足取り重い五歩(政府による対外援助)
関所の東側も梅雨入りしたかと思いきや、もう梅雨明けが見えてきた今日この頃。
早くカラッとした夏晴れが到来することを願うばかりです。
(今年はエルニーニョとなり、関西などは冷夏だという話です。雨関連の災害などにも警戒が必要とのことで、嫌じゃ嫌じゃという感じですね。)
さて、今回は予告通り、政府による対外援助についてサクッとまとめていきます。
「日本、ウクライナに無償資金協力224億円 JICA過去最大」
今年の3月の産経新聞の見出しです。
日本国政府はこのように外国に対して支援を行っています。
近年、いわゆるODA(Official Development Assistance)という政府による対外援助が加速しており、ODAの積極的な実施はこれからも我が国の外交戦略の柱として位置付けられていくでしょう。
理由は様々です。
日本が大国であるというのが大前提ではあるのですが、
困っているから人(国)として当然の如く助ける、見返りを期待して支援する、競争相手に負けないように支援する、etc….
色んな理由、方法で政府は外国を援助しているのです。
一方で、
「国民生活が大変なのに、外国にばっか何百億も渡しやがって!!!」
「ばらまき外交だ!!」
対外援助に必ずと言って良いほど付いて回る批判的な言葉の代表ですね。
まぁ、気持ちは分からないでもないんですけどね…。
日々の生活はイージーモードじゃないですから…。
ですが、こうした日本国政府による対外援助は「必要」であるし、ニュースの見出しになっている金額にも「数字のマジック」が潜んでいます。
まずは数字のマジックから解き明かしていきましょう。
誤解を恐れずに言えば、
政府のよる援助の金額は、「複数年度での合計金額(有償も含む)」だったり、「現金ではなく物資による支援」だったり、「民間からの投資などを含むもの」だったりします。
全部が全部、国民の血税をポンっっと渡しているわけではありません。
なんなら、ほとんどが有償(相手から利息込みで返済あり)だったりもします。
大前提、ここは紙でも脳内にでもメモしてください。
次に、なぜ日本による対外援助が必要なのか?についてです。
これもいくつか理由はあるのですが、
第一義は途上国に日本の存在を認識させることでしょう。
こうした日本の動きの背景には中国の存在が大きく関係しています。
過去に鎖国をしていた島国なだけあり、ハッキリ言って我が国はまだまだ外交に弱いです。(勿論、よくやってる方だとは思います。)
これと比べ、中国は実にしたたかに外交を展開していっています。
今でこそG7は対中で一致していますが、2年ほど前はドイツやフランスは親中で、イタリアなんて蜜月でした。
途上国で見るともっと悲惨。
我が国を含めた西側の援助が手薄だったアフリカや太平洋島嶼国へと分け入り、気前よく援助(融資)をバラ撒いていたのです。
みんなが気がついた時には既に各国は親中国に仕上がっていた。
日本なんて付け入る隙がない。
(厳密にいうと、日本は昔からアフリカへのODAをしていましたが、中国の物量に負けた形です)
ここまで話してきたところで、
アフリカとか太平洋の小さな島国なんて別にどうでも良くね…??
そう思った人へ。
失礼を承知で申し上げますが、
この時代の国際政治がまるで分かってません。
我が国が普通の国家として存在する限り、この地球上にどうでも良い国なんて1つもないんです。
国連で何かを決議するとき、彼らも我々と同じ1票です。
アフリカ大陸にある国々は全部で50を超えます。
露骨な話で恐縮ですが、これは貴重な票田です。
それにアフリカは日本にとって欠かせない鉱物資源などの産出国、輸出国です。
島嶼国で言えば、大きな太平洋で必要とあらば港を提供してくれる、一緒に海の安全を守ってくれる(露骨に言えば、仲間になれば日本の負担を減らしてくれる)大切な国々です。
こうした国々に中国の息がかかるとどうなるか?
本当にけしからん話ですが、中国の対外援助は裏があります。
例を挙げると、援助を受けた国の支払いが滞った場合に、援助を受けて作られた港などの運営権(ほぼ所有権と同義)が中国へ移るといった仕組みなんです。
俗に言う、債務の罠というやつですね。
立ち上がったばかりの途上国は様々な経験が浅く、返済能力などをあまり深くシミュレーションできないために多くの国が債務の罠に陥っているのです。
仮に港が中国の手に渡るとどんな影響があるのか?
ここでは簡単な説明に留めますが、
我が国や西側諸国にとって不利な場所(インド洋や太平洋、ペルシャ湾や地中海)に中国海軍が排他的に利用できる拠点を形成されてしまう懸念があります。
港の権利云々という話以外にも、
1国のお金に依存して経済的な隷属関係が出来上がってしまうと、政治的にもその国の言いなりになってしまうという根本的な問題があります。
特に、アフリカ諸国での中国マネーがこの例です。
アフリカは地球上で最後のフロンティアと言われており、ここの発展過程に食い込めた中国は莫大な利益を上げるでしょう。
アフリカ諸国からすると、巨額の援助金によってインフラなどが整備でき、その当時はウハウハ。
ですが、いつしか中国マネーに依存する経済構造が構築され、有償援助を受けていた場合には債務の罠に嵌ってしまいます。(空港や港など戦略的なインフラが合法的に中国へと権限移譲される)
非常にざっくりとした説明で恐縮でしたが、中国の対外援助を放置しておくと誰の為にもなりません。
我が国(西側)のクリーンで誠実な援助を受け入れた方がwin-winです。
政府の援助を推進した方が良い理由の2つ目としては、民間企業の利益につながるという点でしょう。
政府援助の中身は相手政府だけに向けたものではありません。
我が国の民間企業を巻き込んだものもあります。
大きな意味での援助、支援の中には「投資」という形をとるものもあります。
(政府内の文書では厳密に表現されており、援助や支援に投資は含まれません。恐らくは投資分と支援分とで別枠になっているかと思います。ここでは報道などで一括りにされてしまっている場合を想定しています)
この場合は民間企業のお金も動員するので、その分の政府支出はゼロです。
よく首相の外遊に経団連の会長ら財界の人たちが同行するのはこの為ですね。
政府主導で足場を作るので、実務は民間で頑張ってくれと。
仮に、政府による無償・有償資金援助だったとしても、そのインフラ修繕や導入を我が国の民間企業が担うといったケースもあります。
この場合でも民間企業は現地での足がかりを手に入れることになり、今後も継続的にメンテナンスといった事業で利益を得ることが可能になります。
以上見てきたように、政府によるODAも完全な慈善事業というわけではないということが分かります。
日本(西側)式で、相手国に不都合な条件を課さずに長いスパンで成長に寄り添っていく。
もちろん、1つの独立国として、きちんと返済することを皮切りに、国際政治のルールも覚えていってもらう。
我が国としても、彼らの経済成長に寄り添いながら、しっかりと日本の存在を認識してもらい、国際政治の舞台で同志国として多数派を形成する。
このようにして、日本は国際政治の場で立ち回っています。
間違いなく、ODAは我が国の強力な外交戦略なのです。
雑駁でしたが、政府による対外支援について少しでもご理解いただけたのなら嬉しい限りです。(対外援助の具体的な流れについてなど、いつか本テーマの派生を別記事でもう1本投稿しようかなと考えています!)
とりあえず、次回は衆議院の解散権について取り上げたいと思います。