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哲学に関するメモ(4) 【現在の哲学】

本メモは哲学の基礎的な内容に関するメモです。


1. 脳と自由意志 36項目

…自由意志はないのか?決定論は正しいのか?道徳は生まれつき備わっているのか?

1-1. タブララサ、脳への理解も白紙説が優位に立っていた
→認知神経科学が覆す、脳はいろいろな機能を持つ集合体である
→自由意志は否定されようとしている、コギトの主体、「私」とは自分という器を操るものでない、自分という器が自動で動いてから左脳が解釈し行動の理由を後付けする
→スマホの画面を見ているのは「あなた」が決断したのではない、
スマホを見たという事実を左脳が解釈し「意図してスマホを見た」という感覚があるだけ
→自由意志がないと仮定すると決定論が支持される、この世の出来事は予め全て決められている
→人間が犯す罪を裁く意味はあるのか?個人の責任はあるのか?考えても意味がないのか?


カール・スペンサー・ラシュレー

1-2. 脳白紙説
…脳のネットワークは生まれた時は白紙の状態、後天的な環境・経験によって作られる


❶等脳性の原理
…脳に専門的な機能は存在しない、全ての部分が同じ機能を果たす

❷量作用の原理
…脳の作用は部位ではなく量が重要

→脳は人間の心理と関係ないのでは?


イワン・パブロフ

1-3. 行動主義
…人間の心を認めなくても行動を研究できる、外から観察できない心は単独で存在しない


ポールワイス

1-4. イモリに足を移植、神経が分布し他の足と協調して動く
→神経細胞は発達の方向性が決まっているわけではなくどんな形態にも柔軟に対応して適応


1-5. ひよこを完全に粉砕して液体にすると何が失われたか?構造か?命か?
…何かが失われているにもかかわらず物質的には何も失われていないことになる


ドナルド・ヘッブ

1-6. 固定配線説
…脳のネットワークは環境・経験で作られるのではなく生まれつきのプログラムで決まっている
→脳は人間の心理と切り離せないのでは?行動は脳に引き起こされる


1-7. ニューロンの発火は全てが偶然というわけではない
…ニューロン A が発火するとニューロン B が影響を受けて発火する、関係があるのでは?
→その関係を継続することでニューロン代謝・成長プロセスが変化し繋がりが良くなる、学習
→単に脳が生まれつきのプログラムのもとで決められた動きを繰り返すだけというわけではない
→生まれつきのネットワークの上で学習という影響を受ける


ロジャー・スペリー

…運動神経の可塑性がない例を示す

1-8. 運動神経の可塑性
…運動神経が自由に形を変えることができる性質、イモリの足の協調


1-9. ラットの右足の皮膚を左足へ
→伸筋と屈筋の神経を入れ替える、動きは逆転し戻らない、運動神経に可塑性はない
→右足の神経を左足に移植する、右足を刺激すると左足に反応、感覚神経に可塑性はない
→両生類・魚類でしか神経の再生は行われない、構造が複雑な哺乳類は神経に専門性がある
→人間の脳も可塑性がないのでは?脳はニューロン(神経細胞)の成長プロセスの成果


ピーター・マーラー

…生まれが全てなのか?学習の影響をどのように受けるのか?

1-10. ミヤマシトド
…生後 30〜100 日でさえずりを学習、方言がある
→脳の学習プロセスがあるのでは?方言をコントロールできるのか?
→脳は後天的な学習の影響を受けるが学習の方向性には制限がある
→脳白紙説への疑問


ニールス・イェルネ

1-11. 抗原
…ウイルス・細菌、免疫応答を引き起こす


1-12. 抗体
…抗原に対抗する、抗原が体内に侵入した際に体内で作られる


1-13. 従来、抗原が現れるとその情報をもとに抗体が作られる
→イェルネ、抗体は生まれつき備わっている、抗原が現れると元々ある抗体が選択される
→免疫系だけでなく神経系でも同様の選択プロセスが行われているのではないか?
→学習とは目の前の問題に対して生まれつき持っている能力を振り分ける選択プロセス
→人間は生まれつき脳のネットワークを持っているが後天的な環境・経験で再構築される
→生まれも、育ちも大事


1-14. プラトンやカント
…生まれつき備わったアプリオリな認識方法・道徳法則がある、イデア
→哲学は人間の脳・意識の先天性に理性・論理でたどり着いていた、技術・実験に先回り
→人間は生後3ヶ月で物理現象を理解、コップが浮けば驚く、育った環境は関係ない
人間には物理現象を判断する脳のネットワークが生まれつき備わっている
→人間の脳はどうやって先天性を獲得したのか?


レオン・フェスティンガー

1-15. アウストラロピテクス・アファレンシス
…完全二足歩行にもかかわらず脳が極端に小さい
→二足歩行が先、脳の発達は後、二足歩行により運動・出産能力の低下、淘汰の可能性
→集団生活を始めることで克服し脳の進化に影響、発明と模倣、安定した食料摂取と脳の肥大化
→脳が大きい個体が生存と世代交代を繰り返して人間の脳は大きくなったのでは?
→脳は大きければいいものなのか?


1-16. 認知的不協和
…事実と認識に相違があると事実は変えられないので認知を変える
→社会が行動を引き起こし行動を正当化するために意識や感情を適応させるのが人間


ラルフ・ホロウェイ

1-17. 霊長類(チンパンジーなど)の上位互換と捉えられていた人間の脳は実は別物である可能性
… iPhone7とiPhone12ではない、ガラケーとiPhone12、大きさ以外に決定的な違いがある
→進化の過程で大幅な再構築、そこで意識を獲得したのかもしれない、1%の遺伝情報
→人間特有の脳の構造とは何か?


1-18. 860億個のニューロン、690個が運動を制御する小脳、170億個が思考や文化に関する皮質、前頭葉はニューロンの分岐が著しく接続が良い
→脳の性能は大きさ・ニューロン数ではなくニューロン同士のネットワークで決まる
→ある程度のまとまりを作ってまとまり同士で交流させるという再構築、左脳と右脳、無数のモジュールが統合システムを用いずに情報を自動並列処理して情報を流通させる
自動処理のノイズを感じない、感じる統一感は私
→「私」という意識は感じるが科学では「私」という統合システムを認めない
→「私」を生み出す仕組みは何か?


マイケル・ガザニガ

…左脳と右脳

1-19. 絵を分離脳患者の左視野だけに見せる
…右脳が絵を見ている状態、右脳の領域
→何が見えますかと聞いて答えてもらう、左脳の領域
→何も見えない、見たものがわからないのではなく見た行為を認識していない
→見た情報は左脳に伝達されていない
→左脳と右脳にそれぞれ専門的な機能があるのでは?


