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広告戦略を考えるときに使える「媒体選定カオスマップ」をつくってみました

どの媒体に広告を出すのが一番いい?

ウェブ広告を出すとき、どの媒体に出すのがいちばんいいのか?

「YouTubeよりもTikTokのほうがいいの?」とか、そういう媒体選びの基準って、明確にわからないままやっている人もけっこう多いのかなと思います。

そこで最近、こちらの「媒体選定カオスマップ」を作ってみました。

今回はこのマップを見ながら、ウェブ広告の媒体選びをどのように考えればいいのか? どうすればいちばん成果につながるのか? を話してみたいと思います。

広告出稿を検討されている方や、クライアントの広告運用で困っている方の参考になれば幸いです。

費用対効果をかなり左右する「ターゲティング」

媒体を選ぶとき、大きな論点になりやすいのが「ターゲティング」です。

どのぐらいの精度でターゲティングできるのか。今回はこれをマップの横軸に設定しました。右に行くほど、細かくターゲティングができる媒体になります。

なぜターゲティングが重要かというと、商材に合ったターゲティングができるかどうかで、広告の費用対効果が大きく変わってくるからです。

たとえば「保育士さんの求人広告」を出したい場合。

保育士さんは、そもそも全国に64万人しかいません。1億人のうち64万人なので、日本の人口の0.06%。資格が必要なので、絶対数も限られます。

つまり、かなり細かくターゲティングする必要があるわけです。

「保育士さんって若い人が多そうだし、TikTokがいいのかな〜」ぐらいの解像度で媒体を選んでしまうと、届けたい人にほとんど届かず、広告費が無駄にかさんでしまう可能性が高いです。

だからこの場合は「保育士をしている人」にまでターゲットを絞れる媒体を選ぶ必要があります。検索広告や、meta広告(Instagram、facebook広告)がそれにあたります。

「今まさに困っている人」しか買わない商材

詳細なターゲティングが必要なのは、保育士求人のような「すごくパイが小さい」場合だけではありません。

「検討期間がとても短い」商品もあるので、気をつける必要があります。

たとえば「鍵屋さん」のお客さん候補は、一見するとたくさんいそうです。「家の鍵をなくしたことがある人」なら、みんな人生で1度ぐらいは、なくしたことがあるかもしれない。

しかし「今まさに家の鍵をなくしていて、家に入れない人」には、めったにお目にかかれません。もし「鍵の交換サービス」を売るとしたら、この「今まさに家の鍵をなくしている人」に届かないと成立しないんですよね。

そういう「検討期間がとても短い」商材は、一見お客さんのパイが多く見えても、実はなかなか売れません。

こういった商品の場合も、細かいターゲティングができる検索広告を中心に、広告を出すのがおすすめです。検索なら、今まさに困っていて『鍵 なくした』などのワードで調べている人に、きちんと届けられます。

【検討期間が短い商品の例】
・結婚式
(結婚したい人や、既に結婚している人はたくさんいるが「今まさに結婚式を検討している人」はとても少ない。)
・不用品回収
・はんこ
・害虫駆除

なぜマッチングアプリと脱毛の広告ばかり流れるのか

成果を出すために必要なターゲティングの精度は、商材によってかなり異なります。

最近、20代の方から「自分のスマホには、マッチングアプリと脱毛の広告ばっかり流れてくるんです」という話を聞きました。同じように感じている方は、けっこう多いと思います。

なぜそういう現象が起こるのか?

まず前提として、マッチングアプリや脱毛は利益が出やすく、広告費をかけやすい。そして、ターゲットがかなり広い商品だからです。

マッチングアプリを利用しうる人は、かなり幅広いです。20代であれば、ほぼ全員がターゲットになるでしょう。脱毛も同じで、若い女性ならほとんど全員がお客さん候補です。

そういう商品は、媒体をあまり選びません。それでちゃんと費用対効果が合います。性別と年齢がターゲティングできない媒体はないので、ターゲティング機能がネックにならないのです。

だから、もしもいま広告をやっていないメディアがあるなら「やったほうがいいかもな」という仮説を立てられます。「いまLINE広告が止まってます」みたいなことは結構あるのですが、そういう場合は、少額でテストしてデータを見てみるといいでしょう。理屈上は、取れないはずがないからです。

ターゲットが広く、媒体を絞る必要がない。だから結果的に「マッチングアプリと脱毛の広告ばかり」みたいなことが起こるわけです。

もしも「保育士さんの求人広告」で、マッチングアプリと同じような広告の出し方をしたら、絶対に費用が合いません。商材にあわせて、必要なターゲティングの精度から媒体を選ぶことは、そのぐらい重要なのです。

