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わが家の庭先の小さな空間でくりひろげられる生き物たちの攻防


はじめに

 昨年は季節が2,3週間前倒しで進んでいるかのようだった。動物たちの活動が例年になく活発だった。

昨今の状況下、リモートワーク中心で家にいることが多い。しごとのあいまに庭先をながめつつ家のなかから気づいた生きものたちのあるできごとを伝えたい。


東側の風通しのよい場所

 自宅のある場所は中山間地のせまい谷の入り口にある田んぼだった。谷あいで南に台地のすそが迫り、陽が早々にかたむく。そういった土地なので家をおもいっきり北西側に配置し、南の縁側になるべく陽が入る向きとした。

これは功奏し冬になると南の縁側のぬくもりが恋しくなるほど。そこで昼ごはんを食べたり本を読んだりする機会が多くなる。

木造なので東寄りには窓をなるべくとり、昼間の海から、夕方には山からの風が通りぬけるように乾燥をうながした。しかも家のなかで行き来しやすく部屋を配置した。

ほぼねらいどおりどこにいても風を感じる。そして各々の窓から外のようすを見渡しやすい。それでわかったことを紹介する。


この窓の外で

 開口部を極力減らし断熱効果を高めた家とはちがう、むしろ昔からのつくりに近いだろう。徒然草の一節にあるように夏をむねとしたつくり。夏の夜に涼しい風が入るように出窓の下に格子をいれた風通し窓を設けた。

その結果、午前中は東側の風通し窓から海風が通りぬけ、夕方には西側の同様の窓から山風が谷あいの小川を下りつつ、家のなかを風がわたる。

そのなかでしごとをすすめる。

したがって居間としてつかう東の部屋は家のなかでは1等地。休日には縁側とともにたいてい日中過ごす場所に決めている。

さて、午前中に活躍する東側の風通しのよい窓辺で、夜な夜なおこるできごとを紹介したい。


夜の窓のそと


 この窓際、夜になるとテレビやPCなどを置いていて、昼間につづいて過ごす場所になりやすい。

つまり電灯がいつも灯っている。ほかは電灯を消しているので、わが家は外から見るとこの東かどの部屋にポツンと灯がともる。

すると虫たちが明かりに集まってくる。夏は窓の外側がにぎやかだ。小さな蛾などが多い。

そこに毎晩のように登場するのがヤモリ。家のなかから見ると下の写真のようにぺたんときゅうばんの前足、後ろ足でガラス窓にはりついて腹をみせてじっとしている。

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なかにはメスだろう。ガラス越しの明かりを通じてレントゲンのようにからだが透けて卵を持っているようすがみてとれる。おなかあたりがいびつに横に膨れている。


さまざまな生きものたち


 じっとガラスに貼りついている理由は飛び交う虫たち。とくにマダラメイガのなかまやカゲロウ、カなどが多い。たまにカナブンやカブトムシなどがまじっている。

もうおわかりのとおり、ヤモリは光に誘われて集まる虫をねらっている。獲物になりやすいのがマダラメイガ。ここへくると毎晩あかるいので、虫たちがあたりまえのように集まる。

ヤモリは獲物が得やすく腹を満たせる。そのためほぼおなじ時刻にやってきてぺたっとはりついたまま待ちの姿勢でいる。

ところが獲物をとらえる瞬間はとてもすばやい。目にもとまらずパクリと飛びかかる。かなりの成功しているようだ。この明るい窓際にいると効率よく夕飯にありつける。


たまに来る生き物


 さらに今月に入って新たな生き物がそこに加わった。まだ撮影はできていないが、昼間もふくめて見かける。それはどうやらイタチ。

スリムなからだに長いしっぽ。じつに細長い。昼間は玄関のひさしの裏に巣づくりしたツバメのひなをねらっているようだ。そして夜にはこの窓際に来るようになったらしい。「らしい」とつくのはまだ確証がないから。

しっぽはまさにこの動物と同様、そしてながほそい体。夜間なので色合いなどがわかりにくいがよくみるアナグマとは異なり、おそらくイタチ。


イタチのねらいは

 なぜイタチがくるようになったか合点がいった。イタチは雑食性。わが家の庭でもえさにありつけそう。

このあいだ庭で見かけたごく小さな野ネズミ。アオダイショウやシマヘビは年に数回ほど登場する。バッタやコオロギ、キリギリス、そしてヤモリ。

窓に集まるヤモリはめだっていてイタチの獲物になりそう。昨夜はそれらしいすがたを家のなかからこの窓の下で家族が見つけた。これはまさに小さな食物連鎖の現場ではないか。

つまりこの窓の外だけでマダラメイガなど➡ヤモリ➡イタチという食物連鎖が成り立ちそう。たった1平方メートルに満たない範囲での夜のできごと。人知れずその攻防が日々おこるようだ。


おわりに


 なにもテレビで目にするようなアフリカのサバナやオーストラリアのグレートバリアリーフでなくても、派手さはまるでないが何気ないこうした場所でも生きものたちは暮らしている。

はやり病で家にいる機会が増え、いままで長く暮らしていたはずなのに新たな発見に事欠かない。イノシシの子にも出会えた(タイトル写真)。

ごく身近な範囲でこうした攻防が日常的にくりひろげられているはず。幾千年と陽がのぼりそしてしずむなかで、くりかえしおこなわれてきたできごとのひとつ。

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