2. 純喫茶リリーの朝 /純喫茶リリー
純喫茶リリーの駐車場は、2台分しかない。
朝7時、そのうちの片方に赤いセダンが音もなく滑り込む。
降りてくるのは、もちろんリリーのママだ。
これでお客さんが停められるスペースは、あと1台分。
律子はいつも思う。
「ママ、何でお客さんより自分の車が優先なの?」でも、口に出すと「そんなもん、当たり前でしょ?」と返されるのがオチだ。
ママはカッカッカッとツッカケを鳴らして、鍵を差し込む。
ドアベルがカランコロンカランと響く。
この音、たぶん隣近所まで届いているんじゃないか、と律子