【ターゲットが広い商材の例】
・英会話スクール
・通信回線
・健康食品

ユーザーの情報量が多いGoogle系メディア

ターゲティング精度が特に高いのは、Google系の媒体です。

Google系の媒体は、検索やYouTubeの閲覧履歴、 コンテンツの閲覧履歴、アンドロイド端末の位置情報など、かなり多くの情報をGoogleが一手に持っています。

広告に使うデータは個人が特定できない粒度のものですし、必ずしもすべてのデータをターゲティングの参考にするわけではありませんが、ターゲティングの精度はとても高いといえます。

交友関係が反映されるmeta広告

metaは、SNS上の交友関係も反映されると推測されます。

そのため、特定のコミュニティに対して広告を届けたい場合にはとても効果的です。

「経営者にだけ広告を出したい」といったことが、比較的やりやすいんです。経営者どうしは、だいたいfacebookで繋がっていることが多いですから。また「株式会社〇〇代表取締役」といった、プロフィールに書いてある情報も、metaに引き渡しています。

Instagramをfacebookと連携している人も多いので、同じようにかなり精度高くターゲティングできます。さらにインスタの場合は、投稿やストーリーズのきれいな出面でリーチできるのが強みです。

metaは機械学習もすごく優秀なので、自動ターゲティング・自動入札が特に効果的だなと感じています。

X広告は「キーワード」でターゲティングできる

Yahoo!のディスプレイやX広告は、ざっくりしたターゲティングで幅広く出向するのも効果的ですが、実は人の手による細かなターゲティングもできます。

たとえば、Xでは「特定のキーワード」や「最近ツイートしたり、プロフィールに書いているフレーズ」でターゲティングできます。

そこで、特定のコミュニティにだけ広告を出せるように、フレーズによるターゲティングを手動でやることがあるのです。

たとえば、飲食店などの小規模ビジネスをしている人に向けた、BtoBのサービスの広告を出すとします。「クラウド会計ソフト」のようなものですね。

その場合「開店 です」をキーワードに入れれば、「店舗の開店を告知する投稿をしたアカウント」を絞り込むことができます。お店の店長やオーナーさんに、効果的に広告を届けることができるのです。

こういったキーワードを見つけるには、ユーザーの深掘りや、マーケティング的な視点がより必要になってくると思います。

動画や画像でも説明したほうがいい商品

検索広告は、基本的にほとんどの商品で使える媒体です。ちょうど困って検索しているお客さんに、ピンポイントで広告を出せますから。

ただ、ものによっては、検索広告だけでは成果を最大化できない商品もあります。

それは「お客さん自身が課題に気づいていない」または「課題の解決策としてその商品を認識していない」場合です。

そういう場合、お客さんは困っていても自分から検索してくれません。こちらからお知らせする必要があるのです。

1から商品のよさを伝えて購入してもらうには、ある程度の情報量が必要です。そのため、動画や画像による広告を出せる媒体を検討してみるといいでしょう。

マップの縦軸は「届けられる情報量」に設定しています。上に行くほど、動画などによって詳細な情報を伝えられる媒体です。

たとえば「スマートカーテン」は、動画で見てもらうことで一気に理解を促せる商品です。

スマートカーテンとは、スマホで時間を設定したら、ウィーンと自動的に開け閉めしてくれるようなカーテンのこと。この商品を売るとき、テキストで「自動で開け閉め、便利なスマートカーテン」と書くだけでは、購入までは至らない人もいるでしょう。

「スマートカーテンが刺さる層」として考えられるのは、たとえば「夜は遮光カーテンじゃないと寝れない。でも、そのせいで朝になっても部屋が真っ暗で、全然起きられない!」といった悩みを抱える人です。

そこに対して届けるのなら「朝寝坊さんにおすすめ! スッキリ朝日で目覚めるスマートカーテン」みたいに、魅力をストーリーで伝える必要があります。

そうなるとやっぱり、ちゃんと説明できる動画や画像が必要です。metaの動画広告などで、カーテンが開く様子などを見てもらわないと、全然伝わらない。metaやXでの投稿、もしくは縦型ショート動画以上の情報量が必要になってきます。

過払い金請求のような「検索しにくい商材」

また「過払い金の請求サービス」も、検索だけでは届ききらないお客さんがいる商品です。

このサービスのお客さんのなかには、まさか自分が過払い金の対象者だなんて、夢にも思っていない人もいます。だから「20xx年ぐらいにこのカードを使っていた方は、お金が戻ってくるかもしれません」といった情報を、しっかりお知らせしないといけない。

こういう場合は、時期やカードの銘柄などの情報をしっかり伝えられる、動画などの媒体でお知らせしていく必要があります。YoutubeやTikTok、metaなどが合っているわけです。