1-20. 絵を分離脳患者の左視野だけに見せる+左手にスイッチを持たせる
→言葉では何も見えない、左手はスイッチを押していた
→左脳は何も見ていないから何も見えないと答え、右脳は絵が見えたことを左手で伝える
→左脳と右脳の 2 つの人格があるように思える、左脳の方が頭がいいのでは?
→分離脳手術の後に左視野が見えないと騒ぐはず、左脳にとって左視野は元々なかったもの
→左脳と右脳はどちらも脳の管理者ではなくどこかに統合システムがあるのでは?
→複雑系という概念を考える


1-21. 複雑系
…多くの要素が絡みあって物事が成り立つという考え方

→一つの原因を探っても全体の動向は割り出せない、構成要素が爆発的に多いため予測できない
→管理者が存在しない、多くの要素が絡み合った結果流れができているだけ
→左脳と右脳はそれぞれの専門分野を持ち自由に処理を行う
→それぞれのモジュールは自分の役割を果たす、他のモジュールが壊れても問題なし
→管理者が存在しないため壊れたモジュールを特定できない
→複雑系である脳が「私」という感覚を感じるのはなぜか?


1-22. 左視野(右脳)は雪景色、右視野(左脳)はニワトリ、両方の視野にいくつかの絵、関連性
→左手(右脳)は雪景色と関連したシャベルを選ぶ、理由は『ニワトリ小屋掃除に必要だから』
右手(左脳)はニワトリと関連したニワトリの足を選ぶ、理由は『ニワトリの足に見えたから』
→理由を考えるのは左脳、左脳は後付けで理由を捏造している


1-23. インタープリタ・モジュール
…左脳にある解釈装置、後付けする、3 歳ごろに発達
→「私」の根源は左脳にある、後付けされた感覚が「私」、3歳以前の記憶がない
→意識よりも早く行動が行われる、指を曲げようと意識する前に脳は指を曲げろと信号を発信
→人間の行動は全て無意識


1-24. 意識
…右脳が情報を手に入れて無意識に体が反応した後に左脳が情報をまとめて解釈する

→この意識の連続が「私」、自由意志があるように感じるだけ
→科学により自由意志への信念を捨てる、自分は倫理的責任を問われるとみなさなくなる
→決定論にどう向き合うか?


ジュール=アンリ・ポアンカレ

1-25. ニュートンはガリレオのデータを代数方程式で表す、アリストテレスとガリレオ
…物理法則を数式で表すことができるのならば、これから起こることは数式で表すことができる
→世界も人間も物理法則に支配されているのか?
→人間は自由意志を持つので例外とされてきた
→人間も物理法則に支配されたものである可能性、自由意志も否定されようとしている


1-26. 三体問題
…ニュートン力学は運動を物体が 2 つだとほぼ完璧に計算できる、3 つ以上だと計算できない


エドワード・ノートン・ローレンツ

1-27. カオス系
…要素が3つ以上になると長期的に見て予測はランダムな予測と大差ない結果になる
→観測時の誤差がどれだけ小さくても時間経過によって誤差は大きくなり予測できない
→切り捨てても関係ないと思う微差でも結果に大きく影響している


ヴェルナー・カール・ハイゼンベルク

1-28. 不確定性原理
…ニュートン力学は原子の世界では運動を計算できない場合がある
→ミクロな量子の世界ではマクロな物質の世界と同じ法則が成り立たない


エルヴィン・シュレーディンガー

1-29. シュレディンガー方程式
…量子の世界の波の動きを計算できる方程式、原子の動きは計算できない

→解である波動関数ψは、ある場所でその量子が検出される確率を表す
→因果関係をもとに未来を予測できないが確率だけは予想できる
→創発という概念を考える、決定論への疑問


ルドルフ・ユリウス・エマヌエル・クラウジウス

1-30. エントロピー
…無秩序さ、曖昧さ、ばらつき


1-31. エントロピー増大の法則
…物理現象は全て秩序から無秩序へ向かう、崩壊と均一化を繰り返して消えていく
→いずれくる宇宙の死に向かって物理現象は繰り返されるだけ
→お湯と冷水を混ぜるとぬるま湯になる、お湯のエントロピー増大、冷水のエントロピー減少
ぬるま湯を 2 つに分けてもお湯と冷水にならない


イリヤ・プリゴジン

1-32. 散逸構造論
…無秩序から秩序が自発的に生まれる仕組み
→外部から影響を受けるオープンな空間では散逸構造が作られる


1-33. 自己組織化
…自然のプロセスで自発的に秩序が形成される


1-34. 創発
…ミクロな世界の複雑系で自己組織化が行われた結果、マクロな世界で新しい秩序が生まれる

→世界は宇宙の終わりに向かっていて、マクロな視点で見れば秩序が無秩序化しているが、ミクロな視点で見れば無秩序から秩序が創発されその繰り返しでゆっくり無秩序に向かう
→人間は世界の無秩序への長い旅の中で生まれた小さな秩序


1-35. 脳の情報処理はミクロな世界の複雑系、行動はマクロな世界の現象
→脳の情報処理から行動にかけては創発が発生している、因果関係は見つけられない、たまたま
→脳をプログラムと捉えると、プログラムを通りでは現れない新しい秩序が行動として創発される
→人間が介入できない偶然性がある以上、決定論的に論じることは難しい
→自由意志がないと仮定しても決定論的な結論には至らない


1-36. ショーペンハウアーの「意思と表象」
…死(エントロピー増大の法則)に抗うように秩序を作り上げる様はまさに生への意志で、その秩序の1つである人間は意志の表出した姿である


2. 自由 12項目

…自由とは何か?人間は自由を獲得できているか?獲得できているなら現代の閉塞感は何か?
→社会は自由なのに心は自由でない気がするのはなぜか?

2-1. 自由からの逃走
外的な束縛→(独立への欲望)→自由の獲得→(孤独からの逃避)→内的な束縛
→自由だと思っていたものから脱却しよう


エーリッヒ・フロム

2-2. フロイト、心理を静的に捉える、感情は時代を越える普遍的、個人に着目
→フロム、心理を動的に捉える、感情は社会と影響し普遍的でない、個人と対象の関係に着目
→資本主義に反対するのではなく今の資本主義はベストでないと考える、フロイトとマルクス


2-3. ヘーゲル『人間の欲望の本質は自由である』人間は様々な自由を獲得
…宗教改革、最初の自由の獲得、古い権威からの解放、個人の誕生
→第1次世界大戦、ピーク、民主主義の勝利、自由の獲得
→第2次世界大戦、自由からの逃走


2-4. 非合理性
…人間は合理的ではない、人間は反社会的生き物である、必然的に争いは起こる
→人間は合理的、人間と世界は合理的に進むという感覚・幻想が一般化


2-5. 静的適応
…習慣に個人が馴染むだけ、テーブルマナー


2-6. 動的適応
…個人の性格まで変化する、しつけ


2-7. 自己保存欲求
…食べたい、寝たい、死にたくない


2-8. 帰属欲求
…他者と結びつきたい、他者がいないと自己に価値を感じづらい、孤独は自己価値を下げる


2-9. 両者を満たすために社会性が必要、身に付ける過程で人間の性格は変化し非合理性を生み出す
❶自己保存欲求の実現により外的自由を実現
❷外的自由が増大すると孤独も増大
❸孤独が増大すると帰属欲求により内的自由を制限しようとする
→いつから始まったのか?


