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【本要約】14歳からの資本主義

2021/5/30

概要

資本主義
モノの生産を伴う組織的な活動全体

健全な競争が、人を育て、社会を育てる。

市場では、生産者側は、できるだけ質が高く安い商品を作ろうとする
市場では、消費者側も、できるだけ質が高く安い商品を買おうする

勝者と敗者が決まっても、その競争が健全である間は、いいのかもしれない。しかし、今は、「お金を儲ける」「利益を出す」ということにばかりが、注目されている。

ケインズの美人投票

「美人だと思う人に投票してください。」
これなら、自分が美人だと思う人に投票してするだろう。しかし、次もの文言がつけ加わったら、どうだろうか?
「ただし、優勝した美人に投票するした人には、賞金を差し上げます」
これなら、自分が美人だと思う人ではなくて、みんなが美人だと思いそうな人、票を集めそうな人に、投票は集中する。

これは、市場での株取引で、利益を上げようのする人々の心理を表現している。自分が価値があると思う会社の株よりも、他人から価値があると思われそうな会社の株を買おうとする。

安く買って高く売るためには、「株の価値、会社の本質的な価値よりも、人々の心の動きや、人気を読む方が儲かる」ということである。

こういった心理は、株式市場だけではなく、私たちの日常生活にまで、入り込んでいる。そして、周囲の目ばかり気にして、自分自身の価値観に気付きづらくなった。

市場の商品価値こそが重要視される社会、みんなが、全てを商品と見なしてしまう社会である。

数字の物語は、いつも、増えることを望まれ続ける。それが、現代の資本主義の特徴である。

自らの存在価値を守るために、市場で存在感を示すことに、人々は躍起になっているようだ。

資本主義は、大きな曲がり角に来ていて、この10年で世の中は大きく変わるかもしれない。

正解がない時代の今、これからを、生きていくために、必要なこととは?

資本主義とは何か?

資本主義の概念
・どんどん形を変えて、飲み込む対象を変えて、新たな商品を生んで、膨らみ続ける生命体である。
・限りない資本の自己増殖を、原動力とする運動である。
・標準というモノ自体を決めるのが難しい。(サッカーのオフサイドのように、標準ラインが動いてしまう)
資本主義のルール
生きるため、お金のため、社会のために、私達は、雨の日も、風邪の日も働く。

多くの人たちが信じているルールである。だけど、毎日、当たり前のことになってしまうと、人は「なぜ?」「何のために?」という問いを、いつのまにか、忘れてしまう。

人は、重要で根本的な問題ほど、実はどこかで当たり前のことにして、考えなくなっていくようだ。

資本主義は成功する。だが、その成功ゆえに、自ら壊れる。
資本主義社会
・資本主義は、資本から、価値を生み出すことを原動力としている。
・価値とは、利益と時間である。
・価値は、市場によって決められる。
・市場の需要と供給のバランスによって、価値の価格が決まる。

アダムスミスは、国富論で、この市場の法則を、「見えざる手」と表現した。

成長ありきの資本主義

グローバル化によって、世界の総需要が不足し、世界経済が低迷している。

一方で、現代の資本主義では、市場での取引が活発で、お金が行き交うほどいいことである。お金は、血液に例えられ、よく流れているほど健康である。

不平等の増大が、起こっている。貧困層から富裕層へと富は吸い上げられている。富裕層は貧困層に比べ、お金を使わない。これが、総需要を押し下げている要因である。

多くの人が、「資本主義は、成長し続けていく」と信じている。そして、社会は資本主義の成長が前提となっている。しかし、「資本主義が必ず成長する」というのは、思い込みだ。

GDPが大きくなり、経済成長していくと、人々の生活がより豊かになると考えられている。「考えられている」だけかもしれないのだ。

資本主義は、市場という場で、買い手も売り手も自由に活動できための「手段」ではなかったのか?その「手段」が大きくなることが「目的」となってしまっていないか?

利子の誕生

利子は、時間が富を生む魔術である。利子は、宗教で禁止されていたが、社会的に認められるようになった。利子が資本主義最大の発明であり、同時にもう後戻りができない「禁断の果実」だった。

時間が商品となった。

利子はアルコールのようなモノだ。どちらもエネルギーをタイムトラベルさせる。アルコールは、土曜の朝のエネルギーを金曜日の夜に移動させただけだ。2日酔いは、翌日にくるが、お金は、数十年の時を超えることができる。

共感が商品

モノを作る産業から、人と人とを結ぶ産業が、主役となる時代へ移行している。

物質的な欲望 → 感情的な欲望
モノ消費 → コト消費

人の心が大事な商品になる、人が心の動きに合わせてお金を使う時代がやってきた。

資本主義には、全てのモノを「商品」として扱い、多くの商品を市場に流通させようとする性質がある。

モノ → 時間 → 体験 → 共感

共感という商品は、価格の決定が、主観的な価値観に大きく依存する。

価値は2種類ある。

交換価値:市場で決まる
使用価値:人の主観によって決まる

「素晴らしいモノだから、価値があり、高価だ」という論理である。しかし、逆に、多くの人に広がる段階で、「高価だから、価値がある素晴らしいモノ」という感覚にすり替わることがある。

