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漂流教室 No.42 「『源氏物語』から『豚の脂』」
さて、玄宗皇帝は首尾よく息子の嫁さんを奪い取りました。
わざわざ一度出家(?)させてそれから還俗させてという、手間暇をかけて自分の妃にしたんだから、そりゃあたいそうなご執心です。
楊貴妃を温泉付き別荘に住まわせ、楊貴妃のために大増築もおこなったということです。
その別荘が有名な「華清宮」。
もともとは「温泉宮」だったんですが、玄宗皇帝の時代に「華清宮」に改めました。
で、温泉を「華清池」と呼ぶ。
この温泉の楊貴妃入浴シーンが、あの「長恨歌」の中でこう歌われています。
春寒くして浴を賜ふ華清の池
温泉水滑らかにして凝脂を洗ふ
侍児扶け起こすに嬌として力無し
始めて是れ新たに恩沢を承くる時
春まだ寒いころ、華清の湯に入ることを許された。
温泉の湯は柔らかく、凝脂のごとき肌を洗う。
湯を上がるも侍女に助け起こされるほどに力弱く、
この時に初めて皇帝の寵愛を受けたのであった。
(訳…私、すみません、漢文の訳は不得意なんです。)
「凝脂」は文字通り、凝り固まった脂ですね。
豚の脂、ラードですな。
楊貴妃の肌をラードに例えている。
現代では考えられませんね。
「いやあ、あなたの肌は美しいですなあ。まるで豚の脂のようだ」
間違いなく殴られます。
いや、訴えられるかもしれない。
お縄になっちゃう。
それにしても、なんでこんな表現なんだろう?
私が思うに、若くつやつやした肌は水をはじくんじゃないかな?
まだ子供たちが幼かった時、お風呂に入れていて実感しました。
「これぞ凝脂!」
自分自身の肌と比べると、子どもたちの肌はホントに水をはじく。
しかも色味もきれいですよ。
純白。
若々しく美しい肌を例えるのにこれ以上ふさわしい言葉はないのかもしれない。
とはいえ、実際に使用するつもりはありませんが。
「長恨歌」は白居易の作。
白居易は白楽天とも呼ばれます。
日本では白楽天のほうがよく通っているかな?
「長恨歌」と白居易について、次回だらだらと書き連ねます。