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【読書感想】うちらは江戸時代の百姓?「ザイム心理教」(森永卓郎)
財務省を信仰宗教に例えて皮肉ったこの本の著者は森永卓郎氏。
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昔はよくテレビに出られていた。ライザップに挑戦してCMにも出ていたニコニコしたおじさん。今の10代の方以外は、彼の顔を見れば記憶にあると思う。
この本は財務省・国税庁、そして現政権の税制度を批判する本だ。
◾️本書を手に取ったきっかけ
私がこれを手に取ったのは、やはりインボイスが始まり、私自身も彼らに疑問を持ったことだ。
この制度は、あまりに複雑で仕事が増えるだけ。誰のための、なんなんだと本当に思った。
ただ、本書の中でも「国税庁は警察より怖い」という言葉があったが、本当にその通り。
会社は省庁の指示に従わないなんて、ありえないのだ。
インボイスというより、私が言ってるのは国税監査が怖い。
省庁に反することをしたら、監査を通して、会社の経済活動はトドメを刺されるだろう。
実際、私も本書の感想を書いていくのが怖いくらいだ。ドキドキしながらも、森永氏の覚悟を受けて私も自分の気持ちをしっかりシェアしたいと思う。
◾️本書の感想
前半1/4くらいは、正直「書かれている内容の良し悪しの判断がつかない」という感じであった。
経済学の話なので、森永氏のロジックが正しいのか、森永氏は間違っていると言う人が正しいのかは、私にはわからなかった。
しかし後半になると、比較的、庶民の生活レベルの話になるのでわかりやすかった。
おそらく後半部分を読んで同意をしない庶民はいないと思う。逆に庶民以外は、慌ててそれっぽく抗弁するかもしれない。
庶民も薄々気づいていたことをしっかり書いてくれた形だ。
特に私に取ってわかりやすかったのは「生活必需品に使われる軽減税率が電気ガス水道には適用されずに、新聞に適用される理由はいまだに明確に説明されていない」という話だった。
ちなみに2023年現在、夕刊を廃止している新聞社は多い。
採算がとれないから発行できないのだ。新聞はいま、そういう時代だ。別に今に始まったことではない。
じゃあなぜ新聞が軽減税率の対象なんだ? 新聞社という報道機関と政府の関係を考えたら、大抵の大人は察しはつくだろう。
ちなみに私も新聞が軽減税率の対象である理由を調べてみた。下記が出てきて鼻で笑ってしまった。
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政府の言論統制がかけられてる新聞(この話も本書の中でたびたび出ている)となると、もはやプロパガンダ。
そんなニュースの知識を得ても仕方ないだろうと、本書を読んだ後では思う。
こういった形で、自分自身の生活レベルで「変だ」と思うことを例に論じているので説得力があった。
少なくとも、真に国民の生活レベルの目線に立って発信しているからこそ、我々庶民にとっては読む価値があると思う。
◾️所得税の年4万円減とか笑える
最近の減税ニュースを見て、驚き笑った。年4万円の所得税減。月3千円。こんなの、ないのと同じだ。
テレビの街頭インタビューでも私と同じ世代の人たちがコメントを言っていた。「子供を育てるにはお金がかかるんですよね」と、一言それだけ真顔で言っていた。
もはや怒りすらない人が増えている。
この雰囲気は、私はロシアに似ているなと思う。
私はロシア留学経験者。ロシア人は皮肉を効かせたことを静かに述べてニヤリと笑う。
それが極寒の地のギャグ風習だと思っていたけど、今は少し違うなと感じ始めている。
もう諦めついたことに、わざわざ怒りの拳をあげる気持ちもならないのだ。
国も官僚も、庶民のことなんてどうでもいいのだ。生まれた星が悪かったねと思っているのだろう。
◾️高給取りでいいが、か細い庶民を苦しめないで
この本には、官僚など富裕層に対する優遇措置(退職金、公務員の年金などの優遇の仕組み)も書かれている。
私は政府官僚などが高給取りなことに反論はない。責任の重い仕事だし、その地位に立つまでにそれなりに勉強もして努力もしているからだ。