リチャード・ヘンリー

2-10. 中世まで、生まれて親と一緒に過ごす子供、親の管理と安心感
…社会に束縛されていたものの束縛通りに生きれば帰属欲求を満たせる
→仕事は生きること、自分がどんな仕事をして誰に価値を与えているのかはっきりと理解できた
→ペスト、既存経済の破壊、格差の拡大

→ルネサンス、文芸復興、思春期、絆という束縛から解放される、資本主義の始まり
→満たされない帰属欲求を満たすために名誉を求める

→個人のアイデンティティが成立し始めると孤独感を埋めるように競争に精を出す
→時間に対する価値観が変化、能率が価値を占める
→仕事は資本の蓄積、自分の仕事が誰に価値を与えているのかはっきりと理解できない
→中流階級は保守的だが上流階級に不満を持つ、恩恵は少なく格差と孤独にさいなまれる
→カトリック、教会が全て、聖職者が聖書を解釈して良い、洗礼を受けなければ天国に行けない
→贖宥状の発行、お金を払えばよし、洗礼を受けられる

→宗教改革、親からの独立、自由な競争・信仰の自由・責任の発生、元には戻れない
→ルターの思想、聖書が全て、誰もが聖書を解釈して良い、信仰すれば天国に行ける、人間は無力、禁欲的に働くことが求められる、勤労意欲を生み資本主義が加速
→プロテスタントが誕生、カトリックが認める、中流階級に支持される
→カルヴァンの予定説、人間は無力、天国に行ける人は神によって決められている、選ばれていれば現世でも成功するだろう、ゲーム理論、勤労意欲を生み資本主義が加速

→国家と教会の分断、民主主義の先駆け
❶信仰の自由、自然科学で証明されていないものを信じるという内面的能力を失う
❷言論の自由、自分の話すことの大部分が他の誰もが話していることだと忘れ自分で考えなくなる
❸権力からの自由、目に見える権力から解放されたが他人の期待や常識に一致させようとする
→生きるために働く(人間>資本) から 働くために生きる(人間<資本) へ

→プロテスタントと資本主義は矛盾しない、自分を愛せなくなったことが資本主義の原動力、自愛が欠如することで不安が生まれそれを埋めるために利己的な行動を取る
→社会的自我を満たそうとしても満たされない
→駆け引きや損得勘定による人間関係、人間は商品となり取引されるようになる
→評価される自分は本来の自分でないため自分は何者か?を満たすために物が必要
→それを満たすための広告だらけ、自分の仕事が誰のためか分からない、束の間の楽しみ
→耐えられなくなった時に自由からの逃走が行われる、ナチズムの始まり


2-11. 自由からの逃走
…「こうあるべき」と「こうありたい」という求める自由が違う
❶権威主義、自己を否定し大きな権威に服従、一時の安心感を得れる
❷機械的画一性、「こうありたい」を封印、社会と自己のズレを見えなくできる
❸テロリズム、「こうあるべき」を破壊、社会と自己のズレはなくなる
❹自発的行動、「こうありたい」を認識し孤独を受け入れて自発的に行動する、理想は子供
→現代のいい人生の価値観はここ70〜80年くらいで現れたモデル
→絶対に間違っているとも正しいとも言い切れない、判断はあくまでもあなたにとって
→人間は社会の中で生きていくため社会に惑わされないのは不可能、それでも努力しろ
→結果ではなく過程が重要、過程を目的とすることで社会と自己のズレがなくなる
→何かから自由になるのではなく新しい自由へと一歩踏み出す


ジャン・カルヴァン

2-12. 予定説
…努力すれば報われるわけではない、勤労の結果として蓄財しても良い

→神の規定を取り入れる、人間は間違うこともあり常識が正しいとは限らず正解はない
→人事評価は努力、結果、評価、報酬という因果応報を目指すがそれでは動機にならないのでは?


3. 正義と善 19項目

…形而上学的な正義と善、政治的な正義と善
→答えはない、あるのならば世界中の不幸は是非が判断できることになる

3-1. 正義
…正しいこと、それぞれが合意したルールによって正しく問題解決されること


3-2. 善
…特定の個人・社会によって自己をより幸福にしてくれること・その状態


ジェレミ・ベンサム

3-3. 功利主義
…決定の利益からコストを引いた時、他の決定より利益を生み出すならば決定は是である

→シンプルで整合的・共有可能・実証可能
→快楽だけを善としないのでは?数値化に無理があるのでは?個人の自由が制限されるのでは?


3-4. 快楽主義型功利主義
…快楽や苦痛は数値化できそれに基づく計算で正義を判断する

❶量的快楽主義
…快楽や苦痛を量的に数値化、すべて足して最大化させる決定を是とする

❷質的快楽主義
…快楽や苦痛には質的差異がある
→行為自体の道徳性を重視しない、一部の不快は許容


3-5. 選好功利主義
…客観的評価ができる個人の好みに基づく計算で正義を判断する、快楽や苦痛では分かりづらい

❶行為功利主義
…利益をもたらす基準を行為に求める

❷規則功利主義
…利益をもたらす基準を規則に求める

❸総量功利主義…
総効用が大きいほど善である

❹平均功利主義
…個人の一定以上の効用が守られるべき


ロバート・ノージック

3-6. リバタリアニズム
…他人の身体・財産を侵害しなければ基本的に自由である、個人の自由が社会の幸福につながる

→経済活動への国家の介入を最小限にしようとする、徴兵・徴税・福祉国家に反対
→社会的弱者を守るという介入を認めない、当人同士が認めるなら殺人も OKか?
→カントの道徳論が必要


3-7. ロックの自己所有権と労働所有権
…全てのものは全ての人の所有物、自分は自分の所有物、労働による生産物はその人の所有物
→法律は自分でどんなリスクを取るかを決める自由を侵害している、多数派の美徳の概念で自由を制限するのは不当だ、国家の介入を認めない


3-8. カントの道徳論
…道徳とは幸福を最大化するものではなく人格そのものを尊重すること、功利主義を批判
→利害・必要性・欲望・選好などの経験的理由を道徳の基準にすべきでない、偶然に左右される
→アプリオリな理性によって行動を縛ることが自然法則に対する自由である
→A を行うとB・さらに C という結果が導かれるとき、B やC を期待して行う行為は道徳的でない
→A を行うことが正しいから A をした、自律的な行為


ジョン・ボードリー・ロールズ

3-9. ロールズ的リベラリズム
…社会的弱者のためになる範囲であれば自由である
→社会的弱者のためになるのであれば経済活動への国家の介入を認める


3-10. 格差原理
…社会的弱者を助けるための社会的不平等は許される
→努力しない社会的弱者は助ける必要はないのでは?
→助けるべき、道徳的恣意性より


3-11. 道徳的恣意性
…富・教育・生まれ・才能と同じように努力できる才能も平等ではない
→各人の与えられたものは公共の財産と見なし社会に還元すべき


3-12. それぞれの利害・道徳・宗教・地位が存在する中で作られる法律は道徳にならない
…多様な善ではなく全員が合意できる正義に限定してルール・法律を整備すべき
→個人の権利が保護され正義が成り立つ範囲でのみ善の追求が許される


3-13. ロック、合法的政府は人間が自分たちを律する原理として定めた社会契約によって生じる
→カント、社会契約は事実として存在することはあり得ない、仮想上の契約はあり得る
→正義とは何かを考えるためには平等の原初状態において人間がどのような原理に同意するのか?


