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「アルジャーノンに花束を」を読んで

アメリカの作家ダニエルキイスさんのSF小説

SFといってもスターウォーズやバック・トゥ・ザ・フューチャーのような話ではありません。

“もしも、人工的に人間の知能を上げることができたら、どのようなことが起こるか”を描いたSF作品です。

あらすじ

知的障害を持つ主人公のチャーリイ・ゴードンは、手術によって人工的に人間の知能を上げていく研究の人間の被験者第一号を打診される。
チャーリイはネズミの被験者であるアルジャーノンに知能テストで負け、アルジャーノンに憧れ被験者となる。

手術によって、みるみる知能を上げていくチャーリイ。自分を被験者として選んだ学者よりも高い知能を得たチャーリイが見たもの感じたものとは。

作品への思い

今回僕が読んだ文庫本のためにキイスが書いた「日本語文庫版への序文」にはキイスの作品への思い、作品の主人公のチャーリイが何を伝えてくれるのかが記されています。

知識の探求にくわえて、われわれは家庭でも学校でも、共感する心というものを教えるべきだと。われわれの子供たちに、他人の目で見、感じる心を育むように教え、他人を思いやるように導いてやるべきだと。自分たちの家族や友人ばかりではなく――それだったらしごく容易だ――異なる国々の、さまざまな種族の、宗教の、異なる知能レベルの、あらゆる老若男女の立場に自分をおいて見ること。こうしたことを自分たちの子供たち、そして自分自身に教えることが、虐待行為、罪悪感、恥じる心、憎しみ、暴力を減らし、すべてのひとびとにとって、もっと住みよい世界を築く一助となるのだと思う。
(位置NO.72/5101 日本語文庫版への序文より引用)

相手との違いを理解しようして、相手の立場や価値観で物事を捉えることは、とても大切なことだと思います。とは言っても、人との違いってめちゃくちゃ多いし、難しい。

この小説の読者は「知能レベル」の違いに注目し、理解しようとすることになります。テーマは知能なんですが、他の分野の違いについて考えたり、知ろうとするきっかけになる小説です。

けえかほうこく、経過報告

この小説は、最初から最後までチャーリイ自身が被験者として書いた経過報告として進みます。

実験の成果の記録を残すために、チャーリイはやったことや思ったことを書き記すことになっていて、それを読者は読みます。

この手法のすごいところは、経過報告が進むにつれて、内容だけで無く、誤字脱字や漢字の有無などでチャーリイの知能の変化を表現していることです。

元は英語ですし、翻訳も大変だったんだろうな。

チャーリイの気づき

知能は人間に与えられた最高の資質のひとつですよ。しかし知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりにも多いんです。これはごく最近ぼくがひとりで発見したんですがね。これをひとつの仮説として示しましょう。すなわち、愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこすものである。つまりですねえ、自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ。(位置NO.3997/5101より引用)

これはチャーリイ自身の気づきです。

知的障害者だったチャーリイが知能を得て、この気づきを得る過程を読んでいくことで、読者の我々もさまざまな気づきを得ることができると思います。

自分はどのようにチャーリイと接するだろうかと考えさせられる

この本を読むと、仮に自分の周りにチャーリイのような人がいたらどう接するかを考えてしまいます。

今までの自分は知的障害について知ろうとすることもなく、漠然と逃げてしまっていたので、考えるのはとても難しかった。少し嫌になってしまう。

自分と違うものを受け入れようとしてきたつもりになっていたけど、実は受け入れようとする前にフィルターがかかっいて、遠ざけている事柄があることについて考えました

そのフィルターを完全に取り外すことはできないと思うけど、フィルターの精度を見直すことはできるような気がします。

また読むことになる一冊

「アルジャーノンに花束を」は感動の作品だと聞いていました。

でも読んだ後、自分の今までの人に対する態度はどうだったのか、これからはどうしていけば良いのか、そもそもそれが実現できるほど自分は真っ当な人間なのか、などなどいろいろ思うことがあり、全くまとまらず、モヤっと感が残ってしまった。

たぶんその時々によって違う感じ方ができるような一冊なので、また読みたいと思います。

(余談)
もっとたくさん思うところがあったんですがどうしてもうまくまとまらない上に、なんかカッコつけた文章になってしまって恥ずかしい。もう少し大人になったらもう一度書きます。
この感想書いてる間に2冊本が読み終わって感想文渋滞してしまっているのでご勘弁を笑

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