しかし制度を決めれる権力のある人間が、自分たちの特権だけ確保・維持してるのはおかしな話だ。
本書にある一例として、相続税に関する富裕層への優遇制度の記載があった。
土地の評価額に関わらず80%減額となるらしい。
東京の一等地の豪邸に住んでいても、私のように地方のちっさいマンションに住んでいても、80%減額。
富裕層にとって土地の評価額が1000億円の80%減額は、相当助かるだろう。
でも本当に国の税収を上げることを考えているなら、普通は消費税を上げずにこういうところで税収を上げたらいい。
「80%減額ルールが当てはまるのは、土地の評価額が1千万円以下ね」とすれば、本当はなんぼでも、相続税だけでも、稼げる。
思い出して欲しい。
ジャニーズ事務所の旧代表取締役のジュリー氏の相続税は860億円と報道されていた。
これは土地ではなく株式の話だけど、富裕層というのはそういう庶民には想像できない規模のお金を持ってるのだ。
森永氏の言うとおり、私のようなバカでも「確かに消費税を増税しなくても増税の方法っていくらでもあるよね」って話だ。
ただ、残念ながら富裕層を優遇する方が、霞ヶ関には大きくメリットがあるようだ。
ここまで貧富の差がある今の時代にそれをやると、もう殿様と百姓の時代と変わらない。
これは本書でも書かれていたが江戸時代の百姓は、年貢を絞りに絞りとられる存在だった。
令和の庶民の私たちは、そういう存在になっていることをこの本が教えてくれた。非常に悲しくなった。
◾️真に問われる言論の自由
会社で国税監査対応などをしたことある人はわかることだが、国税の調査なんて、その年度に来た担当の気分感覚で見られる箇所も判断も変わる。
去年までいいと言われたことが、今年はダメと言われることもある。ものすごく曖昧。
本書の中にも、そういったことで料亭を畳まざるを得なくなり、タクシーの運転手となった人の話があった。
ルールが不明確な中で審査されて、アウトになれば事業が継続ができない。誰も声があげられない。
霞ヶ関も、新聞社も、大手企業も、財務省と国税庁の言うことは絶対だ。
本書でも解説されているが、世の中は事実、そういう構造だ。
だからこそ、森永氏が覚悟してこんな風に日本に当たり前にあるべき言論の自由をもとに本書を書いたことには本当に敬意を表する。
私もこの記事を書くことで、個人事業主になったときに痛い目を見るかもしれない。
でも「言論の自由」は守られるべきだ。これは自分の信念をもとに、自分の会社生活で経験したことと、この本で学んだことを合体させて書かなくてと思った。
私にできることは、noteでこうして「この本おすすめだよ」と皆さまに口コミすることくらい。
◼️おわりに: まだ希望があるなら
日本は平和で国民のことを考えていて、いい国だと思っていた。
しかし本書を読んだ後では、本書中にも記載があったが、本当に北朝鮮・中国・韓国・ロシアとも大して変わらない国だったんだなと改めて思う。
他国の民のことを「政府がしていることも知らず、言ってることを鵜呑みにして可哀想に」と思っていたが、もうこちらも何が正しいのかわからない。
気持ち的には、未来のない日本に乾杯と思っていた。
私もあと数十年働いたら、税の支払いを最小にすべく、森永氏のように田舎で自給自足生活でもしようかなと。
しかし数日経って、夫にもこの絶望感を話すとこんな答えが返ってきた。
「でも、きっと少しずつ、こうしてあるべき論が世の中に広がっていくでしょう。広がっているじゃない」と。
私がここで思い出したのは、ジャニーズ事務所が店じまいをすることになった話だ。
そんなこと、誰が考えただろうか。
利権が深く絡み合った巨大のビジネスが、終焉を迎える。
終わりは、世論によって突然くる。
そう考えると、諦めてはいけないと思う。良くないものが淘汰されて、あるべき社会の姿は描けるのかもしれない。
変なところに気を使わず、真っ当に経済活動をしたり。
貧困世帯でも子供達がしっかり学べたり。
そんな社会でやはりあって欲しい。それが持続的社会だ。
そんな気持ちを添えて、この「ザイム心理教」をオススメする。
庶民は一度は読んでみて損はないですよ。