ただし、このような場合でも「検索広告がまったく無意味」というわけではありません。

自分で気づいて「過払い金」で調べる人も普通にいます。メディアなどで商品を見て「スマートカーテン」と調べる人もいるでしょう。

そこを取りこぼさないように、検索広告もあわせて出していくのがいいと思います。

ちなみに縦軸が上に行くほど、つまり情報量が多くなるほど、製作コストは高くなります。コスト面も加味しつつ、どのような予算配分で広告を出すか検討していきましょう。

【動画や画像でしっかり説明したい商材の例】
・NPOや財団など、寄付を呼びかける場合
・助成金の申請サポートサービスなど、あまり知られていない便利なサービス
・スマートロック、服のサブスクといった「新しい選択肢」の提案
・あまり知られていないが有用な資格の取得

【応用編】ロードマップを描き、事業の可能性を最大化する

ここからは少しだけ、上級者向けの話をします。

「商品の特性にあわせて適切なメディアを選ぶこと」は、もちろんとても重要です。

ただ、「このメディアはうちの商材と合わないから、絶対にやらない」と決めてしまうのも、実はもったいないのです。

たとえば「剣道防具」なんてすごくニッチな商品で「検索広告以外は無理なんじゃないか?」と思ってしまいがちです。

でも、もしTikTokで剣道のパフォーマンス動画がものすごくバズったりしたら、 意外とTikTokで防具がめちゃくちゃ売れる……ということも、普通にありえます。そう考えると、1つの基準にとらわれず、やれることは全部やってみたほうがいいんですよね。

とくにウェブ広告は少額から試すことができるので、リスクを抑えて挑戦しやすいです。

目の前の成果を気にしつつも、近視眼的にならず、ロードマップは大きく持つこと。

むずかしいですが、このバランスをうまく保てるようになると、広告を大きく伸ばすことができると思います。

広告の「限界」は、事業の「限界」になる

僕がクライアントの広告を運用するとき、強く意識していることがあります。

それは、広告運用者が決めた「限界」が、事業にとっての「限界」になるということです。

広告の主な役割は、新規の集客です。それはつまり、広告が届く範囲の限界が、ほとんどそのまま「事業が拡大できる範囲の限界」になるということ。

広告の担当者は、事業にとってものすごく重要な変数を握っているんです。

だからこそなるべく機会損失がないように、視野を広くもつことが大切だと思います。

事業と連携しながら、トップラインを押し上げる

ですので、このカオスマップは「優先順位」を持つために活用してほしいのです。費用対効果が合う範囲で、商品を届けられるマックスのラインを目指す。そのためには、最低限の優先順位を持っておく必要があります。

たとえば「ウェブ制作会社」の広告を出す場合なら、最も優先するべきは「いますぐHPリニューアルを考えている人」です。その層には、検索広告メインでアプローチをすることでリーチできるでしょう。

そこに届けられたら、次はもう少しふんわりしたニーズの方も視野に入れてみる。たとえば「無料オンラインセミナー開催します!」といったクリエイティブを作れば、CPAはかなり下がるのですが、届く層は広がります。

また、どこまで広告を広げるか判断するには、事業との連携も不可欠です。

事業側で「ニーズがふんわりした層に対してアプローチしても、ちゃんと収益に変えていける体制」があるかどうか。この場合なら、セミナーに来た人を営業さんがしっかりフォローできる体制になっているかどうかが大切です。

見込み顧客を大量に集めても、その先で購入・継続してもらえるような仕組みがないと、広告だけを広げても効果が薄くなってしまいますから。

事業フェーズとうまく噛み合うように、優先順位を決めながら広告を展開していけば、とても強力な推進力になるでしょう。

「他に考えられる論点はないか?」をつねに意識する

また、このカオスマップだけでカバーしきれない論点も、実はたくさんあります。

たとえば、今回は「ターゲティング精度」と「情報量」でマッピングしていますが、ジムのような「家からの距離」が重要な商材だと「地域設定をどこまで細かくできるか」が重要な指標だったりします。

他にも、
・商品の単価や利益率的に、どのぐらいまでのCPAなら許容できるか?
・会社の財務的に、どこまでの予算を許容できるか?
・広告媒体審査で引っかからないか?
・「商品のブランディング」という観点で、出稿先に懸念がないか?
・複数のメディアを掛け合わせて、シナジーを作れないか?

こういったことも、媒体選定にかかわる重要な論点です。

ですので、ひとつの基準を過信せず商材の特性をしっかり見極めること。そのうえで、工夫の余地がないかつねに考え続けることが、やはりとても大切なのです。

いろいろと細かく話してしまいましたが……ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

これまで媒体選定を「なんとなく」でやっていた方は、ぜひこの機会に、商材に合った戦略を考えてみてください。本記事の内容が、少しでも参考になれば幸いです!


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