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タシュクルガン 気高き命たち

中国最西端の町
タシュクルガン
ビザンチンから西安までの
数え切れないキャラバンの足跡が
踏み固めた平原の上に
青い眼の遊牧民は暮らす

タジク族の結婚式
花嫁は顔を隠し
民族衣装に身を包む
女たちはご馳走支度に勤み
子供たちはその間を走り抜けた

男たちはというと
四肢を縛った牛の口に
手ですくった水を飲ませている
そして徐にナイフを喉元に当てると
牛は鳴き声を上げる間もなく
滑らかに切り裂かれた

一人の少女がその光景をじっと見ていた
引きずり出された内臓が湯気を上げている
子供たちはそこに手を突っ込んで
冷えた指先を温める

あのひとすくいの水の敬意
赤黒い鮮血を吸い尽くす大地
少女の視線 牛の体温
彼らの命の循環は
何故こんなにも気高いのか

タジク族の祖先は
ペルシャ系のコーカソイド
はるか西からやってきた
しかし彼らは
祖先は空を舞う鷹なのだという

この土地で繋がれてきた
命のシルクロード

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