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文化がヒトを進化させたー父性の不確実性

20240611

男性側からすると、つがい関係がある場合には、自分が妻の生んだ子どもの遺伝上の父親であるという確実性が増すので、育児にも関わるようになる。少なくとも、その子に対して寛容になる。父性の確実性が大きな意味を持つのは、自分は本当に遺伝上の父親なのかという、生物の雄の抱える不安の裏返しとも言える。他の条件がすべて同じだった場合、父親であることが確実であればあるほど、妻の生んだ子どもの面倒を見る意欲が高まる。

チンパンジーをはじめとする霊長類の多くは、雌の性行動が乱交型なので、その子が誰の子なのかほとんどわからず、したがって雄はあまり子どもの世話をしない。つがいを形成する霊長類であっても、雄の子育てへの関与はごく限られている。 ゴリラの場合もそうで、せいぜい自分の配偶者とその子を他の雄から守ろうとするだけだ。

結婚規範により、つがい関係が強化されることによって、面倒見のよい父親がつくられるのである。
すべてではないにせよほとんどの社会には、妻に貞節(つまり浮気しないこと)を求める社会規範があり、およそ1/4の社会では、夫にも何らかの制限を設けている。そのいずれにも、妻の生んだ子どもに対する男性の投資を増大させる効果がある。
妻に貞節を求める社会規範があると、夫だけでなく、共同体全体で妻のセックスや恋愛を監視することになる。そうなると、妻としては、「妻の産んだ子は自分の子だ」という夫の確信をぐらつかせるような行動はなかなかとれなくなる。それが夫に与える心理的効果は大きく、妻の産んだ子ども(わが子である確率が高い子ども)に対して積極的に投資するようになる。また、妻としては、貞操規範を犯している(他の男性と不倫している)ところを見つかれば、夫やその親族に非難されるだけでなく、世間からも後ろ指を指されるとわかっているので、それも行動の歯止めになる。
一方、夫の性行動を制限する規範は、家族に向けられるべき資源(財力や労力)が、浮気したり、娼婦を買ったりといった、婚外性交渉の機会獲得のために向けられてしまうのを防げないまでも抑制する。また、こうした規範があると、共同体全体で彼を監視することになるので、それを犯した場合には、妻やその親族との関係のみならず、共同体内での立場をも危うくすることになる。夫の忠誠を求める社会規範は、夫の資源がセックス目当てに浪費されることなく、妻の子どもたちに投じられるように仕向けているのである。当然ながら、男性が複数の妻をもつこと(一夫多妻)を許容または奨励している社会では、男性にはその分、多くの資源や財産が求められることになる。









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