3-14. 無知のヴェール
…自分の立場などについて全く知らずにいる状態

→自分が何者かわからなくなる、そこで同意された原則は平等と正義にかなうはず、仮説的同意
→功利主義は選ばれない、全体の幸福のために少数派の自由を奪う、自分が含まれるかも
リバタリアニズムは選ばれない、自分が社会的弱者として切り捨てられる可能性がある


3-15. 封建制度・カースト制度は生まれでほとんどが決まるので自由の権利を侵害している
…リバタリアニズムはみんなにチャンスがあるが生まれ・育ちの不平等を考慮しない、実力社会は教育の機会均等を目指すが才能の不平等を考慮しない
→格差は残る


3-16. アファーマティブアクション
…マイノリティの不利を制度で是正


マイケル・サンデル

…リベラリズムを批判、コミュニタリアニズムの重要性を説く

3-17. コミュニタリアニズム
…普遍的・単一的な正義ではなく文化的共同体で培われる正義を重視する
→全体主義化の危険性、他の共同体を排除しようとする、どう協調するのか?
→議論は振り出しか?対抗できるのは徹底的な自由主義のみ

→正しい間違っているで片付けるのではなく、議論を続けることこそが人間の目的因なのでは?


3-18. アリストテレスの目的因
…正義を定義するには営みの目的(善き生活)を知らなければならない、善を重視
→いくら平等に配慮した中立的な法律を作ろうとしても何が正義かを決めるのは不可能なのでは?
→政治がなすべきことは良き人格・市民を教育すること、見誤ると単なる同盟・契約となる、1人1人の権利が他人に侵害されないように保証するものなってしまう
→実行させて習慣化する、実行が先にあって善良な精神が身に付く、礼の重視


3-19. ロールズ的リベラリズムは明らかに善より正義を重視している、無知のヴェールは机上の空論
→人間は所属する共同体の価値観から独立することなどできない
→それぞれの共同体の目的・善が重視されるべき、善と正義は切り離せない
→正義は共同体ごとに違う、一つの正義で縛ることはできない


4. 心の哲学 29項目

…心と身体はどう関係しているのか?魂を規定できるのか?人間を機械化できるのか?

4-1. この世界はどのようにして成り立っているのか?タレス
→真理の探求より目の前の問題を解決しよう、みんなにとって正しいより僕らにとって正しい
→真理はある、ソクラテス、プラトン、アリストテレス
→真理は神として表れている、キリスト教の布教
→意識とは何か?デカルト、カント
→言語とは何か?ソシュール、ヴィトゲンシュタイン
→真理の探求より目の前の問題を解決しよう、みんなにとって正しいより僕らにとって正しい
→真理はある、存在とは何か?ガブリエル、メイヤスー、実在論的転回
→心とは何か?サール、チャーマーズ、自然主義的転回


4-2. クオリア
…感覚的な意識・経験


アリストテレス

4-3. 唯心論
…心しか存在しない、世界は心的存在のみによって構成される、物質は存在しない


デモクリトス

4-4. 唯物論
…物質しか存在しない、世界は物理的存在のみによって構成される、心は脳の物理現象
→心的なものは物理的なもの・物理的なものに付随


4-5. 分身を5人作ると本当の自分はどこにいるのか?
…同じ物理特性を持てば全て自分
→心的存在を認める場合は心がどこに宿っているかが重要


4-6. 因果的閉包性
…世界のあらゆる出来事は物理現象以外に原因を持たない


バラス・スキナー

4-7. 行動主義
…人間の心を認めなくても行動を研究すれば心を研究できる、心は行動に内包される
→クオリアを無視、論ずることができない


4-8. 徹底的行動主義
…人間の行動は過去の行動結果に依存する、自由意志は存在しない
→純粋に行動を分析する、心的現象は行動に内包されている


4-9. 脳の報酬
…人は不確実なものにハマりやすい
→ドーパミン(欲求系)により行動に駆り立てられオピオイド(快楽系)が満足を感じさせ行動を停止
→変動比率スケジュールは人の行動を繰り返し行わせる


ジョン・ジェイミソン・カースウェル・スマート

4-10. 心脳同一説
…心と脳は同一のもの、心的現象と脳活動をイコールで結ぶ
→クオリアはある脳状態に対応したもの

→行動に現れる痛いも行動に現れない痛いも脳状態から説明可能
→脳状態を研究すればことが心を研究できる
→脳状態が違うと同じ痛みは現れないのか?
→タイプという普遍的なものではなくトークンという個別的なもので脳状態を捉えよう
→科学的に分析できない、客観的判断材料がない


ウィリアム・ジェームズ

4-11. 機能主義
…心的状態はその機能で定義される、心的現象は様々なタイプの物理現象で実現できる
→コンピューターは心を持つことができるのか?


4-12. 機能的性質
…因果作用をもたらす心的性質
→足をぶつける(知覚入力)の結果「痛い」、「痛い」が原因で顔をしかめる(行動出力)
→人間じゃなくても実現可能なのでは?人間の脳を再現したロボットを作る
→実現可能、知覚入力に対して人間と同じ行動出力があれば人間と同じ機能・心的性質はある


4-13. コンピューター機能主義
…ソフトウェアは脳と同じ
→プログラム(知覚入力)の結果「計算」、「計算」が原因でロボットが動く(行動出力)
→心的性質は計算の過程で生じる質感みたいなもの、無機物でも良い


アラン・マシスン・チューリング

4-14. チューリングテスト
…2つのディスプレイに質問し回答を踏まえてどちらが人間か判断、
1つは人間が操作、1つは人間を装ったコンピューターが操作
→コンピューターが人間と判断されれば人間と同じ機能があるはず
→意識を持つ AI は作れる


ジョン・ロジャーズ・サール

4-15. 中国語の部屋
…中国語ができないイギリス人に中国語が書かれたカードとそのマニュアルを渡し部屋へ、部屋の小さな穴に中国語の質問が書かれた紙が渡される、マニュアルを使って回答
→中国語でのやりとりが成り立っているように見えるが意味の理解という意識は存在してない
→人間と機能が同じでも意識は付随しないのでは?

→英国人・中国語が書かれたカード・そのマニュアル・部屋の全体が機能として把握されるべき
→全体として意識が発生しているか否かは英国人単体で判断してはいけないのでは?
→脳という部屋において、様々な機能を持つ部位単体に意識は認められるのか?
→意識とはどの領域で発生しているのか?脳の部位か?脳全体か?身体か?もっと大きいか?


