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2025年人事トレンド

2025年の初投稿、そして久しぶりの投稿です。
昨年の年初に2024年トレンド記事を投稿して以来、それほど多くの投稿はありませんでしたが(汗、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

そして今年も年初にトレンド記事をいくつか読んでみました。どれも「なるほど、なるほど」と勉強になる内容ばかりだったのですが、個人的に面白いと感じたトレンド記事をひとつ紹介したいと思います。

今回紹介したいと思った記事は、PwCが実施した2025年の人事トレンドに関する調査結果です。

最初にこの記事を読んだときは「ここは当たっているように思うけど、ここは本当にそうなのかなぁ」と半信半疑だったのですが、最後まで読んでびっくり。

https://www.pwc.ch/en/publications/2017/the-way-we-work-hr-today_pwc-en_2017.pdf

リンクのアドレスをみて頂くとわかるのですが、なんとこの記事、2016年にスイスのグローバル企業を対象に実施した調査をもとに2017年に書かれたものでした。つまりほぼ10年前の予測データということになります。

その観点で2025年の今年に読むと、未来予測の答え合わせ的に面白いと思った次第です。記事では6つの領域にトレンドが整理されています。


トレンド1 - 未来の仕事とデジタル化

デジタル技術の発展により、2016年からの10年間、つまり2025年までに最大で30%の仕事が不要になる一方で、その変化に対応できていると答えた企業はわずか16%との結果でした。

30%の仕事が不要になるということは、この10年でだいたい3人に1人が仕事を失ったということですが、個人的な感覚として「この10年でそんなに多くの人が仕事を失っているのかなぁ」というのが第一印象。

しかし答え合わせ的には、いまをときめくNVDIA CEO Jensen Huangは最近このようにおっしゃっております。

"AIが人類の50%の仕事を奪うと考えるのではなく、100%の人にとって50%の仕事をAIがこなすようになると考えるべきだ"
Instead of thinking about AI as replacing the work of 50% of the people, you should think that AI will do 50% of the work for 100% of the people.

一部の人の仕事がなくなるわけではなく、あらゆる人の仕事に影響がある、そしてそれは30%ではなくむしろ50%ということで、自身の感覚のズレに猛省です。そしてこのトレンドは収まるどころか、2025年以降もますます加速するのかと思うと恐ろしいですね。

トレンド2 - タレントマネジメント

キャリアモデルがますます多様で柔軟になり、回答者の49%が将来は社員が複数の雇用主のもとで働くようになると考えています。そうした前提のもとでHRはキャリア開発を進める必要があることを指摘しています。

グローバルな調査は「グローバルはグローバル、日本には関係ないよ」ということもあったりするのですが、日本でもフリーランス法が2024年11月に施工されました。

わたし自身もコロナ禍以降から"複業"に挑んでいますが、この数年で自分の複業スキルが高まったからということだけでなく、市場や顧客の"複業"に関する理解が進み、複業がしやすい環境になってきていると感じています。

このトレンド記事はコロナ禍前に書かれたものですが、コロナ禍以降の世界的な複業化のトレンドを見事に予測しているといえます。人事制度や人材育成においては、複業前提の設計と運用がますます重要になっていくのでしょう。

トレンド3 - 報酬と福利厚生

在宅勤務や柔軟に選択できる労働時間など、非金銭的な報酬の重要性が予測されるとともに、個人成果から全社業績への評価指標のシフトが予測されていました。

こちらについてもコロナ禍前の調査にも関わらず、見事にコロナ禍後の動向を示しています。後知恵的に振り返るとコロナ禍が世の中を変えたのではなく、すでにあった変化を加速させたに過ぎないといえるのでしょう。

同時に、すべての企業にとって柔軟な働き方がベストの世の中になった、ということでもありません。たとえば、先進的なテクノロジー企業と見られているアマゾンのような会社でも、2025年から出社義務化の動きが見られます。

