
女性浮世絵師
葛飾北斎の娘が、浮世絵師であった事はずいぶん知られてきたところではありますが、
明治時代に、四人の女性浮世絵師がいた頃があります。
それも外国人です。
江戸末期、フランスで“ジャポニズム”が起こります。
日本の陶器を輸出する時に、緩衝材として浮世絵の紙を使っていた為に浮世絵が、注目を受ける様になります。
「ゴッホ」「ピカソ」「モネ」「セザンヌ」などなど、浮世絵に影響を受けた画家は、沢山います。
そして、実際日本にまで来て、浮世絵を学ぶ人達まで現れてきます。
その中の一人、「ヘレン・ハイド」はニューヨーク生まれのアメリカ人。
美術学校で、美術を学んだ後、フランスに渡り“ジャポニズム”に関わり、木版画を始めます。
1899年来日して、日本画を学び、浮世絵に興味を持ち、15年も日本で生活しながら制作する様になります。
ハイドの木版画は、当時の日本の生活を描いたものが多く、母や子供を主題にした作品が多いです。
私は彼女の作品が一番好きです。


「バーサ・ラム」は、アイオア州生まれのアメリカ人で、24歳の頃、シカゴ万博で“ジャポニズム”に触れ、“アーツ・アンド・クラフツ運動”
が盛んだったシカゴで、美術を学びます。
1903年、新婚旅行で、来日した際、浮世絵師に学び、その後、7回も来日して、彫り、摺りを学び制作していきます。
「小泉八雲」の物語に影響を受けた作品もあります。


三人目の「エリザベス・キース」はスコットランド生まれのイギリス人です。
大正時代、28歳の時、東京で仕事をしていた姉夫婦を頼って来日し、日本文化に触れる事で、浮世絵の世界に入り、9年の間日本で制作していました。
その間、義兄の務める新聞社で、風刺画を出したり、韓国や中国、アジア諸国を旅行したりして、各地の作品を制作しています。


そして、「リリアン・メイ・ミラー」は日本生まれのアメリカ人。アメリカ人外交官の娘で、9歳から「ヘレン・ハイド」の薦めで、日本画、水墨画を習いました。
アメリカで教育を受けた後、また日本に戻り、25歳の頃から水墨画と木版画を始めます。
35歳の頃は、京都に住み、制作をいていたそうです。
彼女は、彫りも摺りもしていたそうで、浮世絵を良く研究していたと思われます。


四人とも、その当時の『新版画』という版画になります。
新版画(しんはんが)とは、明治30年前後から昭和時代に描かれた木版画のことを指し、版元を中心として、従来の浮世絵版画と同様に、絵師、彫師、摺師による分業により制作されており、浮世絵の近代化、復興を目指した。「新板画」、「大正新版画」とも表記される。
江戸時代の浮世絵とは違って、外国人の女性という目で観た新しい浮世絵を、制作していきました。
新しい浮世絵も楽しいものです。