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羽田空港から多摩川スカイブリッジを渡って京急大師線を乗りつぶした話
盲腸線。起終点どちらかが他路線に接続していない行き止まり路線のこと。このような路線を乗りつぶす場合、基本的には来た道をそのまま折り返すことになってしまう。
……がしかし、来た道を戻りたくない原理主義者としては単純往復は耐え難く、バスや徒歩などでどうにかして行き止まり駅から脱出できないか試行錯誤している。例えば、以前福岡へ行った際にバス・船・コミュニティバスを活用し、南博多線・香椎線(西戸崎側)・西鉄貝塚線を1駅も折り返さずに一筆書きで乗りつぶすことに成功した。
そんな盲腸線脱出旅において参考にしているのが以下のサイト。
サイトに飛ぶとわかると思うが、スタイルがだいぶ古のものとなっており載っている情報もかなり昔のものだったりする。盲腸線の特性上、廃線になってしまうケースも珍しくないため乗りつぶしたい人は早めの行動をオススメする。……とその一方で、最近になって新たに脱出方法が加わった盲腸線もある。それが今回取り上げる京急大師線だ。
京急大師線は京急川崎から多摩川の南岸に沿って東京湾手前の小島新田駅まで結ぶ路線だ。元々は川崎大師へのアクセスを目的として開業し、実は京急の中で最も古い路線となっている。
そんな大師線の終着駅、小島新田。羽田空港の多摩川対岸に位置するが、今まで空港へ行くには西側の大師橋を渡ってぐるっと回り込まなければならなかった。「羽田空港の利用ついでに大師線を乗りつぶしたいけど、これだと徒歩接続はキツすぎるなあ……」なんて思いながら Google マップを眺めていたところ、ある日新しく道ができていることに気づく。なんと 2022 年3月に多摩川スカイブリッジという橋が開通したのだ。
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というわけで「これはさっそく行ってみるしかない!」と思い旅程に組み込んだ。羽田空港へ行く道のついでだと到着時刻を気にしないといけないため、空港からの帰り道で利用することに。ちょうど羽田に 15 時頃着で、その後は何も用事がないという素晴らしい旅程。私は旅行先での滞在時間を増やすために帰りは夜に羽田へ着く旅程を組むことが多いが、今回は上手く工夫できた。
旅の始まりは梅田駅から
というわけでようやく旅行記スタート。関西の方にしばらく滞在する用事があり、その帰りに寄り道旅行を組んだ……という感じだ。この滞在に関してはまた機会があれば記事にしたい。
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さっそくホームへやってきた宝塚線急行に乗車。それにしても阪急梅田の3線同時発車はいつ見ても美しい。芸術の域に達している。
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宝塚線の急行は十三から次の豊中まで華麗にぶっ飛ばした後、急に各駅停車となってしまう。まあ路線距離が短いからこれでも遠近分離の役目は果たせているのだろう。豊中の次の駅、蛍池で下車。
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蛍池から伊丹空港にアクセスするには1駅だけ大阪モノレールに乗る必要がある。
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……がしかし、地図を見るとモノレールはだいぶ迂回している様子。これなら初乗りも課金されて割高な1駅分の乗車より、気合で歩くほうが良いのではないか?と思い、最短距離を歩いていくことに。
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蛍池を出てしばらくすると突然の下り坂。伊丹空港は歴史的に河川敷の土地を利用して作られたのか、周囲の土地からはやや低い位置にあるようだ。もし逆方向を徒歩移動する場合はキツイかも。
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で、一直線に歩いていく……が、空港直前でフェンスに阻まれてしまった。
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というわけで徒歩でも結局迂回することに。所要時間は 20 分程度だ。
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ちなみに今回は北側から回り込んだが、モノレールと同じく南側からでも所要時間は大きく変わらないと思われる。
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というわけで伊丹空港に到着。正式名称は大阪国際空港だが、周知の通り国際線は就航しておらず構内もコンパクトで地方空港という感じ。羽田や成田に比べて歩く距離は短く保安通過にかかる時間も少ないが、通過後にはカードラウンジなどがないため到着が早すぎると手持ち無沙汰になるかも。
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ちなみに私は見事に手持ち無沙汰となってしまったためぶらぶらと歩き回っていた。羽田だとプロペラ機って全然目撃できないから新鮮な光景だ。
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心地よい音を響かせながら飛んでいった。伊丹だとプロペラ機が就航している路線がそこそこあるらしい。
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羽田へ向かう
そんなこんなで時間を潰し、ようやく搭乗開始。
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伊丹空港の発着時は大阪上空を展望できるため、窓側の席がオススメ。梅田周辺の景色をバッチリ捉えることができた。
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橋が無数に架かっているのが淀川で、向こう側の高層ビル群が梅田。以前の大阪旅行記でも述べたが、やはり梅田周辺は東京の主要駅と比較しても遜色ないレベルの都会度だ。
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で、後はひたすら読書しているといつの間にか高度が下がってきたので再び窓の外を展望。ちょうど木更津駅が見えた。
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前述の通り普段は夜に羽田へ着く旅程が多いため、闇の中で街灯の明かりが輝く景色ばかり見てきたが、今回は陽の光のもとでしっかり房総半島を眺めることができた。
スカイブリッジへ向かう
タイトル的にはここからがようやく本編だ。羽田到着後、まずはスカイブリッジ最寄りの第3ターミナルへ移動する。ターミナル間の移動は無料の連絡バスを使えばよい。
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連絡バスは4分間隔というかなりの高頻度で運行しているようだ。車内はやはり外国人観光客が多い印象を受けた。
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で、3タミに到着後は羽田エアポートガーデンに入っていく。
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ちなみにエアポートガーデン入口から横に伸びる通路は立体駐車場行きで、ここから徒歩での脱出はできないので注意。当時は Google マップのルート案内がスカイブリッジを認識していなかったこともあり、私はよくわからないまま間違えて駐車場に突撃してしまった。