ネド・ブロック

4-16. 逆転クオリア
…同じ物理現象に対して別々の人間が異なるクオリアを体験する可能性がある
→クオリアが逆転された世界があっても通常の生活と変わらない
→機能主義はクオリアを考慮できていない、機能的に同じなのにクオリアが違う
→クオリアの逆転など不可能、検証できないから論じても意味がない、ロック


4-17. A さんとB さんは同じ信号を見る
→A さんは「赤の周波数の光」を見て「赤い」クオリアを感じ『赤だ』と判断し止まる
B さんは「赤の周波数の光」を見て「青い」クオリアを感じ『赤だ』と判断し止まる
→違ったクオリアを感じている可能性があっても外から違いを判別できない


トマス・ネーゲル

4-18. コウモリであるとはどのようなことか
…人間にとして質問に答えるのは簡単、コウモリにとして質問に答えようとするとわからない
→超音波で周囲を把握している、見ているのか?効いているのか?
→コウモリのクオリアに対して物理学的に解決できない
→機能に関して物理学的に解決できてもクオリアの情報がない
→今の物理学では解決できないものがある


4-19. コウモリにはコウモリ特有の視点という主観的世界があり、
その主観的世界があることがコウモリであるということ
→主観的世界を科学で解明するとはどういうこと?
→特定の視点を排除した態度、主観を放棄せざるを得ない
→物理学理論の拡張は客観性の増大、意識という主観の研究から遠ざかっているのでは?
→物理現象と心的現象はレイヤーが違う、物理学理論で説明できない
→主観的なものを客観的に扱うことの問題性
→主観的なもの(クオリア)を分析する新しい方法を模索すべき


プラトン

4-20. 二元論
…心と身体が存在する、物理空間に心は存在しない
→非物質的な心の動きがどうして物質的な身体の動きに影響するのか?
→一元論、心と身体は別、神が調和させている、ライプニッツ
→唯物論で解釈が可能


4-21. 実体二元論
…心的な実体と物質的な実体(身体)は独立して存在する、魂のような存在を認める


4-22. イデア、時空を超越した真理を起点に心身問題を考える
…感覚の世界、肉体(ソーマ)、消滅する、仮の実体
イデア界、魂(プシュケー)、消滅しない、真の実体
→自分とは肉体・財産・環境ではなく魂、消滅する肉体に消滅しない魂が入って人間となる
→魂をよくするために生きることが必要


デカルト

4-23. コギト
…完全に疑いようのない精神を起点に心身問題を考える
→身体は思考できない延長実体、空間的な広がりを持つ
心は思考できる思惟実体、空間的な広がりを持たない
→脳の松果体が心と身体を繋いでいる
→因果関係を説明できない、松果体で生じる運動から精神が知覚を受け取っている


ロジャー・ペンローズ、スチュワート・ハメロフ

4-24. 量子脳理論
…量子力学の立場から実体二元論の矛盾を解決しようとする
→意識の発生源は細胞の微小管、波の重ね合わせにより波動関数が収縮し意識が表出
→ニュートン力学で計算できるような因果関係は存在しないのでは?


スピノザ

4-25. 性質二元論
…存在する実体は 1 種類、心的な性質と物質的な性質を持つ
→一元論とも二元論とも言える


4-26. 実体は形成に他の存在を必要としない、世界のものは他のものと因果関係なしに存在できない
→実体とは世界である
→世界とは神である
→心も身体も神の属性の一部


デイヴィッド・ジョン・チャーマーズ

4-27. 自然主義的二元論
…心的現象は物理的現象に還元できない、心的現象と脳活動をイコールで結ばない
→意識とは物理学的に記述できない・認識の外にあるもの
→意識がない世界の問題(イージープロブレム)は物理学的に解決できる、
意識がある世界の問題(ハードプロブレム)は物理学的に解決できない
→物理学理論を存在論的に拡張すべき、科学で心を研究しよう、魂の存在を認めない


4-28. 哲学的ゾンビ
…人間の形をした何か、外面的には人間と同じように振る舞う、内面的には意識・経験を持たない
→目の前の世界に置き換えた時に自分以外の他者が哲学的ゾンビではないと証明できない


4-29. 想像可能性論法
…人間の世界には意識がある、意識のない世界は存在可能
→意識に関する事実は物理的な事実とは別、人間の世界に関する事実
→唯物論の否定、意識がある世界は物理学的に記述できない
→ハードプロブレムもイージープロブレムの総和なんだから時間が経てば物理学的に解決できる


5. 脳の錯覚 31項目

5-1. 因果関係などない
…脳の錯覚、相関が強いと勝手に因果関係があると解釈する
→科学が証明できることは相関関係だけ
→統計は相関の強さを扱うツール、因果を証明するツールではない


5-2. 事実と真実は違うもの
…事実は感覚世界、脳の活動
→真実は実際の世界、それについて脳は知り得ない、知る必要さえない、真実なんてどうでもいい
→愛する人が手を握るだけで嫌悪・恐怖を感じる部位の活動が減る、島皮質
→料理も盛り付け・食器・雰囲気で味が変わる


5-3. 人は顔の右側しか見ていない
…人の右側に立つと心を読まれにくい、微笑みは左で笑う


5-4. 変化盲
…変化したことに気づかない


5-5. 選択盲
…選んだにも関わらず気づかない
→脳がこじつけ、誤った説明をしているが気づかない


5-6. 単純接触効果
…長時間接するほど好きになる
→好きな理由を聞くのはナンセンス、長時間接していたから
→視線が動かないといけない、わざわざ視線を動かしたんだから好きに違いない
→好きになってもらいたい人には手伝ってもらう


5-7. 恋愛していると報酬系が動く
…快感は報酬系から生まれる、恋愛とは快感
→スキナー、盲目性、ランダム、行動強化
→この人でいいんだと脳を無理やり納得させる


5-8. ひらめきと直感は違うもの
…ひらめきは思いついた後に理由がわかる、ひらめきは寝て待て、情報の整理・保管
→直感は思いついた後に理由がわからない、手続き記憶、やり方
→無意識・自動的・正確・繰り返しで覚える
→女の勘に理由などない


5-9. 自分が暗影した存在であるという安心感はそれを裏付ける記憶から生まれる
…記憶は自我を存続させる、情報処理に役立つだけでない
→記憶は時間の流れを作る


5-10. パターン・コンプリケーション
…一部の情報から全体を類推して補完する、何が隠れているか、何を省略するか
→自由に考えて生きてるつもりでも実際は特定の解釈の中でしか思考を巡らせていない、経験だけを頼りにして類推するから
→ある人は気づいてそれが普通でしょって思うけど、気づかない人はそれが存在しない世界にいる


5-11. 正しいとは記憶のアクセスがしやすいかどうか
…身近な具体例が思いうかべば正しいと思う
→好きの言い換えにすぎない、自分にとって心地がいいかということ
→快感とセットになって脳に入ると脳の回路が変化する
→ポジティブな単語をかけると脳の動きが促進される


5-12. ヒトは人間になるべくして人間専用の脳を持って生まれた訳ではない
…たまたま生まれた環境が自分を人間として扱ってくれるから人間になった、教育があった
→教育・社会によって感情のレパートリーが増える、人間らしくなる


5-13. 心が痛むときは脳で本当に痛みを感じている
…身体的な痛みを感じるシステムは社会的な痛みの検出にも使われるようになる
→疎外感・思いやり・節約も痛覚から生まれる


5-14. 角界
…刺激されると幽体離脱したような感覚になる、30%の人間が幽体離脱を経験する
→幽体離脱の感覚は必要、他人の視点で自分をみれる
→外に向かって自分の身体で表現して、それを観察して自分の内面を理解する


5-15. 生物を作っている物質
…核酸(DNA など)、アミノ酸、糖、脂肪酸、生体有機物
→生物とは?

