【洋楽雑考#18】"New Wave" という大波〜Blondie
皆元気? 洋楽聴いてる?
Queen の映画の大ヒットを受けたワケでもないのだろうが、今度はThe Beatles が「Let It Be」アルバムをレコーディングした際、TV放映用に録画された素材を使ったドキュメント作品が作られるらしい。
監督は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン。スタジオ内でのバンドの作業を追いかけた素材がほとんどらしいが、まさかのSFX多用ファンタジーだったりして...どんな作品になるんだろうか。
さて、今回のお題はNYのミュージック・シーンをしなやかに駆け抜けたBlondie 。バンドの顔であるデボラ・ハリーも、もう73歳!!とは言え、あの妖艶さは健在だ。元々はフロリダ生まれで誕生時の名前はAngela Tremble 。生後3ヶ月で養子に出された。
Harryという苗字はその里親のもの。1973年にThe Stilletoesにシンガーの1人として参加、その後バンドに加わったギター・プレイヤーが、「運命の人」とも言えるクリス・シュタイン。
2人は交際を始め、同時にBlondieを結成。当時バンドが出演していたNYのクラブの代表がCBGB。同時期にRamonesやTelevision、Talking Headsらを輩出したことでも有名な同クラブ。
"パンク専用"みたいなその後のイメージとは裏腹に、NYという街の"多様性"をしっかりと受け止めていたことがよく分かる(2006年にクローズした際のイヴェントにはハリー/シュタインも出演している)。
デビュー・アルバム「Blondie」発表は1976年(邦題「妖女ブロンディ」はさすがにいかんと思う...)。インディのPrivate Stockからのリリースだったのだが、残念な結果に。
失望したバンドは同レーベルからアルバムの権利を買い戻し、翌年イギリスのChrysalisと契約、再リリースを図る。
彼女たちの最初の成功はアメリカでも、イギリスでもなくオーストラリアでのものだった。
"Countdown"というTV番組で、シングル「X-Offender」のB面曲「In the Flesh」のビデオが"誤って"OAされたのだが、同楽曲が逆に話題に。最終的に「In the Flesh 」はシングル・チャート2位を記録、アルバム・チャートでもTop 20 に。
"実は番組スタッフがわざと間違えて放映した"というウワサも囁かれているのだが、いずれにせよバンドの成功に寄与したことには間違いない。
1978年、セカンド「Plastic Letters」のリリースから間髪入れずバンドはサード・アルバム「Parallel Lines」を発表。同作品からのシングル「Heart of Glass」で世界的成功を記録する。
実はバンド結成後、間も無くその原型は出来ており「Once I Had a Love」というタイトルが付いていた。
その後のディスコ・ムーヴメントを予見してか、バンド内部では「The Disco Song」という呼び名もあったという。
全米セールス200万枚、米英で1位を記録した同楽曲は、その後数多くのアーティストがカヴァー。1979年のプラチナ(100万枚)作品「Eat to the Beat」を経て、彼女たちのキャリアがピークを迎えるのが翌80年。
映画「American Gigolo」(監督は「Taxi Driver」の脚本を手がけたポール・シュレイダー!)の挿入歌に選ばれた「Call Me」が全米1位を記録(2月/作曲、プロデュースはディスコの神様ジョルジオ・モロダー!)。
アルバム「Autoamerican」からの先行シングル、「The Tide is High」(1966年にThe Paragonsというジャマイカのグループがリリースした楽曲のカヴァー)、その後の「The Rapture」も1位を獲得する(アルバムは7位まで上昇)。
しかし、休養後の1982年にリリースされた「The Hunter」は商業的に失敗。同時期にシュタインが免疫性の非常に稀な皮膚病に罹患、ハリーもその看病に専念するためバンドは一時解散を余儀なくされる。
1997年に奇跡的に再結成。99年には「No Exit」アルバムをリリース、同作からのシングル「Maria」は全英1位を記録することに。
その後も、2017年の最新アルバム「Pollinator」に至るまで、合計4枚のアルバムをリリース、その健在ぶりを発揮している。
シュタインが写真家としての顔も持っている事、また、ハリーのアンディ・ウォーホールとの親交、そして女優としての活躍など、彼女たちが持つアートへの深い造詣、言い換えれば"芸術的多様性"こそBlondieというバンドの核なのかも知れない。そこにNYという都市が大きな影響を与えたのも間違いない。
ポップに聞こえるが、実はヒリッとしたものを内に秘めている...それがオレがこのバンドを好きな理由なんだな。
では、また次回に!
※本コラムは、2019年2月22日の記事を転載しております。
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