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書籍紹介 山田悟『「疲れやすさ」と「老化」の正体 糖質疲労』

山田悟さんの著書『「疲れやすさ」と「老化」の正体 糖質疲労』サンマーク出版(2024)は、現代人の慢性的な疲労感や健康問題の原因として糖質疲労に焦点を当てています。私も普段感じている昼食後の眠気が、実は糖質の摂取と密接に関係しているのではないか?と思い手に取りました。私を含む現代人の食習慣がもたらす健康リスクを読みやすく、また、医学的な観点を踏まえながら解き明かしております。また、予防方法も紹介しています。いかにまとめてみます。

1.糖質疲労とは? ー 見過ごされがちな現代の疲労の正体
 著者によると、「糖質疲労」とは、食事後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に下降する「血糖値スパイク」によって引き起こされる一連の不快な症状のことです。著者は、この現象に気づかずに疲れを感じている人が多いことを指摘しています。

 しかし食事の後、しばらくして眠い、だるい。または、十分に食べたはずなのにすぐに小腹が減る、集中力が途切れる、イライラする、首の後ろがずんと重くなる——といった症状があるなら、それは「糖質疲労」の可能性が大きいと思っています。
ランチ後にこうした症状を訴え、午後のパフォーマンスを下げている人が実に多いので、私はこの問題を理解しやすくするために、不快な症状をまとめて「糖質疲労」と名づけました。

出所:本書(P7)

 このような症状が日常的にある場合、血糖値の乱高下を疑うべきだと警鐘を鳴らしています。

2.食後高血糖と血糖値スパイク ― 健康診断で気づかれないリスク
 著者が本書で指摘しているのは、食後の血糖値の変動こそが、慢性的な疲労感や健康の衰えを引き起こす主な要因だという点です。食後高血糖や血糖値スパイクは、健診で空腹時の血糖値が正常であっても、食後に血糖値が急上昇しているケースが多いと指摘されています。これが放置されると、数年後には空腹時の高血糖として糖尿病予備軍や糖尿病を引き起こす可能性が高まります。

 食事をとった後、誰でも血糖値はある程度上がるのですが、 その上がり幅が大きいのが「食後高血糖」 です。
健康診断で血糖異常と判断されるのは「空腹時高血糖」(空腹時血糖値が110m/dl以上)ですが、空腹時血糖値が異常となる100年ほど前から、食後高血糖が生じていることが報告されています。
そして、食後高血糖は、その後、遅れて分泌されるインスリンというホルモンの影響で、急ブレーキのように血糖値が急峻に下がるという現象に続きます。
この血糖値が急激に上がって、その後急峻に降下する様を「血糖値スパイク」と呼びます。「食後高血糖」から血糖値の乱高下(すなわち「血糖値スパイク」)が生じるのです。
ここでご理解いただきたいのは、糖質疲労と名づけた様々な症状は、この「食後高血糖」と「血糖値スパイク」の影響で生じているということです。

出所:本書(P8-9)

 この血糖値スパイクによって、エネルギーが一気に枯渇し、疲労感や眠気が引き起こされるようです。健診で異常がなくても安心できない、この見逃されがちな糖質疲労のリスクに対して、早期対策が重要であると著者は説いています。

3.糖質疲労は将来の病気の前兆
 また、筆者は、糖質疲労を放置することのリスクを強調しています。もし「30代や40代では午後も元気だったのに、年齢を重ねるにつれて昼下がりに眠気が強くなった」と感じるならば、すでに「糖質疲労」の兆候が現れている可能性があります。

 もし「そういえば30代 (40代)のときは午後も元気だったのに、40代(50代)に入ってから昼下がりに眠気が強くなっている」とお感じならば、糖質疲労(食後高血糖)の有無をご確認いただき、そうであるならば、ぜひ、生活上の工夫をしていただきたいです。
食後高血糖から健診でひっかかる空腹時高血糖までは1年と申しました。しかし、もし糖質疲労があるとすると、すでにドミノは上流で倒れ始めています。10年の猶予はないのです。リスクがあるなら、1日も早く手を打つ。その必要性を感じていただけますでしょうか?

出所:P11-12)

 この状態が続くと、10年以内に糖尿病や心臓病、脳卒中などの深刻な病気につながるリスクが高まると警告しています。

「健康診断などで空腹時血糖値が110m以上となると、糖尿病や糖尿病予備軍と判断されます。 しかし、その100年ほど前から、食後高血糖と血糖値スパイクは現れるとされます。本書は、食後高血糖と血糖値スパイクによって起きているであろう症状をまとめて「糖質疲労」と呼んでいるというのは、お伝えしたとおりです。
とはいえ、糖質疲労の感じ方は人によりけりで、眠気やだるさを訴える方もいれば、飢餓感で感じる方もいますし、集中力やパフォーマンスの低下という形で感じる方もいらっしゃいます。
そして、実は、現時点では自覚症状のない糖質疲労の方もいらっしゃいます。」

出所:本書(P91-92)

 放置することで、メタボリックドミノが倒れ始め、健康を取り戻すのが難しくなる前に、早急に対策を取るべきだと促しています。

4. 「ロカボ」で糖質疲労を防ぐシンプルな食事法

 糖質疲労を解消するために、著者が提案するのは「ロカボ(ゆるやかな糖質制限)」という食事法です。この方法は、糖質を完全に断つような食事制限ではなく、日常生活に無理なく取り入れられる食事改善を目指しています。

 だから、私が自信をもってご提案するのは「ロカボ」な食べ方です。 ロカボは理論と科学的根拠に支えられ、10年の継続が可能な実践的な食事法なのです。
「ロカボ」とは、低糖質を意味する「ローカーボハイドレート」という言葉からの造語です。 ゆるやかな糖質制限のみを指し、ゼロをめざすような極端な糖質制限ではありません。そして、糖質疲労を感じることの多い日本人にとっては、これこそが、適正糖質なのです。ロカボのルールは以下です。
ルール① 1日にとる糖質の量は70~130g以内((1食20~40g×3回、+間食で10g)
ルール②お腹がいっぱいになるまで食べる
ルール③カロリーはいっさい気にしない!
ルール④たんぱく質、脂質、食物繊維をしっかりとる
ルール⑤糖質とたんぱく質、脂質のバランスも気にしない!
ルール⑥糖質ぬきをめざしてストイックになるのはNG
ルール⑦早食いをせず、「カーボラスト」でとる

出所:本書(P112-113)

 糖質を制限するだけでなく、満腹感を得ながら健康を保てるのがロカボの特徴と著者は述べています。例えば、食後の血糖値の急上昇を防ぐために、たんぱく質や脂質を先に摂る「カーボラスト」の食べ方をルール⑦として紹介されています。この「カーボラスト」は、食事の最初に糖質を摂らないことで血糖値の乱高下を防ぎ、エネルギーが安定して持続するようにする方法です。

5.さいごに
 以上、本書では、私たちが日常で感じている疲労や体調不良の原因として、糖質の過剰摂取とそれによる血糖値の急激な変動があることを指摘しています。
 最近、特に眠くなるのですが、それを「年齢のせい」や「疲れ」で片付けていた私ですが、「糖質疲労」である可能性もあります。まずは、「ロカボ」について簡単なところから…。
 皆様、健康診断で異常がなくても油断せず、気になりましたら、まずは、本書をお手に取られてみてください。


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