テクノロジーが生む格差

デジタル革命
コンピュータをベースとする新しいテクノロジーが次々と生まれて、発展していく。

デジタル革命の恩恵を受けた富裕層が超富裕層となり、超富裕層と下層階級との格差が進んでいる。

発展していった新しいテクノロジーは、人々の日常生活に浸透している。しかし、経済成長に結び付いていない。新しいテクノロジーは、中産階級から仕事を奪い、さらに格差を広げている。

産業革命では、労働者が、農民から工場労働者になるという、受け皿があった。

デジタル革命では、労働者の仕事をコンピュータが代替えするだけなので、労働者の新しい受け皿はない。

現代は、テクノロジーの方が人間の労働力より、市場における価値が高くなっている。

コンピュータに代替えされない生き方は、非ルーティンワークだけだ。それは、人が皆、アーティストにならなければならない。

すべての人が、アーティストのように生きるのは不可能だ。アーティストは、いつも、創造性の欠如にさらされていて、不幸である。

「自分が得意なことは何か?」と常に問い続けなければならない。生涯にわたって生産的であり続けなければならない。

人とお金の関わりとインターネット

人がお金で買うもの

「どこに住むのか」に関わるもの
「どの人に会うか」に関わるもの

実は、「人と関わって暮らしたい」と思うこと自体が、お金がかかる。

人は、他人と関わることが必要である。
他人との対話がなければ、自分が何者かもわからなくなってしまう。
人は、孤独になりたいけど、孤独に耐えられない。

インターネット

生産者と消費者をマッチングさせる市場を効率化した。
需要と供給の法則を強化した。
理論上、誰の手も借りずに需要と供給が一致させることができる。
「見えざる手」のように機能している。

インターネットによって、社内の定型業務を外注化できるようになった結果、企業は仲介の役割を失いはじめた。

資本主義崩壊

経済学
希少な資源の最適な配分法を、科学的に分析する学問

科学的な見方だけで、社会を、人間を、経済を、資本主義の市場論理を捉えるのは危険である。科学的な見方がすべてとなる社会は危険である。

グローバル化で、様々な国が市場として結ばれ、不安定性を増している。
共感の商品化で価値観が惑わされ、自らの欲望が不確かなものになる。
デジタルテクノロジーの進歩が、格差を拡大させ、分断を招く。

資本主義の本質
・全ての差異を商品化し、売上の数字で測り、成長を原動力とする
・常に目新しいものを求め、商品化し市場へ供給する
・自己増殖していくので、自分自身の拡大を止められない
・時間と共に変化するプロセスが富を生む

人は、変化を求めながらも、安定が欲しくなる、ないものねだりの生き物である。

一方で、人は、創造のための破壊を恐れずに、イノベーションを目指す。新しい挑戦をして、新しい商品を生み出し続ける。創造して破壊して、この繰り返しに飽きてしまったら、やめてしまったら、資本主義は崩壊する。

市場
・より速く、より安く、より効率的に、競争のためにしのぎを削る
・非合理なものは排除され、革新的なものが歓迎される

テクノロジーは、社会制度のあり方を規定していく。

テクノロジーの影響
・人々の精神状態
・人々のモノの考え方
・人々の無意識のレベル

テクノロジーが、社会の仕組みを変え、決定的なモノにしていく。テクノロジーの便利さが社会の主流の価値観になる。みんなが、テクノロジーのスピード、テクノロジーの仕組みによる表現に合わせていくようになり、社会が変化する。

現代はITが、既にコミュニケーションばかりではなく、社会のあり方を革命的に変えた時代である。

モノづくりを中心とした工業社会は、ピラミッド型の組織を標準としていた。パターンが決まったモノを、大量に安く作るためには、縦型の命令系統が、効率がいい。

しかし、新しい発想、アイデアの組み合わせ、斬新な商品開発が、重要となる組織は、ネットワーク型ともいえる横型の人間関係で緩やかにつながる。

どんな組み合わせで、どんな方法論で、ビジネスチャンスとなるような発想が生まれるか?新たな発想力、柔軟な思考力に価値が高まる社会になっていくだろう。

資本主義との向き合い方

近代という時代は、神を引きずり下ろし、人間が主役となった時代である。世の中を動かすルールは、信仰や魔術から、論理や技術へ変わった。

近代の論理
・主体を持つ人間が、人と人との間に約束事を成立させた
・科学技術が、様々な社会制度を、進歩させた
資本主義
・社会の商取引・日常生活の商品の売買だけではない
・社会に、人々に影響をもたらし、人々の思考を変化させる

資本主義の世界で生きていくには、人間の知性では測ることができない存在がこの世にはある、「畏敬の念」を持つ必要がある。全てをコントロールできるとは思ってはいけない。いつも、想像を超える状況が生まれることを覚悟しながら、生きていくしかない。


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