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自閉症教育の動向と展望

 今日は知的障がいのある自閉症の児童に特化した教育を行っている筑波大学附属久里浜特別支援学校の研究会に参加をして勉強させていただいた。そこで考えた自閉症教育と動向と展望について、私の考えをまとめていきたいと思う。

筑波大学附属久里浜特別支援学校

 筑波大学附属久里浜特別支援は、元々「重度・重複障害児」への教育に特化した専門機関であった。平成16年に筑波大学の附属校として「自閉症」に特化した教育を実践する専門機関となり、現在に至っている。すぐ隣に隣接する国立特別支援教育総合研究所と連携し、自閉症教育実践の研究開発をリードしている。

自閉症教育実践の柱

 本日参加させていただいた筑波大学附属久里浜特別支援の公開研究会を聞いて、我が国の研究開発という意味では、平成19年に発行された国立特別支援教育研究所 研究紀要 第34巻でまとめられている内容が、改めて重要であると感じた。ここには「自閉症のある子どもの教育課程」という形で特集が組まれており、①自閉症教育のキーポイントとなる指導内容、②自閉症教育における指導のポイント、③自閉症の特性に特化した教育課程のあり方に関する考察などについてまとめられている。本日の実践発表をしてくれた先生方の多くが「学習内容を教えること」と「学習を成立させるための学習」は異なると訴えていたのが、とても印象的であった。まさにその内容がこの研究紀要には書かれているからだ。

自閉症教育の研究開発の歩み

  教育界で「自閉症」というものが注目され始めたのは 平成17年に実施された「知的障害養護学校における自閉症の教育に関する全国実態調査」に端を発する。この調査によって、「知的障がい」と「自閉症」は「別」の障がいで、知的障害特別支援の多くに「知的障がいと自閉症を併せ有する児童生徒」が存在するとわかった。であるならば、「自閉症に応じた教育」を研究しようという流れが生まれて、「自閉症教育の充実のために」という研究が進み「自閉症教育実践ガイドブック-今の充実と明日への展望-」「自閉症教育実践ケースブック-より確かな指導の追究-」「自閉症教育実践マスターブック-キーポイントが未来をつくる-」という形でまとめられていった。

「特別支援学校における自閉症の特性に応じた指導パッケージの開発研究―総合的アセスメント方法及びキーポイントとなる指導内容の特定を中心に― 」(平成20年9月)

特別支援教育情報センターより抜粋

自閉症の特性に応じたカリキュラム

 知的障害特別支援には、通常級にはないカリキュラム編成を行うことができる。その一つに「自立活動」がある。

<自立活動の目的>
個々の幼児が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主 体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い, もって心身の調和的発達の基盤を培う。

特別支援 学習指導要領 総則編より抜粋

 自閉症に対応する指導を行うという意味では、この自立活動をどう活用するか、ということがとても大切になる。そして、この自立活動における指導内容を検討する際にとても役立つのが、上記の研究でまとめられている「自閉症教育のキーポイント」となる。もう一度ここに立ち帰ることが大切だと感じた。

<自閉症教育のキーポイント>
自閉症教育のキーポイントとは、自閉症を併せ有する子どもたちが一人ひとりに応じた指導計画や授業を創造するための、中核となる教育目標・内容です。このキーポイントは、優れた実践例の分析などによって、約2年かけて開発したものです。
キーポイントは、
1.自ら学習する態勢になる力
2.自ら指示に応じる、指示を理解できる力
3.自ら自己を管理する、調整する力
4.自ら楽しいことや嬉しいことを期待して活動に向かう力
5.自ら何かを伝えようとする意欲と個に応じた形態を用いて表出する力
6.自ら模倣して、気づいたり学んだりする力
7.自ら課題解決のために注視すべき刺激に注目できる力

の7つの項目であり、自閉症教育の「7つのキーポイント」と呼ぶこともあります。

自閉症教育実践マスターブックより抜粋

 たすくグループでは、ご家族と協働して、この7つのキーポイントの指導を行う指導体制を整えている。ここからさらに一歩踏み込んだ「機能的な目標」というものを通して、7つのキーポイント(J⭐︎sKeps)を高める指導方法が確立されている。障がいによる学習上・生活上の困難を改善するためには、7つのキーポイント(J⭐︎sKeps)のような、障がい特性に応じて特化した学習が有効であると、研究上も実証されている。将来を見据えて、幼児期・学齢期で学習すべきことは何か。

できる限り効率的に、必要な学習経験を積める環境を整えてあげたい。

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