スピノザ用語集 #1「愛」
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こんにちは、Guttiです。スピノザについていろいろな記事を書いておりまして、まだまだいろいろ書きたいことはあるのですが、いつものような4,000字5,000字くらいの記事を書くとなると、それなりに時間や労力を要するものだったりします。
いつも長文のものばかりですので、読む方もしんどいかもしれないということもあり、短くて読みやすいもの、ちょっと長いけどしっかり書くもの、うまく書き分けられたらなと考えています。本音を言ってしまうと、どうしても記事が書けない、でも何か書きたい、という日のための苦肉の策でもあります。
試みとして、スピノザの代表作『エチカ』や『政治論』『神学政治論』などに出てくる、重要なキーワード、概念についての一つ一つを、短い記事で紹介していくのはどうかなと思いました。
私自身の勉強メモ、備忘録の代わりにでもなれば、という程度のものですので、さっと読み流して頂けるものとして捉えて頂ければと思います。どこまで続けられるかわかりませんが、いったん思いつきのままにスタートしてみようと思います。
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スピノザ用語集
参照・引用文献:『スピノザ全集』(岩波書店)
基本的な方針としては、『エチカ』を中心に私が独断と偏見で、重要だと思われるものをピックアップします。『エチカ』以外で重要性を増す群衆(Multitude)、国家(civitas)、自然権(jus naturae)などの概念は、適宜『政治論』や『神学政治論』などからも参照、引用します。
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<あ行>
愛(amor)/ 憎しみ(odium)
「愛」はスピノザにおいては極めて重要な概念です。その対概念としての「憎しみ」もあわせて紹介します。
スピノザ哲学の特性を表わすその最大の使用例は、「神への知的愛(amor Dei intellectualis)」です。しかし、これはこれで詳細な説明が必要なので、こちらは<か行>で再び登場することでしょう。
そもそも、スピノザにおける「愛」とはなんでしょうか。「憎しみ」とあわせて引用します。
スピノザにおいては、「愛」や「憎しみ」といったものは、絶対的なものではなく、人間がもつ「感情(affectus)」のバリエーションにすぎません。スピノザにおいての感情とは、基本的に三つのものからなります。
すなわち、「喜び(laetitia)」「悲しみ(tristitia)」「欲望(cupiditas)」です。「愛」は喜び、「憎しみ」は悲しみの、別表現ということになります。
この「愛」と「憎しみ」の説明のあとすぐに、恋愛?にも通じる説明がなされます。
「感情」についての説明は、「感情」の項目でやります。ただ、前提として、スピノザにおける「感情」とは、身体的なものであると同時に、精神的なものであることが、セットです。
それらは、同じもではあるが「現われ方」が異なるという考え方で、その「現われ方」は同時並行的です。これはスピノザにおける「心身並行論」と呼ばれる重要な概念です。
最後に、スピノザの「諸感情の定義」での「愛」と「憎しみ」の項目をもう一度見てみます。
「外部原因の観念が伴う」というのが、スピノザ哲学の特性です。外部原因とは、自分にとっての「他者」あるいは「事物」ということだと思います。他者は、両親、兄弟、友達、同級生、同僚、初めて出会った人、ペット・・・などなど。事物は、食べ物、本、絵画、車などなど。人への愛、物への愛、愛の形はいろいろありますね。憎しみの形も同様です。
私たちは他者あるいは事物との実際の遭遇、関係性において、身体的な反応を受け、そして精神においては、それらの他者なり事物なりを「表象(imaginatio)」します。他者および他者の観念としての表象(イメージ)を原因として、私たちは喜んだり悲しんだりするということです。
この外部原因を伴う感情は、身体が受ける受動的なものですので、受動的な感情ということになります。喜びにおいてさえ、それは外部原因を伴い、かつその原因をはっきりと認識できるものでない場合は、受動的なものなのだと思われます。「恋は盲目」の場合の恋は、原因がよくわからないままの恋ですので、それはスピノザにおいてはまだ受動的な感情なのです。
反対に、能動的な感情というものもありますし、受動が能動へとシフトしていく、またはその反対、ということもありますが、これについては「感情」の項目で説明していくことになると思います。
このスピノザの「愛」の定義に対し、よくいわれるのが、「愛とは、愛するものの意志である」というような考え方になるかと思います。しかし、スピノザは、そのような説明は、愛の本質ではなく、特性にすぎないとばっさり切ります。スピノザは、もちろん人間の意志は認めますが、自発的な自由意志というものはありえず、意志には必ず、何かしらの外部の原因が伴うものなのだと考えるのです。
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