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今こそ知りたい!「ジョブ型制度」により変わる働き方 第2回

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第1回はこちら

ジョブ型がなじむ企業

柴田:ちょっと象徴的なお話をすると、ラーメンチェーン店とか、牛丼チェーン店とか、ああいうのはジョブ型がすごくなじむんですよね。


もうだいぶ前の話になりますけれど、日本でジョブ型の人事制度がまだ職務型って言われていて、第一次導入ブームがあった時に、某牛丼チェーン店さんが導入したんですね。まさにあれは基本的に仕事を標準化していかないと効率上がらないビジネスなので、そこに人を当てはめてオペレーションするという会社には向くんですよね。

一方、じゃあGoogleさんなんかどうですかというと、有名な欧米企業ですけど、ジョブ型じゃないんですね。
優秀なエンジニアがいれば儲かるっていうビジネスなので、箱じゃなくって、まずは優秀な人を採ろうと。そうすると、ジョブ型とまったく真逆な、それこそメンバーシップ型じゃないんですけど、要は本質的な職能型になるので、ジョブ型ではないんですよね。


ですから、グローバル企業が全部が全部ジョブ型かというと、そういうわけではないんです。

司会:なるほどですね。
ジョブ型を導入している会社って、いかにも先進的なのかなというような素人考えで思っていましたけど、そういうふうな形でも、おそらくないわけですよね?

どういうビジネスモデルに基づいて考えるか


柴田:日本の場合は大半の企業さんがメンバーシップ型、要は職能型なので、それから切り替えただけでも先進的に見えるわけですよね。
ただ、海外に目を転じてみると、ジョブ型だからといって必ずしも先進的かというと決してそういうわけではなくって、どういうビジネスモデルに基づいて考えるかによるかなとは思いますね。

加藤:私どもが去年、実態調査という形でいろいろな企業さんにご協力いただいて、今、どんな制度入っていますかというような質問させていただいた時に、大体3分の1がジョブ型。いわゆる職務等級というふうに以前言われていた、かなり純粋な海外のジョブ型に近いものをやられている。


3分の1は役割等級というふうに言うんですけれども、少しジョブの要素を入れながら、純粋なジョブ型よりは少し緩めの仕事基準の人事制度を入れている。残り3分の1が職能型ということになっていくので、何も今ジョブ型ってそんなに先進的なことではないんです。

人事のあり方を考える波が3回


今まで何度か本の中でも触れていますけれども、日本的人事のあり方って何度か変えなきゃいけないという大きな波があったんですね。
90年代後半、あるいは2000年代前半くらいに成果主義と共に、日本型の人材マネジメントを変えなきゃいけない。
それで、2010年ごろにグローバル人材、グローバル的な考え方を入れるために、やっぱり職務型を入れなければいけない。

こういうような波の変遷があって、今、次の波が来ているということですので、決して今やることが先進的というわけではなくて、世界から見ると少し遅れているような形かなと思います。

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柴田:かつてと若干違うところもありまして。1つは、昔で言うと私とか加藤が、「職務型の人事制度入れたいんです」ってご依頼をたまわると、大体人事の方が多かったんですよね。


ところが今、日本企業でも、こういうジョブ型の人事制度を入れる、導入主体が誰になっているかというと、経営者なんですよ。
社長さんがもう旗を振って、こういう制度に変えるということをやっているっていうのは、昔はありませんでしたね。なので、よってそれだけ本腰を入れてと言いますか、不退転の気持ちで取り組んでいる企業が増えているっていうのは、確実にこれは新しいところかなとは思います。

加藤:おそらく人事の戦略化というのが、ここ数年相当言われていて、人事制度というのも、人事部が管理していくものではなくて、経営のツールであり、これをやること自体が経営課題の1つの解決の道筋なんだというふうに捉えて、今、推進されている企業さんというのが非常に多いのかなと思います。

司会:今、そういったかたちで推進されている企業さんの中で、人事制度の考え方自体がもう戦略的に構築していこうというような、今、方向性なんですか? 

人事制度は経営課題に


加藤:はい。まさにそういう形にどんどん変わりつつあると思います。
人事制度を検討しますよと言ったときに、10年前、20年前は人事部の方々が来て、人事部の方々と検討して最終的に経営陣の合意を得るというようなスタイルが中心だったのですけれども、最近ではもう経営企画部長であったり、いわゆる経営のボードメンバーがリードをする。

そして、その検討も経営メンバーが入ってやっていくというような形にかなりシフトしているかなと思います。

グループ会社への拡散、波及の加速


加藤:グループ会社への拡散も当然あると思います。
どういうこと起きているかというと、大企業の、例えば、本社、本丸をジョブ型にされるということをすると、当然そこから出向されている方とか、あるいはどこにこれから人を送り込んで、どういうようなキャリアパスをやっていくのかということを、同時に検討しなければいけないわけですね。


グループ全体というのは、今度は網の対象になって、ある程度本社とも関連性の高いグループ会社というのはジョブ型という同じプラットフォームというものを構築して、その中で人材異動であったり人事処遇を共通化していこうという流れは、今非常にいろいろな会社で起きているところだと思います。

柴田:今、経営テーマになっているものの1つとして、グループ経営の再編というのは結構多いんですよね。
これは、だから事業のポートフォリオを単体だけではなくて連結全体で見ていって、ポートフォリオの改革をしようという動きなんですけれども。そうすると、正直どこの事業が儲かっていて、どこの事業が儲かってないかっていう全体でグループを見ますよね。


