サムのこと
20240904
■サムのこと
十代の終わりと言えば、もっと中身のある、ぎゅうぎゅうと密度の濃い時期のはずなんだろうか。少なくとも僕たちは、プラスチックみたいに軽薄で、スポンジみたいに頼りない人間関係を築いていた。
人を嫌ったりするのが、体力を使うから嫌だ。
ふたりの恋は、今や熱く燃え上がるようなことはなく、その形をもっと丸くて、ふにゃふにゃと柔らかいものに変えつつある。でも、いつも一緒に笑っているその姿は、なんていうか僕らの驚異であり、憧れだった。
誰が死んでも、何が起こっても、日常はいつもぼうっとそこに横たわっていて、それは悲しくなるほど無責任だ。
サムは短いその生涯を終えて、僕たちの前には長い長い道がある。その現実に少し涙ぐみそうになるけど、はは、変わらない、馬鹿みたいな、いつも通りの日常がそこにある。
■猿に会う
小さいながらに達観してしまったようなところがあって、それは無理をしていたわけじゃなくて、なんていうか本当に、人に対して腹を立てたり、悔しいなぁ、と思うことなんかが、あんまり、ほとんど、なかった。
生死に関わるようなことが無い限り、私は決して怒らないし、執着しない。
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あなたの琴線に触れる文字を綴りたい。