【本要約】行動を変えるデザイン
2022/1/7
行動の仕組み
心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する。
行動は、たった3つの要素が同時に発生した時のみ生じる。
【 行動発生要素 】
・動機
・技能
・トリガー
行動はシステマティックであり、行動を起こすには、3つの要素が同時に整っている必要がある。
行動によって、新しい小さな習慣を作ることができる。
行動を変えることは、多くの人が思っているほど、複雑なものではない。
【 行動のメカニズム 】
① 適切な目標となる行動を選ぶ
② 目標の行動をやりやすくする。
③ 行動するように指し示すトリガーをはっきりさせる。
デンタルフロスのような新しく生活に取り入れたい行動を選ぶ。
【 フロスの習慣 】
① 行動を小さく分解する ( 1箇所だけフロスをする )
② 行動しやすいように環境を変える ( フロスを洗面台に出しておく )
③ 新しい行動のトリガーを見つける。
小さな習慣では、すでに存在しているルーティン ( 歯を磨く ) が、新しい行動 ( フロス ) を促すトリガーになっていることが肝心だ。
適切なピースが合わされば、習慣は、すぐに身につく。
自分の信念として「自分が元々やりたい」と心から思っていたことを、できるようにすることこそが、最高の知識である。
プロダクトデザインは、よいプロダクト、よく機能し「人が使いたい」と思うプロダクトの作り方に関わる。
行動デザインは、よいプロダクトであると同時に、行動に働きかける。
【 行動変容のデザイン 】
① 心のはたらきと行動変容を理解する。
② 目標を踏まえて変えたい行動を見つける。
③ 行動に向けてデザインする。
【 デザインする過程 】
① 行動:やりたくなるような設計にする。
② 環境:自分で決めて実行しやすい環境にする。
行動変容デザインは、人が現実の中で何かに取り組むための手助けをすることが目標である。
取り組むのが大変な行動をするためには、無数の小さなステップを踏む。
習慣の効果
「習慣を止める」ということは、即ち、別の行動の「習慣を始める」ことだ。
【 行動を変えるための戦略 】
① 意識的な思考モードに働きかける。
② 習慣に働きかける。
私たちが行動している時間の多くは、脳の自動操縦によって埋められている。最も効果的な脳の自動操縦が習慣である。また、私たちは、過去の経験や時々のマインドセットに基づいて直感的に反応する。自分のある一面が、現在の状況に反応して、呼び起こされている。
自動操縦になっていないときでも、私たちの脳は「常にサボろう」としている。意志の力はすぐに枯渇してしまう。脳は、難しい問題を単純な問題に置き換える。道に迷わないために、どうしたらいいのかよくわからないときは、仲間を探そうとする。完全に最適な答えを見つけるよりも、充分な解決案を探そうとする。
意思決定のメカニズム
(1) 合図
「行動をする」という思考が、何らかの方法で、脳の働きの中に浮かぶ必要がある。
それは、外部のキュー ( 電話が鳴ること ) や内部のキュー ( お腹が鳴ること ) によって起こる。
(2) 反応
① 思考に対して、一瞬の間に、自動的で直感的な反応が起こる。
② その行動が「自分と関係するか、興味が湧くか」が確認され、感情が生まれる。
③ 快の感情であれば、意識にのぼる。
④ 不快の感情であれば、「他にできる行動はないか」と思考する。
( 意識にのぼることも、のぼらないこともある )
(3) 評価
その行動が「どれくらい大変か、価値は何か」といった費用対効果を分析する。
脳は、他の行動と比較検討して、最も有望な行動を決める。
(4) 可用性
その行動が実行に値すると評価できても、実際に実行できないと意味がない。
① 実行の手続きがわかっていること
② 実行に必要な資源があること
③ 失敗する気がして思い止まったりしないこと
障害に直面した時に解決に時間がかかると、実行しなくなる。
行動デザイン
自動的で直感的な脳のはたらきを利用して、行動を習慣づける。
・行動
行動を細かく分解する。
わかりやすくシンプルにして「すぐに、できそう」と思えるくらいにまで、細分化する。
・環境
①「行動しよう」と考えた理由を思い出して、動機を高める。
② 行動のきっかけを準備する。
③ 行動によって生じた変化に対して効果を意識する。
④ 行動に集中できるような場所へ行く。
脳のはたらき
大体いつも「次に何をするか」について、私たちは意識的に決めていない。
私たちは、習慣に基づいて行動しているので、新しい習慣を作ることはできても、習慣を止めるのは難しい。
・私たちは、過去の経験に基づいて直感的に即座に決断することがある。
・意識的に考えているときも、私たちの脳は、なるべく手を抜こうとしている。
より、簡単な類似の問題にすり替えることで、大まかな回答を出してやり過ごしている。
・私たちは、他人、仲間や専門家の意見を参考にしながら、「何をしたら方がいいか」考えている。
私たちは、自分を「合理的な人間だ」と思いながらも、「感情的な行動」を抑えることができない。
① 私たちの直感は、過去の経験や単純なルールを使って、瞬間的に状況を評価する。
② 私たちの評価は、その瞬間の感情や、体感によって得られる。
③ 私たちのほとんどの行動は、直感によって支配されている。
【 私たちの日常 】
・習慣:学習した行動パターン