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エアポートガーデンを突き抜けて屋外へ出ると眼前には多摩川が広がる。
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そのまま通路に沿ってスカイブリッジの方へ。
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振り返るとこんな感じ。一応ここまでは屋根がついているので雨の日や猛暑日でも安心だ。
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ふと横を見ると東京モノレールが都心へ向けて爆走していった。
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大阪モノレールを見た直後ということもあり、改めて「モノレールとしては異様なスピードと編成数だよなあ……」と感じていた。
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空港横ということもあって空は広々としており、遠くにはスカイツリーも目撃できた。
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で、いよいよメインディッシュの多摩川スカイブリッジ。
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自動車はそこそこの交通量があるようだが、歩行者はあまりいない様子。まあこの橋渡ったところで工業地帯と住宅地しかないからな……。
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東京湾を望む。D滑走路へ向かう JAL 機と多摩川を爆走するボート、そして奥にはアクアラインの換気塔である風の塔……と、登場人物の多い写真になった。
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今度は着陸する JAL 機。
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もちろん ANA 機も見れる。さすがは羽田空港、橋を渡り切るまでに軽く 10 機以上は離着陸していった。
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多摩川の上流側を見るとこんな感じ。
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人も車も途切れたタイミングで1枚撮ってみた。やはり空が広々としていて散歩コースとしてはなかなか良い。
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ちなみに歩行者は少ないと前述したが、チャリ勢はちょくちょく湧いていた。多摩川サイクリングロードの終点と言えば天空橋付近の大鳥居だったが、今はスカイブリッジを終点にするのが良さそうだ。
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そんなこんなでスカイブリッジを渡りきり、次は小島新田駅を目指す。ちなみに羽田3タミからの距離で言うと、ちょうどスカイブリッジを渡り切ったあたりが中間地点となる。ここからさらに 20 分程度は歩くのに加え、工業地帯を抜けて住宅地に入るまではコンビニもないため水分補給には注意。
道中の景色はこんな感じ。
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貨物用の絶妙に錆びた線路と無骨な建築物、そして頭上に高速道路……と、なかなか工業地帯らしい景色が広がっている。
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貨物ターミナル的なところを抜けると……
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小島新田駅に到着。絶賛工事中だった。
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工事中の構内ってなんか独特の魅力があるなあ。
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ちなみにここまでの所要時間は、ターミナル連絡バスに乗車したところから計算して1時間かからない程度。間違えて駐車場に突撃してしまった時間のロスもあるため、1時間あれば余裕を持って移動できると考えて良さそうだ。もし今回とは逆方向で盲腸線脱出に挑戦する場合は参考にしてほしい。
京急大師線乗りつぶし
車止めがまさしく終着駅という雰囲気を醸し出していて良い感じ。……ただし周りは普通の住宅地なので地の果て感はやや薄いかも。
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折り返し川崎行きの列車が入場。
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盲腸線だと1日に数本しか来ないような限界路線も多いが、大師線はさすがに都市部を走る路線ということで 10 分間隔でやってくる。時刻表を気にしなくて良いのはありがたい。
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というわけで乗車。
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前面展望席。まじで助かる。
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で、各駅でけっこうな人数を拾いながらあっという間に京急川崎へ到着。ここまで利用客がいるとは思っていなかったので驚き。
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大師線は京急本線と違い1階の頭端式ホームに着くという、やや仲間外れな感じだ。
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で、ここからは普通に京急で都心へ……というのはつまらないので、JR 川崎の北口まで歩いていき、五反田行きの東急バスに乗車して都心へ向かった。道中、多摩川を渡る際に良い景色が見れたのだが、カメラがカバンの中だっため写真を撮りそこねてしまった。電車に比べて時間のかかるバスだが、普段と違う車窓をのんびり眺めるというのはなかなか良い体験だった。
おわりに
そんなこんなで多摩川スカイブリッジを渡って京急大師線を乗りつぶした話だった。スカイブリッジは景色も良く散歩コースとしてもオススメだ。ちなみに「歩くのは面倒だけどスカイブリッジの景色だけ見たい」という欲張りな人には都バスの空84系統を利用すると良い。ただ、10-16 時台に1時間1本という本数の少なさと、小島新田ではなく隣の大師橋に着く点には注意。
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ところで、大師線の所要時間は全線 10 分程度なので盲腸線脱出という観点では、「往復するのを避けるためにわざわざ1時間もかけるなんて馬鹿じゃないの?」と言われてしまえばまあその通りである。とはいえ、うまく一筆書きで盲腸線を乗りつぶせる喜びは何ものにも代え難い……とまで言えるのは私のような変態だけだろうか。
冒頭に紹介したサイト(これとこれ)には普通の旅行に組み込んでも十分な時短効果がある実用的な脱出も数多く紹介されているため、気になる方はぜひ見てほしい。私もちょこちょこ実践しているので、旅行記で積極的に紹介していく予定だ。
……といったところで今回はここまで。