❶呼吸・光合成などの生命活動をするもの
→循環論、生命活動とは?生物が行なっていること

❷命が有限であるもの
→死ぬとは生物をやめること、既に生物の定義が含まれる

❸外から食料などのエネルギーを吸収して活用できるもの
→蒸気機関車もそう

❹自己複製するもの
→子孫を残す・親があるとは?


5-16. ヒトは認知する生物
…存在しているかどうかではなく存在を知覚しているかどうかがすべて
→生物だと知覚できれば生物なのでは?


5-17. 聞こえるとは?
…空気振動が電気信号に変換される、イオン
→同じ仲間のチャネルの使い回し
→熱さと冷たさを感じるセンサーも、カプサイシンとメントール
→世界の多様な情報を少ない要素に落とし込んで感じている
→匂いだけは別、受容体が 400 種類
→五感で最初にできたのは嗅覚では?
→聴覚・視覚・味覚・触覚は視床を通って大脳皮質に届く、
嗅覚は直接大脳皮質に届く、寝てる間も働く、食べ物を探すため


5-18. 最初に目を作った生物はサンヨウチュウ
…コナミドリムシ、光を感じるセンサー
→目を介さなくても大脳皮質で直接光を見れる、映像を叩き込める
→色を感じれるようになる、今まで感じれないものを感じることができるようになるのか?


5-19. ルーティング
…本来は考えるルートがたくさんあるのに過去の経験・記憶によって制限され自由度が少ない

→予め決まっているのか?決められた通りに振る舞っているだけなのか?
→決定論も自由論は二律背反的に分けられるものではなく同じことを言っているのでは?
元々決めれられていたとしても意識上は自分で決めたから結局はどっちも一緒なのでは?
→脳の反応を全て計算するのはできないのでは?
脳の反応を全て計算できるコンピューターがあったとしても
コンピューターの中の無意識はコンピューターに入れられない、
コンピューターの中の反応はコンピューターの中に入れられない


5-20. 脳の活動と認知
…準備(脳活動)・動かそう(意志)・動いた(知覚)・指令(運動)
→制御されているのを知らなければ自由である、自由は行動の結果としてもたらされるもの、
過去に対して感じる
→自由意志ではなく自由否定ならあるのでは?言わないようにする、やらないようにする


5-21. 逆モデル
…〜したい、だからこう運動しないと、内部モデルを使う


5-22. 脳の計算
…入力+ゆらぎ=出力
→いつ入力がくるかが大切、タイミングの問題
→ミスがいつ起こるか脳の活動から予測できる


5-23. 脳の可塑性
…刺激によって脳が変化してそれがそのまま残る
→生まれだけでなく学習・訓練も大事、能力がなくても可塑性が高ければ勝てる
→自分の見る世界は脳の可塑性を通じて後天的に形成される


5-24. 自然淘汰
…❶可塑性が高いヒトが生き残る、伸び代があるヒト、学習できるヒト
→❷能力の高いヒトが生き残る、みんな伸び代があって学習できるのなら遺伝が大事
→❸多様性が高いヒトが生き残る、遺伝が大事なら多様性が大事


5-25. ノイズ
…情報の収集・利用を切り替える
→ゆらぎの役割
❶効率良く最適解に近づく
❷弱いシグナルを増幅する、確率共振
❸創発のためのエネルギーとなる
→ひねくれ者にも役割がある、優等生だけではやっていけない、非合理的なことを試す必要がある
→貨物運搬の航空会社はアリのアルゴリズムを採用、効率のいい運搬経路


5-26. ニューロン
…積分マシーン、足し算してく
→出力はオンかオフ、合計値がある値より大きければオン、閾値がある
→興奮はナトリウムイオン、抑制はカリウムイオン
→鹿威し、ニューロン出力ではなくシナプス入力がゆらぐ
→ニューロンが集まって回路を作る、流れる水が他の鹿威しに流れる、水路
→ノイズを加える、鹿威し、鹿威しにランダムな量で水を流す
→上の層ではバラバラに水が流れる、下の層に行くにつれ波がシンクロする、
途中から大きな同期した波に変わる
→神経回路にはノイズを整える作用がある、秩序に変換される、ノイズは脳のエネルギーでもある
脳は 1 日400 キロカロリー消費、20 ワット、栄養だけでなくノイズを利用しているから


5-27. フィードバック
…海馬、大脳皮質
→鹿威しにフィードバックを加えると水路に水が溜まりすぎる
→ブレーキが必要、ある鹿威しが動いたら近い鹿威しに水を分ける、遠い鹿威しからは水を抜く
→創発、動いているニューロンが集まった部分と静かなニューロンが集まった部分に分かれる
→回路を通すと足し算の結果はただの足し算にはならない、新しいダイナミズムが生まれる、回路ではなく要素単体でも同じことが起こる
→意志・生物っぽさは数少ないルールの中でランダムに創発されているだけ、遺伝子とは生命の設計図ではなく生命システムのルール


5-28. べき分布
…無秩序でないことを表す、現象の裏に何らかのルールが存在している
→ネットワークにノイズを加えると結果はべき分布になっている、
ネットワーク自体がルールを持っている
→べき分布を創発する基礎ルールは回路の構造
→構造が変われば創発のパターンも変わる


5-29. 生命らしさ
…構造を持った回路があれば、あとは簡単なルールを繰り返すだけ
→エネルギーはノイズ、機能を生み出す
→神経回路の自己書き換え、生み出された機能は構造を書き換える、脳の可塑性の基盤


5-30. ノイズはコントロールできる
…フィードバックによる、自分を客観的に認知することでコントロールできるようになる
→自律神経はフィードバックが欠けている、身体の反応はコントロールできない


5-31. リカージョン
…入れ子構造、あるものの中に同じものが入っている、出力先が自分、直接フィードバック
→数字を数えることができるのはヒトだけ、1 の次は2、2 の次は3、4={(1+1)+1}+1
→無限を認識できる

→有限を認識できる、唯一の動物、資源・命、いつかは滅びることを知っている
→有限を知っているというメタ認識こそがヒトらしさ


6. 個人 21項目

ハンナ・アーレント

6-1. 人間の条件
…人間の生きる世界は変化してきた中で、
人間としてどう生きるかという価値観はどう変化したのか?