・本能:過去の経験則に基づく瞬時の状況判断
・単純な経験則:認知的ショートカット
① 私たちは、日常生活のほとんどにおいて、自覚的に考えて行動していない。
② 私たちの自覚的な行動
・経験したことのない状況に直面したとき
・意識的にタスクに注意を向けたとき
③ 私たちは「自覚的に常に行動をコントロールしている」と思い込んでいる。
【 象と象使いが登場する仏教の比喩 】
① 象使いは「常に自分が象を動かしている」と思っているが、実のところ動いているのは、象だ。
② もし象が象使いに同意しなければ、いつだって象の考えが優先されることになる。
③ 象使いによっては「象がやっていることのすべては、元々、自分自身がやりたかったことだ」と言い、心の底からそう思っている。
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象は、人間の直感的な自己の例えである。直感はとても強力だが、いい加減なものだ。
象使いは、私たちの心を表し「象の行き先を指示しよう」としている。
ぼーっとしているときでも、何もしていないわけじゃない、私たちは、常に何かしらについて考えている。
私たちの行動と思考は、必ずしも一致しない。食事をしながら、料理だけに集中していない、誰かと話したり、何かを見たり、読んだりしている。
私たちは絶えず学び続けている。「何かをやる価値があるかどうか」を教えてくれているのは、私たちの過去の経験だ。
経験こそが、私たちの日常生活の各シーンで「何をするのか」を決めている。
① 直感的な反応は、過去に経験してきたこととの単なる連想に基づいているに過ぎない。
② 私たちが気付いてないときも、直感は常に反応しながら、学習している。
③ 一度、直感ができあがってしまうと、本当は適切でない場合も、同じような状況と経験があれば、過去の記憶が再利用される。
習慣の形成
習慣とは、ある環境において、ある合図によって、引き起こされ、繰り返される行動だ。
習慣は自動的な行動だ。
習慣は、無意識なので、習慣であることさえ気付かない。
【 習慣の形成方法 】
・単純な繰り返しによって、習慣を形成する。
繰り返すことで脳が記憶して、何をするのか考える必要はなくなり、ただ行動が起こるに任せるだけで済む。
・報酬を目標にして、習慣を形成する。
① 合図:コーヒーの香り
② 行動:カフェに入る
③ 報酬:美味しい
報酬は、習慣的な行動を意識的に繰り返させることで、より持続的なモノとなるように作用する。
行動変容
【 行動変容 】
・短期間で行動を変えるための選択肢として、特定の心の状態 ( ポジティブ ) を呼び起こす方法がある。
・長期的に行動を変えるための選択肢として、有益な自己概念を構築する方法がある。
私たちの脳は「できる限りサボろう」としている。習慣や直感の反応は、意識的な脳のはたらきを回避する方法である。
相手に質問したときに、思っているように答えてくれない。大概は、私の質問をよりシンプルな短縮版にすり替えて、回答している。相手の脳は、認知的ショートカットを使って、回答している。
「やるか、やらないか」を判断するときに、その行動が社会集団に「どのように受け取られるのか」を気にしている。
【 行動への影響要素 】
・やはり、簡単なのがいい ( 心と体の労力が少なくて済む )
・やはり、慣れている方がいい
・やはり、見た目がきれいな方がいい
・報酬があった体験は、やはり、繰り返したくなる
・やっぱり、失敗したくない
・やはり、急ぎのことをまずやりたい
【 行動できるかの軸 】
・アクションプラン
行動する必要なステップについて、知っていなければならない。
・リソース
実際に実行するのに、必要なリソースがないといけない。
・スキル
行動するためには、必要なスキルがないといけない。
・うまくいく確信
誰も「失敗したい」と思っていない。成功の根拠が必要である。
・具体性
行動することを、より現実的で簡単にすることでハードルが下がる。
・一貫性
「いつやるか」を決めやすくするには「未来のどのタイミングでやるのか」を事前にコミットする。他の誰かに宣言する。
私たちは「過去の発言と一貫性を保とう」とする性質がある。
【 行動の違い 〜 最初と2回目 】
・行動との関係が変わっている。行動の結果を知っている。
・自分自身が変わっている。
・周囲の環境が変わっている。
自分がやっていることの「ついで」に目的の行動をする。
行動を実行することについて考えなくて済む方法である。
繰り返してやらなければならない行動を、一度きりの行動にしてしまう。
一度で止めることを前提として行動する。
習慣は、作業をシンプルな問題に置き換えてくれるに過ぎない。
【 習慣化の処方箋 】
・深く考えず、何度も同じように繰り返せるルーティンを見つける
・価値がある報酬を見つける
・シンプルな合図を見つける
習慣は自動化されていて、意識されることがない。習慣を取り除こうとするには、意識的な思考を、働かせなければいけない。一方で、私たちは、自分の習慣に気付いてない。
【 習慣を止める方法 】
・合図を避ける
・ルーティーンを、別のモノに置き換える
・意識で干渉する
・マインドフルネスで、合図に反応しないようにする
・新しい行動で、今までの習慣を追い出す
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