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インスタントな答えが意味をなさなくなってきている時代だからこそ自分の内面に向き合うことが大事〜人生を変える読書/堀内勉

大型書店のビジネス書コーナーにいくと、読書術の本が山のように売られています。内容を見てみると、それらの多くはメソッドについて書かれている。

・どうやって素早く情報を仕入れるか→目次で全体像を把握してから必要なところだけ読みましょう、とか、太字になっているところを中心に目を素早く仕入れましょうとか

・記憶に残して活用するには→他人に読んだ内容を話す、ブログに投稿するなりのアウトプットの場を強制的に設けましょう、とか、読書ノートを取りましょうとか

大半のものは、こういった具体的なメソッドが焦点となっているように思います。
40歳が近いこの年齢になって、こういったハウツー物のビジネス書も一定の必要性を感じつつあります(ちょっと前までは、軽いなーとちょとバカにしてました。すみません。そんな自分が恥ずかしい)。
一方で、ハウツーというだけあって、読めば明日使えるようなtipsの詰め合わせのような体をなしています。

ある程度年齢を重ねると、嫌が上にも人生の終わりや目的、何を成してから死にたいのかという色々なことを考えるようになります。そこで何かの参考になればと思い手に取ったのが本書。

具体的なノウハウはほとんど書かれていません。事実、著者本人が読み方には拘らない、と言い切っていますw 途中、著者略歴、前書き、後書き、目次は丁寧にみるといった著者自身のメソッドは語られますが、本の数行。
むしろ、この先が読めない時代になぜ読書をする必要があるのかというのを改めて認識し、目先の課題解決以上にどんな本を読んでいくべきかを考える上で非常に参考になる1冊でした。
年が変わる前に読めてよかった!

「どんな本を読めば良いですか?」という問いの背景にある闇

著者は読書大全という古今東西の名著200冊の解説をした書籍も著しています。
そんな彼だからこそ、よく受ける質問が冒頭のもの。
何も考えないと、読書の初心者が経験豊富な先輩におすすめの本を聞くというシチュエーションで、何も違和感のない質問のように思います。
それに対する著者の回答は
「自分自身に聞くしかない」
というちょっと冷たいようにも思える返しをしています。

そもそも、この問いはどんな背景・理由から発せられたのか。
人々の欲望を駆り立てる、あるいは不安をある現代資本主義が透けて見えないでしょうか?他人が良いというものを無条件に信じる、何か答えや理想の到達点があって、そこに向かう1冊が知りたい。そんな状況かと思います。

出世するためには財務会計の知識を身につけて、会社の状況をよく理解していないといけない。と言われた時に、一生懸命勉強することを想像してみます。
それはそれで、非常に立派なこと。
でも、著者が問いかけたいのは無条件で前提とされている「あなたは出世したいの?」という部分なのかと。

そういう意味では、自分が自分の意思を持ち、すなわち自分が自分であり続けるための命綱が読書だと著者は主張しています。

これは、個人的には目から鱗でした。
お金をたくさん稼いだほうがえらい、会社で役職が上の人の方が偉い。
人間の本質とは何も関係ないことは、頭では理解しつつも、役員と聞くと無条件に緊張してしまったり、x億円稼いでいると聞くと、自動的にすごいと思ってしまったり。
そういうオートマチックな反応から資本主義に毒されている自分に気づくわけです。

読書とは「自分が何を望むのか」を明らかにする作業

著者はこう述べます。
自分の世代はギリギリかもしれませんが、特に自分たちより上の世代の方は1つの会社に就職したら定年まで勤め上げるのが当たり前、いかに会社で出世するかが第一に考えること、という時代だったそう。

しかし、時代の変化は急速で、ある程度の規模の会社が明日簡単に潰れるということはあまりないでしょうが、勤めている会社だって、どれだけ続くかわからない。
で、東日本大震災やコロナを含め、何が起きるかも見通せない。

そうなってくると、信じるべき、軸にすべきは自分の内側にしかありません。

自分の素直な欲望に従うことが、ある意味「恥」だというような時代を生きてきた世代は特に、自分が本当に求めるもの、やりたいことは何かを見つけることが難しくなっているかと思います。

読書を通して、自分自身が何を望んでいるかと向き合いましょうというのが著者の主張です。
これは、自分も深く納得するところです。

自分の読書遍歴を振り返ってみても、どうもインスタントというは直近の課題を解決するためにと本を選んでいたことが多かったように思います。
来年からの読書との向き合いを考えるに、非常に参考になる一冊でした。

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