【JLDSコンサル】 ザ・ホテル東山[前編]
当社はマーケティングコンサルタント会社として、企業のさまざまな相談に乗り、サポートさせていただいております。
ここ最近の事例ですと、東急ホテルズが運営する「ザ・ホテル東山」があります。
〈ザ・ホテル東山 / WEBサイト〉
2022年7月7日、京都・東山にオープンしたホテル。
私たちは、昨年の暮れからオープンまでの期間、コンセプト立案と差別化戦略の立案を担当いたしました。
「いやいや、オープンまで半年しかないのに、コンセプトが無いなんてあり得ない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
……はい、仰る通りです…(笑)
実はすでに「ミュージアムホテル」というコンセプトがありました。
京都の伝統と文化を感じられるホテル。
伝統工芸品や美術品を館内に配置し、目で見て楽しめることはもちろんのこと、茶の湯を学ぶことの出来る「日本茶&Bar」や、和の佇まいを堪能できる貸切風呂など、さまざまな体験を堪能することができます。
それなのに、なぜ新しいコンセプトが必要だったのか?
まずは依頼内容からお話ししたいと思います。
「ハード」では差別化できない時代
もともと、このホテルはインバウンドありきで企画されていました。
それもそのはず、計画段階はコロナ前。
完全に外国人観光客を頼りにしていました。
実はこのホテル、元京都市立白川小学校跡地を利用しており、学び舎の面影が残っています。
写真はもともと校庭だった場所。
ここはザ・ホテル東山の敷地ではないのですが、地域のコミュニティスペースとして活用されています。
こうした特徴は、事前の外国人観光客を対象にした調査でもウケがよく、東急ホテルズの方々もある程度の勝算は持っていました。
しかし…、その後、まさかのコロナです。
外国人観光客は制限されていますし、国内観光客ですら、行動制限はなくても「心理制限」はある状況…。
さらに、ザ・ホテル東山はADR(客室平均単価)の高いホテル。
東山はリッツカールトンなどのラグジュアリーホテルやコンセプトホテルが並び立つ競争の激しいエリアということもあり、オープン年を迎えるにあたって一抹の不安があったのです。
そこで東急ホテルズは、この状況を打破するため、当社に白羽の矢を立てたのです。
とはいえ、オープンまで半年強。
今さら建物全体を大きく変えるわけにはいきません…。
それに、今の時代、ハードで差別化するのは難しい。
そこで、私たちは「ソフト」での差別化を図ることにしたのです。
「深まる旅」の入口に
そこで、まずはザ・ホテル東山の強みを整理しました。
まずは、東急グループのホテルであること。
「ザ・キャピトルホテル 東急」や「セルリアンタワー東急ホテル」など、東急グループとして知的好奇心の高い富裕層はそれなりに囲い込めています。
また、京都東急ホテルを長く営業してきたこと。
総支配人を筆頭に京都の方々で運営していることから、京都のネットワークが非常に充実しているのです。
実際、華道、茶道などの名だたる方々や老舗料亭や神社仏閣と、良きお付き合いがある。
実際、神社仏閣の非公開部分の公開など、東急のホテルを通じて特別な体験ができます。
先程、ホテル内にある「日本茶&Bar」について触れましたが、こちらも辻利とのコラボ。
また、小学校跡地ということもあり、地元住民もザ・ホテル東山(がある土地も含め)親近感を感じている人が多い。
こうした、さまざまな京都の人々をサポーターとして巻き込み、ひと味違う京都の旅を地元と一緒につくり上げることに決めたのです。
ちょうど、ザ・ホテル東山が位置するのは京都・七つ口の1つ、「粟田口」。
そして、学び舎があった場所。
そこで私たちは、楽しみながら学ぶ「楽習(がくしゅう)」をキーワードに掲げ、ザ・ホテル東山を「深まる旅の入口」として位置付けました。
京の極み 東に宿る
こうした考えから、私たちは
京の極み 東に宿る
というホテルのコンセプトワードを設定いたしました。
侘び寂びを生んだ東山の地から、奥深い本物の京都の魅力をお届けする。
そして「東」は「東山」の「東」でもあり、「東急」の「東」でもあります。
その上で、さり気なく「宿る」という言葉を使いホテル感(宿)を醸し出しています。
このコンセプトワードを新たに設定したことで、東急ホテルズ本社チームと、実際に運営するホテルスタッフの目線合わせを行うことができました。
このコンセプトは、館(ハード)にも反映されました。
壁の写真を見ていただけると、陶器の破片が埋め込まれていることが分かると思いますが、これは全て白川でとれたもの。
調度品も含め、悠久の時が紡ぎ出すストーリーがホテルの随所に散りばめられています。
とにかく、まずはホテルの方向性が決まりました。
しかし、コンセプトだけでは差別化できません。
ソフトコンテンツで差をつけるにはどうすれば良いのか?
コンセプトを踏まえて、私たちが出した答えは「ファンマーケティング」を仕掛けることでした。
何度も訪れたい大好きなホテル
それをどのように実現していくのか?
この話の続きは後編でご紹介したいと思います。
ちなみに、こちらがプロジェクトメンバーです。
左手前から、時計回りで、大塚、谷、池(私)、臼井。
それでは、後編もぜひよろしくお願いいたします。
文・池辰彦
ヴァイスプレジデント/小売業協会・生活者委員会コーディネーター/マーケティングコンサルタントとして、ビジョン策定、中長期戦略、顧客調査、販促立案、広告戦略などを行う。また、日本コンディショニング協会(NCA)の最高資格「プロフェッショナル・コンディショニング・トレーナー(PCT)として、体調改善運動の指導も行う。
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