プチ連載小説「カニが浮く」第5章
「明日はホリデイ」
「どんな気持ちの時もピアノはツンときれいな音を出すんだ。特に雨の日は」
彼女はピアノを軽く弾いていた。きっと雨を想っているんだろうな。僕は窓から外をながめる。今日は晴天だ。
彼女は冷蔵庫から氷を出してゴリゴリ食べはじめた。僕の水槽にもでっかいやつをひとつ入れた。水槽の水がじわじわひんやりしてゆく。僕はつめたい水の中をつるつる泳ぐ。なかなか気持ち良い。
ふっと視線に気がつき、岩陰にかくれると、彼女がこの間僕ごと落としてできた水槽のヒビの所をなで