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【考察】なぜ狐の妖怪キャラは銀髪、イケメン、最強の属性を持つようになったのか。


※私独自の見解です。

はじめに

狐の妖怪キャラ(人間の姿)=妖狐は、
「銀髪(白髪)」で「イケメン」、かつ「最強」(能力的に)な属性を兼ね備えている気がする、とふと思った。

たとえば、『幽☆遊☆白書』の蔵馬、『神様はじめました』 の巴衛、『妖狐×僕SS』 の白鬼院凛々蝶、『妖怪ウォッチ』の九尾リュウスケ。
他にも妖狐キャラってだいたい似た属性持ってる。

狐って、ずる賢いとかあまりよくないイメージもあるし、動物界でとりわけ地位が高くない気がするんだけど(失礼)、
なぜ妖狐が二次元だと「銀髪(白髪)」で「イケメン」で「最強」という風に描かれがちなのか、ということを考えてみたい。

今回は、ただの狐キャラではなくて、ここでは人間の姿である妖狐キャラに絞って考える。

妖狐がハイスペック属性なのは、
以下、大きく4つの背景があると考えた。

1. 文学と芸術からの影響

・古典文学 
古典文学では狐は頻繁に取り上げられている。
まず古来日本(古墳時代〜平安時代ごろ)では、狐は稲を害獣から守ってくれる存在であり、比較的良いイメージで描かれていた。その当時、狐が妖怪として登場することはほとんどなかった。
だけど、中国から伝わった『神明鏡』の「九尾の狐」に関する伝説の影響により、美女に化けたり、ずる賢いなどの邪悪なイメージを持たれるように。
とはいえ、19世紀ごろから、文学者の狐への再解釈が進み、再び良いイメージが取り戻されるようになる。

・『神明鏡』(14世紀)
九尾の狐は邪悪な存在として登場。
平安時代に上皇に仕えた美女の正体が「狐」であったという物語。狐が美女になって周りの人を次々失脚させる。

・『南総里見八犬伝』(19世紀)
九尾の狐は神獣として登場。作者の馬琴は『神明鏡』に代表される狐を悪であるとするイメージは『封神演義』などの物語に影響された近年のものであるとして退け、九尾の狐は元来神獣であるという考証を作品や随筆のなかで展開している。

「九尾の狐」Wikipediaより

 

・『幽☆遊☆白書』(1990年)
たぶんここ30年くらいの妖狐キャラ登場作品に一番影響与えているのはこれ。
一般的に有名でアニメ化されている初期の妖狐キャラといえば、『幽☆遊☆白書』の蔵馬。美しい外見、最強スキル、知性と冷静さ。
それ以前にも妖狐キャラはいたが上記属性を備えているキャラは見当たらず。

幽遊白書の漫画は5000万部以上、アニメTV視聴者は112話平均17.6%。
これが他の作品に与えた影響はかなり大きいと考える。妖狐キャラを崇高なものに昇華させて、認知を広めたのではないだろうか。


『幽☆遊☆白書』の蔵馬(コレイズHPより)


2.日本人は狐が好き


そもそも日本人は狐に対して比較的好意的ではないだろうか。

・稲荷信仰
稲荷神社の狐は、稲荷神の使者とされてきた。
これは日本特有の信仰。
いろんな説があるが、稲を食べるネズミの天敵がキツネだったことで、稲と狐を結びつけて、狐を大事にしていたそう。

伏見稲荷大社の狐(Stock Shotより)

・変幻自在
狐は変身能力を持つとされる言い伝えがある。
その神秘的な能力が魅力的に感じる人も多い。

ことわざで「虎の威を借る狐」とか「狐と狸の化かし合い」とかあるけど、なんだかんだ狐好きな日本人。そもそもことわざで登場する動物って狐に限らず、犬、狸、馬とかもディスってるよね。

3. 狐自体の魅力

・外見
動物としての狐の外見も関係していると思う。
しなやかな動きとふわふわ毛並み、スラっとした体型。
日本人ってライオンの力強さや威厳な感じよりも、華奢で愛らしいものに惹かれる気がする。

キタキツネ(Stock Shotより)

・妖狐のイメージ像
九尾の狐は江戸時代の浮世絵にもしばしば登場。
当時人気浮世絵師であった葛飾北斎や歌川国芳も狐の絵を描き、いまに近いイメージが出来上がってきている。

葛飾北斎「三国妖狐伝」(すみだ北斎美術館所蔵)


歌川国芳「三国妖狐図会 蘇妲己駅堂に被魅」
(国文学研究資料館所蔵)

4.文化的な象徴性

現代の狐のイメージとして、

・ずる賢い
・化ける?
・他の動物よりも華奢

言い換えると

・ずる賢い→知恵がある
・化ける?→神秘的
・他の動物よりも華奢→優美

擬人化すると、
知的でミステリアスで美少年的な姿になるだろう。


結論

妖狐キャラが、挙げた3つの属性を備え始めたのは比較的最近のこと。『幽☆遊☆白書』の蔵馬が登場したことで、日本における妖狐キャラのイメージが確立されたと考えられます。
日本では、稲荷神の神使として祀られていた歴史があるため、狐に対する悪いイメージはそれほど強くありませんでした。

さらに、当時は妖狐キャラが少なく、世間での妖狐のイメージが未成熟だった中で、蔵馬が登場し人気を博したことが、そのイメージの定着を促進しました。これにより、妖狐=ハイスペックという地位が確立されたのです。

その後、ゲームやアニメ、漫画、グッズなどで蔵馬に似た属性のキャラクターが多数登場し、妖狐のイメージがさらに広まりました。これにより、妖狐の「ハイスペック」というイメージが強固なものとなりました。

宇宙人のイメージにも似た側面があります。宇宙人は「頭でっかち」「目が大きい」「顎が小さい」といったイメージが定着していますが、実際に宇宙人を見たことがある人はほとんどいません。このイメージも、SF作品などによって作り上げられたものです。

現在のところ、妖狐のイメージはかなり定着していますが、今後、さまざまな要因によって変わる可能性もあります。特に、まだイメージが定まっていないジャンルにおいては、作品によって世間のイメージが形成されていくでしょう。

妖狐キャラが挙げた3つの属性を備え始めたのは最近のことであると判明した。

『幽☆遊☆白書』の蔵馬が出たことで、日本人の妖狐キャラのイメージがだいぶ定着したと考えられる。
そもそも日本では、稲荷神の神使として祀られていた背景などもあり、狐に対する悪いイメージはそこまでなかった。

それに加えて、当時、妖狐キャラ自体少なく、世間の人が妖狐のイメージができていない中で、蔵馬が登場。世間からの人気を獲得したことにより、そのような妖狐イメージがすんなり定着したのも納得できる。

その後のゲームやアニメや漫画、それ以外のグッズなどでは蔵馬に似た属性キャラが大量に出ることで、さらにイメージ定着が促進。
妖狐=ハイスペックとしての地位を手に入れることになる。

宇宙人イメージにも少しに似たところがあると考えている。宇宙人は頭でっかち、目が大きくて、顎が小さい、というイメージがあるだろう。
ただ、実際に宇宙人をみたことある人はほぼいない。SF作品などによって、宇宙人のイメージ像が出来上がっているのだ。

宇宙人イメージ

だいぶ世間のイメージが定着している妖狐だが、
今後、様々な要因で世間の妖狐のイメージがまた変わるかもしれない。

まだイメージが定着しきっていないジャンルのものは、特に作品によって世間のイメージが作り上げられていくだろう。


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