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学年替わりの今、スランプを解消する特効薬とは

<【1】より続く>
子どもの納得感を大切にした授業のために

 学年替わりに起こりがちなスランプを解消するための特効薬は、学習の1つの要素である「どのように学習するか」という視点において、「なぜそうなるの? なるほど、そうか!」という納得感を大切にした学習に切り替えることなのです。
 でも、学年が変わり学習レベルが変わったからと言って即座に学習に向かう心の持ちようを変えることは出来ません。12月と1月の2ヶ月をかけてやっと間に合うというところでしょうか。

ここで、集団指導の進学塾の講師の方々にお願いが2つあります。
■1つめ) 基礎概念の理解を促すための質問応答型の授業を増量していただくこと。

■2つめ) 宿題は質を維持したまま減量していただくこと。

■1つめのお願いです。
今(学年が変わる前)既にいっぱいいっぱいになっている子どもたちの90%以上は、大量演習で繰り返し学習になっています。知識を覚える・解き方を覚える・考え方を覚える・公式を覚える、ついには「この問題の解き方を覚える」というように暗記だけの学習を進めているはずです。

「回数を重ねればいずれ解けるようになる」「成績が上がらないのは頑張りが足りないからだ」と思い込まされた学習を続けているうちに、覚えられないことに自己肯定感を砕かれます。

でも、本当に足りないのは、原因や理由の納得です。応用単元の問題に入る前に、この時点までに分かっておかなければいけない基礎概念の確認を、“おもしろおかしく”行っていただきたいのです。その際重ねてお願いがあります。概念や知識の受け渡しだけを目的にした一方通行の授業を行うのではなく、子どもたちの身体感覚を刺激するような、子どもたちに具体的な状況が見えるような授業を心がけてほしいのです。そのために必要なことは子どもたちの発言を引き出す“質問応答型”の語りです。

 身振り手振りを交えて楽しそうに子どもたちに質問し、その答えがトンチンカンであっても、笑顔でフムフムと聞き、当意即妙にヒントを返す。考えて答えを見つけ出すのは生徒、子どもたちが答えを出す手助けをするのが教壇に立つ講師という場面設定をしっかりとイメージして授業に臨んでください。

 大学入試改革に伴って小学校でも“アクティブ・ラーニング”を取り入れ始めています。一部の塾でも実験的に始まっていますが、内情は寒々しいもののようです。
講師が、
「は~い、この問題をグループみんなで相談しながら答えを出してみよう」と言うだけで、1時間の授業でたった2問しか進まなかったと不満を漏らす子どもに何人も出会いました。

アクティブ・ラーニングとは、舵取り役の即興力が試されるものだと思います。ジャズの即興(アドリブ)は、偶然のミスタッチから始まることが多いようです。それと同じように、子どもたちの予期しない反応があったときこそ、突っ込みどころだと捉えて、子どもたちの身体感覚に強烈に納得感を植え付けてほしいと思います。この業界のベテラン講師の熟練のワザを期待したいのです。


■2つ目のお願いです。
「宿題は質を維持したまま減量していただくこと。」

学習を効率的に行わせるには、スピーディーな学習とスローな学習をきっちりと区分けして、メリハリをつけさせることです。

スローな学習は試行錯誤する力を鍛えます。自分の頭脳に収納した知識の中から何が使えそうなのかを感じ取り、もしそれを使えばうまくいきそう、またはうまくいきそうでないと予測していきます。仮説する力・予測する力・修正する力を鍛えます。“一を聞いて十を知る”子どもを作り上げるには是非とも必要なことです。

 スローな学習が心おきなく実行出来るようにしてあげるためには、課題の量を減らしてあげる必要があります。これをやって、それが終わったらあれをやって、あれが終わったらこれもやって・・・とやるべきことが数珠つなぎだと感じる時には、どうしても終了させることだけが目的になります。

宿題を減らすか、優先順位をつけて、“必ずやるべきもの”と“出来ればやっておく方が良いもの”と区分けして提示することをお願いしておきます。


ここにお願いした2つの事柄は、人気講師になるための必須条件です。

子どもが、「アッそうか!」「なるほど!」と感じたとき、子どもは快感に満たされます。快感を与えてくれる講師が、その子にとってのアイドルです。
そして、学習量を自分の裁量で調節できる自由は、大人に一歩足を踏み入れた子どもたちの学習モチベーションを高めます。

学習内容が急に難しくなる2ヶ月前のこの時期から、質問応答型の手法を駆使して子どもたちを授業の中で楽しませていただきたいと願っています。


© 西村則康 2025

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