なので、人件費をかけられる会社と、かけられない会社と、って出てくるわけです。人件費をコントロールしようと思うと、同じジョブの目線を入れていかないとそれができないので、グループにジョブ型が波及していくというのは今後も加速するんじゃないかなというふうに思います。

司会:ありがとうございます。ご質問をいただきました。

「ジョブ型人事制度は今後どのような着地点で落ち着くと予想されていますか?」

これからの話になってくるんですけども。

ブームで学んだ失敗

加藤:今までジョブ型って3回ブームがありましたが、結構失敗から学んでいるんですね。
進化をしつつあって、かなり日本企業に馴染む形というのが見えつつある、これがまず第1点です。
ただ、このままジョブ型というのが盛り上がって、すべての企業さんがジョブ型を入れるかというと、やっぱりそうじゃないと思います。

人事制度というのは振り子と同じで、時として成果主義に振っていったり、時としていわゆるエンゲージメントというものに振って。その刺激の繰り返しなんですね。で、今ジョブ型ってコロナの勢いもあって、いったん盛り上がっていますけれども、3、4年くらいのスパンでは、一度鎮静化して、もう少し様子を見ようというような形になろうかと思います。

おそらくこの波があと1回、2回来ると、大体多くの企業が、純粋なジョブ型じゃなくても、仕事にひもづいて処遇が決まる、あるいは、個々人の仕事ってそもそも何なんだということに向き合っていくようなことがかなり当たり前になってくのではないかなというのが私の見立てです。

将来予測は2通り


柴田:私はすごく幸せなシナリオと悲観的なシナリオと両方ありうるかなというふうに思っています。基本的に、人事制度だけを取り立てて議論するってほとんど意味がないので、日本の企業は今後どうやって勝っていくのかというのを見据えて考えていかないといけないです。

基本はグローバル化して本当に世界で名だたる企業って、ジョブ型なんですよね。もう世界の小売りなので、本当に日本の企業がかつてのように世界でプレゼンスを発揮し、世界各地で戦っていくんだというハッピーなシナリオをおくと、みんなジョブ型じゃないといけないわけです。

でも、おそらくそんなことはなくて、どこかでたぶん諦める局面が来るので、諦めた会社というのはたぶんジョブ型を諦めるんです。


要は真のグローバル企業に脱却できた企業だけがたぶんジョブ型をどんどんと推進し、どっかで諦めた企業が縮小均衡になって、今までのいわゆるメンバーシップ型に閉じこもる。これがたぶん悲観的なシナリオです。


現実点としてはその間くらいに落ちるんじゃないかなと。ハッピーシナリオに近くなればなるほど、日本経済って幸福になるよねって、こういうことだと思いますけどね。

司会:なるほど。そのハッピーシナリオに近づくために、今日ご参加いただいている参加者の皆さまの所属している企業の中で、人事制度って検討されている会社さんもいらっしゃると思うんですけども、こういう視点って大事ですよ、というあたり、教えていただけますか?

会社が目指す場所を着眼点に


柴田:人事制度とか人事政策って、それだけ取り上げて考えてもたぶん哲学論争になってしまうので、それ以上に、自分の会社が今後どの方向に事業を展開して伸ばそうとしているのかっていうところを起点にして考えていくべきだと思っています。
なので、日本から出て、本当に海外でも海外の人を雇って、戦っていこうと思ったらジョブ型以外に正解はないわけです

逆にそうじゃなくって、もう日本だけでビジネスが閉じていいというふうになっちゃった瞬間に、ジョブ型にする必要性って極めて落ちてくるわけです。なので、経営が何を考えているのか、会社がどっちの方向にビジネスを伸ばそうとしているのか、あるいは、していないのかと。
ここをぜひ着眼点に置いて考えていただきたいというのが私のメッセージになります。加藤さんどうですか?

うまく使うか使わないかは使い手次第


加藤:ジョブ型人事制度というのはツールでしかないんですね。なので、うまく使うか、使わないかというのは使い手に相当依存してしまいます。

好循環と悪循環って、その人事制度を入れると必ず起こって、悪循環というのは、例えば虚妄の成果主義なんですね。いわゆるノルマ的、あるいはジョブを固めていくことによって人件費を抑えて、皆さんの活気がなくなっていく。

逆にハッピーシナリオは何かというと、むしろジョブを決めていくことによってお互いの目指すべき目標っていうのが増えていく
会社の目指す方向性に対して、個々人がどういうことにコミットするのが大切なのか、ということをきちんと会社とすり合わせをして、それが好循環にのって、どんどん事業が成長したら、今度はポストがいっぱい出てくるわけですよね。そうすると、成長のチャンスがはいってきて、会社全体が元気になっていきます。

ですので、ジョブ型の要素というのがありますけれども、そのどこの部分に期待をして、どこに魂を込めていくのかということをしっかりと経営陣と議論していくというのが最大の成功の秘訣になろうかと思います。

司会:なるほど。やっぱり経営陣との対話の中で何が最適かみたいなところをしっかりと皆さんが考えていく、ということが今回のこの動きが1つのきっかけになるということですよね。

加藤:はい。

司会:ありがとうございます。ジョブ型によってこれからの時代の働き方については、どのようにご覧になっていらっしゃいますか?

→第3回へ続く

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