→世界は圧倒的便利になったが人間はいい人間性の獲得にはつながっていない
→むしろ人間はただ消費と労働を繰り返す動物的な存在になったのでは?


6-2. 全体主義が発生する条件
❶文化・言語が共有される国民国家の成立
❷国民国家による人種思想の強まり
❸民族的ナショナリズム
❹人々が階級を失うことによる大衆化
→普通の人間でも環境によって簡単に極悪に染まる、エルサレムのアイヒマン


6-3. 人間的卓越性
…人間特有の本性がある、他の動物にはない何か
→人間の活動力にヒントがあるのでは?
❶思考、人間の持っている最も素晴らしいものだが人間の条件からは外される
→アリストテレス、観照的生活、発揮される生活が最良の生
→それだけではダメでしょ
❷労働、消費財を生み出す、生産されたものは消費され世界に残らない
❸仕事、モノを生み出す、生産されたものは残る
❹活動、多くの人の間で生きること、議論や助け合い、複数性・差異性を認識
→現代では失われてしまったのでは?


6-4. 歴史における領域の変化
…ポリス社会、労働は奴隷に任せて市民は活動に勤しんだ
→活動は労働・仕事に侵食された
→現代では活動力のほとんどが労働になった
→複数性・差異性を認識できない
→個々の物語ではなく全体の数字として処理されるようになった


6-5. 労働
…生物的機能を維持するために必要な行為
→栄養、清潔、家事
→現代的な労働の解釈とは異なる

→労働によって生まれた財はすぐに消費される・耐久性がない
→貨幣だけは耐久力がある
→労働を貨幣に変える、労働力の余剰が資本を生み出す、全てを使い果たすわけではない
→資本のために目的以上に労働が求められる


6-6. 労働は生命維持の必要性に基づく
…生命維持の目的は消えることがないため永続的に反復される
→基本行為が労働だけになっている人間の余暇は消費に利用される、時間が余るほど貪欲になる
→束縛であり不自由
→古代ギリシャ人は束縛から解放され自由を手にするために奴隷を使った、労働以外に活動力を発揮
することができる


6-7. 仕事
…何かしらの目的のために自然から材料を切り出す行為

→机を作る、靴を作る
→人間の力を超えた自然という超越的な存在への暴力により世界が客観的に認識可能な状態になる
人間の主観性の対極にある客観性が備わっている
→仕事によって生まれたモノは世界に残って使われる、耐久性がある
→人間は作られたモノに囲まれてできた世界を認識して、それに自分自身の存在を紐づけることで、アイデンティティを認識することができる
→小さい頃の自分と現在の自分を同一だと認識、
構成要素は全く違うのに同一だと確信する根拠は?
→周りにあるモノは同じでそのモノに自分が結びついているため、同一性の檻から飛び出さなくて済む


6-8. 仕事によって財がつくられるとその財は増殖させることができる
…概念が残る、イデア
→個々の財が使い古されて世界から消えてもイデアが存在することで同じ財が生み出されて世界は存続し続ける
→最たるものは芸術、観念を財にしたもの、そのままでは誰かの死と共に消えるはずだった形のないものを形にして世界に定着させる
→現代はその芸術も消費される傾向にある
→仕事が労働に侵食されている?混ざって判別しづらくなっている?


6-9. 活動
…直接人間同士で行われる行為

→財を必要とせず財を生み出しもしない
→活動を通して複数性を獲得、いろいろな人間がいるという状態
独自のアイデンティティを持つ個人が人間として対等に複数で存在している
→集まって議論をする、テーブルという仕切りでアイデンティティは区別され差異を確認、共同体だが単一な属性ではない
→全体主義、複数性が極端に制限され無視される、全体の利益が重視される


6-10. what
…あなたは何であるか?肉体的アイデンティティ

→能力や肩書き、数字に還元できる、労働や仕事に対応
→属性を説明しているだけ
→見せ方をコントロールできる


6-11. who
…あなたは誰であるか?人格的アイデンティティ
→個性、数字に還元できない、活動に対応

→他者によって決められる、強制的に
→言語で物化しようとした瞬間に一点に情報が確定されすでに現在進行形の whoではない可能性
→哲学的に人間を定義するのは不可能
→活動なしに物語は生まれない
→労働と仕事をこなすロボットしか存在しない活動なき世界では物語は生まれない、自身の機能を失わないためにメンテナンスを行い世界を成立させるために必要なモノを作り続ける
→物語、story、活動に起因するwhoの物化
→歴史、history、全体という存在し得ないwhoの物化
→人類全体としての物語、歩みがわからなくて当然
→活動なき世界では個人の物語は発露せずに集合の歴史の一部として処理される
→歴史を通してどのように人間の活動力は変化したのか?


6-11. 人間の活動力が正常に発揮された世界とは?
…古代ギリシャ、ポリス、領域という考え方
→アリストテレス、人間はポリス的な動物、能動的に活動を行う、善は開かれた場で模索せよ
→中世、キリスト教、善は隠れてせよ、私的なもの、領域が曖昧になった
→トマス・アクィナス、人間は社会的な動物、共同体に属している、受動的な意味も含まれる
→ギルド、家族をモデルに商業集団が形成された、company、一緒にパンを食べる仲間
→中世における共通善、家族のために利益を求めるのに共通の部分があると示すだけ、私的領域における共通善、社会は私的な家の集合というだけ
→人間の活動力のうち活動が労働に侵食される

→宗教改革、カルヴァンの予定説、救われる人間は決まっている、信仰者は救われるか不安
→禁欲的に労働することで解消しようとする、人間は神の意思を実現するために送られた存在、労働こそが意思の実現では?
→自分の天職を全うし労働で成功することことが選ばれた人間の証明、救われる確信
→人間の活動力のうち活動がさらに労働に侵食される
→資本が貯まる、過剰になった農村人口の労働力の使い道を探す

→産業革命、オートメーション、モノの設計図を理解しなくてもモノを生み出せる
→目の前に機械による作業の必要性があり行為が強制される、それは労働そのもの
→モノが大量生産される、財は使用されるのではなく消費されるようになる
→人間の活動力のうち仕事が労働に侵食される
→ナショナリズム、国民国家、経済は政治と一体化し民衆はwhoではなく whatで捉えられる
→人間は画一的平等に押し込められwhoを発揮できなくなった
→人間が同じような行動をして同じような価値観を持つ傾向がある世界では
お互いの距離を正しく取ることができない
→公私の境界線をはっきりさせて共通の認識や価値観のもとで活動ができる環境を取り戻す必要、人間が一緒にいるだけでは活動は起こらない

→テクノロジー・AI が労働を代替するようになったらどうすればいいか?
→社会的領域の呪縛から抜け出せなければ労働が機械で代替できても、
永続的な消費に人生を費やすだけの存在になるのでは?
→活動・仕事の復活が必要なのでは?


