご存じですか?

私も1冊しか読んだことないですが、
彼が書く本を見ると、いつも
「ウオー!」と
小さな叫びが心の中で起きます。
こんな本が欲しかった!
というか、
なぜ、こんな本を自分で
書こうと思わなかったのか!と。

小林秀雄の評伝、
須賀敦子の評伝、
筒井俊彦の評伝、
神谷美恵子の評伝、
池田晶子の評伝、
石牟礼道子の評伝、
内村鑑三の評伝、
そしてイエス伝。

書評ならまだしも、
こんなメガ級の知の巨人の
生涯に取り組んで
作品も全部読んで、人生を調べて、
本にするなんて、、、、神業です。
まあ、一人か二人が限界でしょう、
普通なら。

でも、1968年生まれの若松さんは
今53歳。まだまだ、これからも
お書きになるでしょうね。

次はどんな知の巨人を相手に
取り組むのでしょう?

それにしても、感じるのは
彼が取り組む相手に
共通しているのは
単なる学殖的な巨人では
ないことです。

どこかしら祈りの香りがするんです。

神谷美恵子といえば、
今話題の『自省録』を訳し、
またハンセン病施設の精神面の治療に
乗り出した先駆者。
また、美智子上皇后の
皇太子妃時代の相談役であったこと、
『生きがいについて』という
戦後の大ベストセラーを書いたこと、
すべてにどこかしら、祈りや宗教性が
感じられます。

須賀敦子さんも
イタリア滞在中は
キリスト教左翼の主張の強い書店
「コルシア書店」を拠点にし、
また、晩年はエッセイや詩や童話を
残しました。
須賀敦子のエッセイには
キリスト教的な求道の
香りが感じられます。

筒井俊彦は
30以上の言語を自由に
読み書きしながら、
アラブや日本やヨーロッパの
宗教の普遍性について
前人未到の研究を残しました、
、、、、というのはまた聞きで…
私は、岩波文庫にある筒井さんの本、
何度開いてもチンプンカンプン(笑)。

ただ、宗教と哲学を融合させようとした
天才なんだろうな?ということは
うっすらわかるんですが、汗。

それから、
哲学者・池田晶子。
「14歳からの哲学」
「14歳の君へ どう考えどう生きるか」
などで、分かり易い言葉で
本質的に「哲学する」ことを説き、
思考を大事にした人でした。

石牟礼道子は、
水俣病の過ちを黙って見過ごす
ことはできないと、
人生をかけて戦いつづけた
不屈の文学者ですね。

小林秀雄は
もう説明もいらないかと存じますが、
「ゴッホの手紙」
「無常ということ」
「本居宣長」など、
古今東西の作品や人物をテーマに
「批評」を「創作」へと
地位を向上させた人でしたね。
小林だけはもしかしたら
「祈り」「宗教」の気配は
あまりないかもしれませんが、
学殖的な知識ではなく、
心のまなこによる洞察で、
先人の残したメッセージを
自ら見ようとした点では
求道、かもしれません。

イエスは、
偉大な宗教者であり、
内村鑑三は、その教えを
明治日本に広めた人ですね。

それにしても、
若松さんの審美眼というか、
目の付け所は、
評伝作家としては、
知の最高峰のような巨人ばかり。

次がどんな人になるか、
実に楽しみです。

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