遠藤周作を読むなら『沈黙』か『マリー・アントワネット』か?
遠藤周作ほど
色褪せない作家は珍しい。
1996年に亡くなって
もう28年になるというのに、
人気は生前と変わらない。
25歳の若い知り合いに聞いても、
遠藤周作は同時代の作家のように
感じている。
それだけ普遍性があるらしい。
亡くなって28年も経つというのに。
それにしても、遠藤周作は
何通りもの顔を持っていた。
純文学作家の顔。
時代小説家の顔。
エンタメ小説家の顔。
短編小説の名手の顔。
ミステリー作家の顔。
真面目なエッセイストの顔。
娯楽的なエッセイストの顔。
なんて幅の広い顔を
持っていた作家だったろう?
純文学の作家としては、
宗教や信仰について
問い続けた面はよく知られたが、
もうひとつは、
日本人とは何ものか?について
考え続けた作家だった。
『白い人・黄色い人』や
『海と毒薬』がそれだろう。
信仰について問い続けた作品としては
遠藤周作の代表作は、
『沈黙』『イエスの生涯』
『キリストの誕生』『死海のほとり』
『侍』そうして『深い河』など
実に名作ばかりです。
また、忘れてならないのは、
遠藤周作短編集、ですね。
岩波文庫から1冊。
講談社文芸文庫から2冊出ていて、
どれも見事ながら、
また、短編で描かれたピースが
集められて、長編作品
『沈黙』や『深い河』『死海のほとり』に
登場していることが分かります。
遠藤周作の最高傑作といえば
『沈黙』というのが相場ですが、
私は『イエスの生涯』こそ
遠藤の最高傑作だと思っています。
小説というよりは、
論考的なエッセイでしょうか。
遠藤周作マニアの間では、
最高傑作は『死海のほとり』だと
言われている。
また、娯楽小説、エンタメ小説
というには、深さがあまりあるが、
純文学としては生まじめさがない
器の大きな作品がたくさんある。
そんな作品群の最高傑作は
『砂の城』や
『彼の生き方』
『マリー・アントワネット』
などですね。
ミステリーとしては、
『真昼の悪魔』
『スキャンダル』。
時代小説では、
『反逆』『王国への道』が
人気でしょうか。
遠藤周作に一番親しみやすいのは
『マリー・アントワネット』を
挙げたいと思います。
史実とフィクションを合わせた
歴史小説です。
エッセイは、
面白さを重視するなら、
狐狸庵という名義で書いたものが
世には知られている。
でも、遠藤周作の特徴の一つは
深いエッセイを書いた点です。
『死について考える』や
『人生の踏み絵』
『切支丹の里』はどれも
遠藤の内面をさらけ出している。
特に『人生の踏み絵』は
遠藤文学の生成過程がよくわかる。
遠藤純文学に入る入口の小説は
なんだろう?
やはり『沈黙』か?
いや、しつこいようですが、
『イエスの生涯』がオススメです。
硬めですが、エッセイみたいに
一気に読めます。
また、遠藤文学だとかに関係なく
信仰とか日本人論に関係なく
面白いのは、
『マリー・アントワネット』
でしょう。
マリー・アントワネットの他、
また同時代を生きる貧しいパン屋の
娘さんなど、フィクションとして
様々な人物が現れ、
立体的にフランス革命の
業の深さが描かれています。
漫画『ベルサイユのばら』を
読んでいるようなワクワクが
ありますね。
それにしても、
いくつもの顔を持っているなあ、
遠藤周作は。