『夢十夜 第一夜』を読む。考察、感想②

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夢十夜 第一夜 第二弾です。前回は女性の母性が溢れてバブみが半端ないところで終わりましたね。もう一回読みましょう。出典は変わらず、夏目漱石 夢十夜 (aozora.gr.jp) さん。

 じゃ、私の顔が見えるかいと一心に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。

 ママーーーー!!!!!!!!マッ…ママーッ!!!!!

 良すぎる。この世の母性の全てがこの一文に表れている。「なに?当たり前のことを聞いて、変な人。それはそうだからこうじゃないの」って笑ってくる女性。最高。母性の塊すぎる。エモ。僕たちは結局、女性にどこまでも母性を求めてしまうのかもしれない。

 このままだとママに甘えて止まらないのでさっさと次に進みましょう。

 しばらくして、女がまたこう云った。
「死んだら、埋めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。

 しばらくして、ってのがいいですね。女性も、そろそろ語り手が受け入れられたかなーってのを見計らって切り出したんだろうな。自分が死ぬ話だし。

「真珠貝で穴を掘る」っていう表現、めちゃめちゃ文学的で好き。それはそれとして、貝で人1人が埋まるくらいの穴を掘るのだいぶハードル高くない?調べたら一応真珠貝って30cmぐらいはあるらしい。にしても。貝をスコップか何かに改造しないときつそう。

そうして天から落ちて来る星の破片(かけ)を墓標(はかじるし)に置いて下さい。

いいですね、星の破片(かけ)エモい。貝で穴を掘り、星の破片を墓標にする。絵が綺麗すぎる。

そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢いに来ますから」

 言った!!!言ったよこの女性!!!メンヘラ寂しがりマザコン男性に言った!!!「待っていてください」「また逢いにきますから」!!!

 こんなこと言われたら、もし語り手がこの人しか生き甲斐がなければ、死ぬまで待ってしまう。進歩をやめてしまう。前に進むのをやめてしまう。ただ彼女が死んだところで立ち止まり、ただ彼女が帰ってくるのを待ちぼうけてしまう。

 でも、このセリフがないならないで、死んだように生きてしまい、結局前には進めないままかもしれないから、止まっているとしても、生きているだけいいのかもしれない。

自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。

 ちゃんと確認してる。えらい。でもこれはあれかな、待ちきれないんだろうな。じゃあいつ?いつなの?って感じだ。

「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」

 自分は黙って首肯うなずいた。

 ずるい、ずるいな。詳細は言わずに、先に言質を取ろうとしている。こんなの、うなずくしかない。

 多分、先に待っている期間のことを想像させてるんだろうけど。待っている間はただ、日が昇って沈むだけ。それでも耐えらえる?ってことなんだろうけど。それにしてもずるい。

女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。

 百年か~長い。

「百年、私の墓の傍(そば)に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」

 墓の傍か~。きつそう。お腹とか空きそう。

 だからさっき、日が昇って沈むのを繰り返すって話をしてたんですね。ただ他事をしながら待つなら、そんな視界にならないもんな。

 でも、「きっと逢いに来ますから」って言ってくれるのは、とっても嬉しいですね。逢いに来ないといわれるよりよっぽど良い…良いのか?スパッと切られたほうがいいんじゃないか?いやでもスパッと切ると語り手は耐えられないタイプかもしれない。

自分はただ待っていると答えた。すると、黒い眸ひとみのなかに鮮あざやかに見えた自分の姿が、ぼうっと崩れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長い睫(まつげ)の間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。

 ぼうっと崩れたってことはおそらく泣いていて…そのあとに涙が垂れたってちゃんと書いてありますね。なるほど。

 女性側も多分不安だったんでしょうね。だから、待っていると言われて、安心して泣いている。相思相愛だにしても、100年は長い。

 そして、亡くなってしまいましたね………。

 長くなってきたので今回はここまで。多分次かその次で終わります。


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