
敵
鑑賞:2025年2月@テアトル新宿
奇っ怪。
権威ある元文学教授の引退シングル生活に敵がやってくる。
ジャンルずらしの作品。余生を一軒家で過ごす主人公。朝食を作り、歯を磨き、買い物をする。変わり映えのない日々の営みが描かれます。この長塚京三さんの所作に見入っていきます。変わり映えが無いと言っても、けっこう忙しいのも分かります。連絡が来たり、訪問者が来たり、お金の話が出たり。そんな日常をモノクロ映像で見せられ、終活モードにひたります。
しかし、そんな日常に、奇っ怪な現象といいますか、出来事が迫ります。あ、SFかホラーだったのかと。木造で戦前からありそうな一軒家、貴重な文学資料が棚に並び、ただでさえモノクロなのでレトロ感が強いのですが、iMacやスマホが少しだけ出てきます。この見せ方が上手すぎる。まさか、このトーンで迷惑メールの通知に悩まされる主人公なんて、不釣り合いです。この不釣り合いが、本作の特徴と思いました。
役者さんが、またステレオタイプをズラしてくる。松尾貴史さん、松尾愉さんというダブル松尾に、瀧内公美さん、黒沢あすかさん、河合優美さん。中島歩さんがそこに出てくるとは…!モノクロで映える長塚さん、瀧内さん、黒沢さん。
徐々に主人公の欲やプライド、カッコつけたいところが見えてくるのが良い味わいです。
「敵」は、じわじわと予期させる部分が面白いですが、実際それが具体的に出てくると、んー、少し見るのがつらかったです。
現代をモノクロで見るのは新鮮でした。
▲吉田大八監督といえば、「桐島、部活やめるってよ」。このインパクトは鮮烈です。