在宅勤務と出社勤務、どちらの方が生産性が高まるかという観点でいろいろと議論されていますが、結局のところ「会社による」という結論に落ち着いているような気がしますし、次のパンデミックがまたどこかの時点で起きるでしょうから、これから先も「これがあらゆる状況でベスト」という回答はでてこないんじゃないですかね。

トレンド4 - モビリティ

グローバルモビリティーは大企業ほど更に加速されると予測されていましたが、果たしてこれは答え合わせ的にはどうなんでしょうか。

たとえばCOL/QOLなど駐在員の報酬決定に関する指標を世界的に提供しているマーサーの2024年調査によると、育成や定着を目的として、グローバルモビリティーは強化される傾向にあるそうです。

https://mobilityexchange.mercer.com/insights/article/2024-talent-mobility-trends

またKPMGの2024年調査によれば、3-12か月の短期駐在、または長期出張が顕著に増えていることがわかっています。

https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmgsites/xx/pdf/2024/10/global-mobility-benchmarking-survey-2024.pdf

個人的な感覚としては、コロナ禍以降のグローバルモビリティーは低下傾向にあると勝手に思っていましたが、育成や定着を強化する手段としてグローバルモビリティーを活用することの重要性は高まっているようです。

トレンド5 - HR組織

81%の回答者が、人事オペレーションのアウトソース化/オフショア化が進み、CoE (Center of Excellence)として高い専門性が求められる役割へシフトすると予測しています。

HR組織は現在どのような状況にあるのでしょうか。

AIをはじめとするデジタル技術を駆使したHRテックの重要性は盛んに叫ばれてはいます。いくつかの日本企業でも、グループ・グローバルのタレントマネジメントのベースをかつてない規模とペースで構築しています。

たとえば有名なところでは三井化学様の事例。

しかし、日本企業ではCoE機能の先鋭化よりもHRBP機能の拡充のほうが議論になっている印象です。

その背景として、コロナ禍前後ほどの勢いはないものの、職務を中心に人材マネジメントを行う「ジョブ型」へと移行するために、組織・事業・機能ごとに戦略と人事の統合が依然として求められていることが挙げられるでしょう。

またグローバルにおいてコロナ禍以降に議論されているのは、CoE機能の先鋭化というよりは、そもそものCoE/Operation/HRBPという、通称ウルリッチモデルの有効性ではないでしょうか。

先進的な日本企業もいたずらにHRBP体制/ウルリッチモデルの確立を目指しているというよりは、自社にあったHR体制を引き続き模索しているという印象です。

自社に最適なHR組織をどうするかは、引き続き重要なトレンドとなりそうです。

トレンド6 - 文化と変革

魅力的な企業文化を構築することが、社員エンゲージメントと定着の観点から重要になるとの予測でした。とくにアジリティーを発揮し、変化を柔軟にすばやく受け入れる組織であることが差別化要因として大切と指摘しています。

これはまったくもう、その通りでしょう。GAFAMなど、卓越した企業では企業文化を差別化要素として重要視しています。

たとえば有名なところではマイクロソフト様の事例。

企業価値を高めることが期待されている経営人材の役割は大きく分けると2つ、変革を実現することと、成果を出すことにあるといえます。日本企業では経営人材の強化、特に文化を効果的に活用し変革を実現する力の強化がこれからも重要なテーマとなりそうです。

まとめ

当初は2025年の最新記事として読んでいたPwCの2025年人事トレンド調査、じつは10年前のデータだったことに後から気づいたわけですが、結果的には見事な未来予測にアッパレというのが読後の印象です。

そして、本調査はグローバル観点で実施されているわけですが、「日本企業の人事は特別」ということはなく、グローバルでの経済・社会・文化における大きな潮流から影響を受けて変化していることが改めて実感できました。

個人的にはデジタルやモビリティーに関する感度が、グローバルの潮流からかなりずれてしまっていたと反省した次第。年一回とはいわず、こうしてトレンド記事を読んで自分のアンテナを補正する機会をもうすこし頻繁にもったほうがよさそうです。





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