【キラキラ】辞書にブックコートフィルムを貼ってみた【ツルテカ】
ごあいさつ
お久しぶりです、カメこです。
日本国語大辞典(日国)第三版の発表を受けた皆さまにおかれましては、ますますご乱心のことと存じます。
今回は、図書館の本によく貼られているツルツルのフィルム、「ブックコートフィルム」を、ちょっとワケありな国語辞典にかけてみたお話です。
※ご紹介する内容はあくまで趣味の範囲です。ちゃんとした本の修理をご希望の方は製本会社にご依頼をお願いします。
ブックコートフィルムについて
ブックコートフィルムは、本の劣化を防ぐために貼るフィルムです。本をキズや水分から守るほか、フィルムによっては紫外線を遮断できるので、本の色落ちも防ぐことができます。ブックコートフィルムを本に貼ることを「ブッカーかけ」と呼びます。
ブックコートフィルムは、文具店や図書館用品を扱っているオンラインショップなどで購入できるので、個人的にブッカーかけをすることもできます。
画像は実際に私がブッカーかけをした辞典の一部。たとえば、外函にブッカーかけをした三省堂国語辞典は、外函の角が裂ける心配が無いうえ、持ち歩く際に本が傷つきません。また、大日本国語辞典は既に背が剥げていたので、これ以上の劣化を防ぐことができました。
このように、本を読み、保管するうえでブッカーかけはメリットだらけです。
今回ブッカーかけをする辞書
さて今回は、『日本大辞典 言泉(落合直文著,芳賀矢一編)』(以下、言泉)にブッカーかけをしていきます。著者落合直文が1898-1899(明治31-32)年にかけて編んだ国語辞典「ことばの泉」に、芳賀矢一が増補改訂を加えて、1921-1929(大正10-昭和4)年にかけて発行されたものです。
この辞書、個人的には入手難度が高めだと感じます。日本図書センターが1981(昭和56)年に発行した復刻版ですら古書店に並ぶのは極めてまれで、並んでいてもたいへん高価(復刻版の全巻揃で安くても3万円強)なのが普通です。
今回は運よく、昭和一ケタ代に発行されたオリジナル版『言泉』を購入できました。しかし・・・
びっくりするほどボロい!
特に本の背。全ての巻がひび割れていて、第三巻(中央)と第五巻(最も右側)に至っては背の上部が一部欠けているか、剥がれ落ちています。
さらに、手に持つだけで本の色が付着するため、すぐに手が緑や茶色に…!そのままでは読むことができません。基本的に本を保護する目的でかけるブックコートフィルムですが、今回は本を読める状態にする目的でかけることになります。
ブッカーかけ開始
フィルムを切る
ブックコートフィルムはラップのようにロール状なので、使いたい長さ・大きさで切ります。
フィルムを切ったあと、普段ならすぐにフィルムを貼っていくのですが、今回は表面が劣化しすぎているので、少し工夫が必要です。第三巻を例に見ていきましょう。
フィルムを貼る前に
最も状態の悪い第三巻の場合、背の表面が一部剥離しているか、背そのものが欠けて失われています。剥離した背の貼りなおしと、欠けた背を補うあて紙が必要です。
剥離した背を貼りなおしてみました。接着には「のりボンド」と呼ばれる、水・でんぷんのり・ボンドを混ぜたものを使用しています。本の補修でよく使われる接着剤です。
続いて、欠けた背を補うためのあて紙を挿入します。下の画像のように、言泉は本を開いたときに背が空洞になるため、ラクにあて紙をさし込むことができました。
あて紙の挿入が終わりました。
なお、あて紙を挿入している間にまた背が剥がれたため、先ほど背を接着した時の写真と若干見た目が違います。
これでようやくフィルムを貼る準備が整いました!
フィルムを貼る
はじめに言泉サイズで切っておいたフィルムをいよいよ貼っていきます。
大きい定規をあてながら、気泡が入らないようにフィルムを貼ります。
上の画像は表紙を貼り終えた状態(大言海で代用)。はみ出た分は内側の見返しへ折りこむことで、本のフチやかども逃さず隅々までカバーします。
言泉に限らず、多くのカバー無しかつ判型の大きな辞書は、表面がザラザラか、でこぼこしています。そのためブッカーかけ中に気泡が抜きやすく、大きさの割に意外と難しく感じません。
この調子で背と裏表紙にもブッカーかけしていきます。
表紙・背・裏表紙すべての面にフィルムを貼り終わりました。なお、ブッカーかけ中に再び背がはがれたため、デザインがいびつになっています。
この後は通常、背の部分からはみ出たフィルムは切り落とします。
しかし、前述のとおり言泉は本を開くと背にすき間ができるため、今回は背からはみ出たフィルムを切り落とさずに背の内側へ折り込みます。なるべく保護する範囲を増やしたいのと、切れ目を隠したほうがフィルムが剥がれにくいためです。
フィルムを折り込みました。正直、この写真ではフィルムを貼ったのかどうかが分かりませんね。
撮影する場所を変えてみました。フィルムを貼ったことで背に光沢が生まれ、あて紙と背が一体化しています。
これからはもう、表面の劣化と手に色が付着する心配をせずに言泉が読めます!
どんどん貼る
同じように、残りの4巻もブッカーかけしていきます。手順は今までと同じなので、特に大変だった第二巻をピックアップしました。
第二巻の背。こちらもボロボロで、今まさに剥がれ落ちている最中でした。この状態ではフィルムの粘着力が落ちるため、内側に折り込むことができません。
そこで…
フィルムに少量ののりボンドを塗ってから折り込み、洗濯ばさみで固定します。他の巻のブッカーかけが終わるまで、このままにしておきましょう。
完成品がこちら。のりボンドでフィルムがしっかり固まっています。あて紙を挿入する隙間が確保できなかったため、フィルムのみで背の失われた部分を補いました。
ブッカーかけ完了! おわりに
5巻すべてのブッカーかけが終わりました!補修しながら進めたのもあり、作業時間は長めの約3時間。
ほぼ一世紀の時を経た言葉の泉は今、往時の輝きを取り戻したと言え…たらいいんですけどね。
あなたの辞書を守り、辞書を読みやすくするブッカーかけ。すべての読書家におすすめです。
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