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【作家】進化する作家?進化しない作家?

最近、文庫になった
吉本ばななと宮本輝の 
対談集『人生の道しるべ』を
読んでいます。

吉本ばななも、宮本輝も、
私には懐かしい「昔の恋人」です。

今から30数年前、
私が二十歳前後の頃に、
面白くて人気も高く、
私もドハマりしていました。
かつての恋人たちと会っているような、
懐かしく優しい気持ちになったんです。

それにしても、
この懐かしさは貴重だ。
吉本ばななも、宮本輝も、
最新作を読んでも、
30数年前と、読んだ印象が同じです。
宮本輝の最新作を読んでも、
結局は『錦繍』や『優駿』と
同じなんです。
吉本ばななは、様々な好奇心から、
作品ごとに何かが込められてるけれど、
その実、作家としての姿やスタンスは
あまり変わっていないと思える。

ある意味で、2人とも
あまり文学的な「進化」は
遂げなかったのでしょうか。

でも、進化しなかったというのは、
ただの悪口でもありません。

作家、文学者として
変化していないということは、
退化はしていないし、
落ちてはいないってことだし、
また、かつての流行作家が
30年以上、腕を落としていない
というのは、やはり 
見事な年の重ね方をしてきた訳でしょ。

ちなみに、それでは、
進化していく作家って
誰あたりなんでしょう?

フッとまず頭に浮かぶのは、
遠藤周作さんですね。

作家の間でも、勉強好きで
知られていたそうですが、
芥川賞の『白い人・黄色い人』は
日本とは何か?
日本人とは何か?が命題でしたが、
その後は、キリスト教文学を
切り開いていきましたね。

北杜夫さんも凄かった。 
実話ベースの
「どくとるマンボウ」シリーズを
何作も描きながら、
『楡家の人びと』という
都内にあった精神病院の
大河ロマンを手掛けたりした。
まあ、それを「進歩」と呼んでいいのか?
単なる「進歩」と片付けるのは
浅はかか?どうか問題もありますが。

大江健三郎は、
圧倒的なデビューで初期を飾り、
中期は様々な挑戦をして
当たりハズレも多かったですが、
晩年の作品には、
また圧倒的に心血を
注いでいきましたね。

さて。
作家は、堕落しない限り、
読むに値すると思うんですが、
宮本輝や吉本ばななは
測らずしも、 
初期から変わらぬタイプの作家です。
文学的な思想などよりは、
実なる人生を送る読者たちに
メッセージを送ろうとする流行作家。
資質がよく似ている。
意外でした。

今回、吉本ばななと宮本輝の
対談集を読んで、久しぶりに
気持ちがホッコリした時間でした。

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