正義の名の下に行われる合法的なパワハラを見抜けよ! キャリアコンサルタントや産業カウンセラーたちに告ぐ
パワハラにも、色々な種類があるが、もっとも狡猾なのは、正義の名の下に行なわれる合法的パワハラである。
正義の名の下に行われる合法的なパワハラとは、明らかな業務上のミスを指導するという正当性を盾にとり、相手に対して道徳的に非難・攻撃するという行為である。道徳的な正当性や指導という名の合法性を利用し、相手の不備を指摘し、自身のストレス発散の捌け口にする行為である。この種のパワハラは、パワハラを受けた被害者も、端緒に自身のミスがあるために、相手のパワハラに気づかず、自身を責めることになる。また、ミスの指摘という体裁を取るために、合法的な指導として正当化される。
一例を挙げると、事務において少しの誤字脱字のミスをしただけで、長時間の指導を加え、叱りつける行為である。あるいは、挨拶、連絡・相談・報告など、やるべき行為をしなかったとして、失礼や無責任であるとして、相手を道徳的に責める行為である。人間は完璧ではないために、ちょっとしたミスはするものであるが、そのヒューマンエラーについて、過度に厳しい指導をするわけである。そのような行為は、パワハラではなく、組織上の合法的な指導であると見做され、周りからも放置される場合が多い。また、訴訟に持ち込んでも、パワハラではなく、組織上の正当な指導や主張だと見做されると思われる。つまり、合法的なパワハラである。
正当な指導という正義の名の下に、何度も厳しく仕事上のミスを指摘し、相手を攻撃・支配すると共に、裏では自身のストレスを発散する手段にしているのである。
正義の名の下に合法的パワハラを受けた被害者は、攻撃性のある言動を受け続け、道徳的劣等感を植え付けられ、自尊心が低下することになる。そして、知らず知らずのうちに、心が病んでいき、メンタル不調や自殺念慮に至ることがある。
道徳ほど暴力的なものはないと知るべきである。道徳は、それに合致する者を称賛はするが、それに違反する者を攻撃し、排除する。この道徳の持つ本来の攻撃性に重ね合わせ、自身のストレス発散や支配欲を満たすために、あらゆる組織において、合法的パワハラが行われ続けている。ちなみに犯罪者に向けらける社会的排除も、合法的パワハラと構図は同じである。一度犯した過ちを許すことなく、叩き続け、正義の名の下に、人々は非公式な社会的制裁を加え続ける。このような社会では、立ち直ろうとする犯罪者も、立ち直ることができない。
対人援助職に求められるのは、正しさよりも優しさである。ミスや過ちをした人を排除や攻撃せずに、許し、優しさで包み込むことが大切である。しかし、ソーシャルワーカーやカウンセラーなどの対人援助職の福祉の職場においても、合法的なパワハラが行われていることがある。
キャリアコンサルタントや産業カウンセラーは、パワハラを扱う専門職であり、このような正義の名の下に行なわれる合法的な組織内のパワハラについて、どう対処すべきなのだろうか? まずは、自分の正義が他者の心を傷つけることがあるとわかる感性を磨くことから始めなければならないと思われる。