6-12. 公的領域
…活動の場、公共
→支配はなく平等、力の行使は嫌われる
→求められるのは who
→光


6-13. 私的領域
…家庭(oikos)
→活動力はほとんど労働
→奴隷に任せる、支配・非支配、力の行使
→求められるのは what、隠される
→闇、奴隷に任せて光に集中
→家政術(oikonomia)
→経済(economy)
→私的領域が公的領域を飲み込む
→社会的領域


6-14. 社会的領域
…生命維持の必要性を超えた謎の必要性を原動力に労働が最優先
→経済的な支配・非支配
→プライベートとパブリックが曖昧、現代の経済には私的領域の要素が含まれている
→人間が自分の生を客観的に確認するためのテーブルがないため公的領域における who は軽視され
画一的・同質的な平等が求められる
→人間は生きる必要性に窮してに労働と消費を繰り返す存在になった


6-15. コミュタリアニズムにおける共通善
…古代ギリシャ的な公的領域における共通善


平野啓一郎

6-16. 分人主義
…個人という概念をさらに細分化する考え
→個人だと思っているものは場面場面で現れる分人の集合体である、
あらゆるペルソナの合計が自分になる、どれも本当の自分である
→本当の自分ではない・本当の自分はどこという感覚は生まれない


6-17. 人間は当たり前のように個人という概念を受け入れている
…組織とは無関係に存在する自分そのもの
→アリストテレス、これ以上に分けられない、individual
→近代では個人という概念を導入して国民を独立した主体として定義、
国家を運営する上で急務だった、全体主義・大きなコミュニティの中では人々の幸福度を上げる
→フーコー、有限の存在として人間は近代で現れその人間は今終わろうとしている、現代では個人という大雑把な単位はもはや通用しない可能性、
小さなコミュニティの中では幸福度を下げる


6-18. 分人化
❶社会的な分人、汎用性の高い分人、不特定多数の人とコミュニケーション可能
❷環境的な分人、特定グループに向けた分人、学校・職場・SNS
❸関係的な分人、特定の相手に向けた分人、相手の性格・思考に合わせて分人が登場する
→分人化は外部要因と相互作用して行われる
→八方美人は分人化の努力を行なっている人、この人はこのくらいでいいでしょという傲慢な姿勢、他者への無関心が根底にある
→ベストな分人の数がある、複数の分人で精神のバランスを保つ、
ある分人がストレスを抱えて生きてても別の分人が快調ならなんとかプラスに生きれる


6-19. 人間関係における悩みが軽減される
…特定の人の前にいる自分が嫌な人間だと悩むがその責任を自分に求めすぎなくなる、自分が好きな人間になれたとしても半分は他人のおかげだと考えることができる
→嫉妬とは自分以外に対する分人を大事に思っている様を不快に思うこと
→好きな人が自分の嫌いな人と仲良くしていてもそれは整合性がある、
好きな人が自分に向ける分人と、好きな人が自分の嫌いな人に向ける分人は別の主体、好きな人が自分の嫌いな人と仲良くなることに自分は関係がない


6-20. 愛についての解釈
…恋は特定の他者を好んでいる状態
→まずは興味がある、自分の思考空間に入れる感じ
→恋としての好き、自分の思考空間に入れたものが快感、性的志向・人間に限定される
→女性が好きであれば女性にしか感じない
→愛は特定の誰かに接している自分を好んでいる状態、その瞬間の分人が好きという感覚
→相手の存在によって自分が自分自身のことを愛せるようになること、
自分の存在によって相手も相手自身のことを愛せるようになること
→性的志向・人間に限定されない、尊敬もこの概念に近い、家族愛・師弟愛


6-21. 死についての解釈
…相手が死んでしまうと自分の分人の一部が失われる、
自分に向かう相手の分人を失うだけでなく、
相手に向かう自分の分人を失うという悲しさも含まれる
→人が本当に死ぬのは命が絶えた時ではなく誰からも忘れられた時だ、
自分に向けられる分人がなくなると自分という存在は無になる
→自分の存在は他者なしではあり得ない、そのような連鎖の上に社会は成り立つ


7. 言語と規則 4項目

7-1. 言語はその時の状況・規則によって意味が左右される
…ちゃうちゃう、ちゃう
→言語と規則の関係性を考える
→ヴィトゲンシュタイン、指摘言語論、クオリアを言語で表現することは不可能


7-2. カブトムシの思考実験
…複数の人間が箱を持っていて「カブトムシ」と呼ぶものが入っている
→彼らは自分の箱に入っているのはカブトムシだと確信しているが、自分の箱のそれと他者の箱のそれが同じ「カブトムシ」かは分からない、
→Aがカブトムシ・Bがクワガタ・C がカブトムシの絵・D は何もない空間という可能性

→人間は明確な対象があることで名前をつけることができる、共通して認識できる
→人間の内的感覚は共通して認識できない、言語を使っても同じかどうか確認できない

→言語はどのような規則で存在しているか?
→そもそもどのように規則が生まれて人間がそれに従うのか?
→規則のパラドクス、言語は規則に従うことができない、
いかなる言語も規則と一致させることができるから


ソール・クリプキ

7-3. クワス算
…足し算ができる人間に条件を加える
❶これまでに有限数の足し算しかしたことない
❷47以上の数を使って足し算をしたことない、認識するにはあまりに大きい数を47としただけ
→15+51=66

→クワス星人が現れる、クワス算
❶x,y が共に47 より小さいとき答えは足し算と同じ結果になる
❷x,y のいずれかが 47 以上のとき答えは 5 になる
→15+51=5

→人間は足し算を計算の実践によってではなく、
「こういう方法で数を数えるという法則を当てはめて理解しているから
どんなに数が大きくなっても同じ法則が当てはめられるはず」という演繹的な考えで考える
→クワス星人にとっては 47 以上の数を数えたときに数は 5 と認識する
→どちらかが正しい・間違っていると決めることはできない
→規則とはどう解釈してもいずれも同じように正しくいずれも同じように間違っている
→規則に従う正しさとは?規則のパラドクスは人間の認識を超えた問題である可能性
→人間の信じる言語・計算が絶対的な規則ではないということがわかる
→人間は自分がどのように規則に従っているかを認識できない、
自分が使っている言葉・計算の意味すら認識できていない


7-4. なぜ人間はコミュニケーションが取れるのか?
…規則を先に把握してそれに従って言語・行為を行うのではなく、
言語・解釈・行為を先に行なって規則が把握される
→コミュニティにおける営みで無数にある規則の中からランダムに規則が把握される
→人間の本質的な社会性が示されている


8. 幸福論 32項目

バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル

8-1. ラッセルの幸福論
…自分に対して過度な自意識・期待をやめて世界・宇宙においての自分の位置を認識することで、
努力により自分に対して自尊心を持ち、
自分の生活を充実させることができるため幸福になれる
→論理的・現実的・無神論的


8-2. 貴族の生まれ
…4歳の頃には両親が亡くなる
→祖母に育てられる、徹底的なピューリタン教育、勤勉な労働と質素な生活、水風呂に入らされる、夕方まで座ってはいけない、恐怖教育
→ケンブリッジ大学、数学原理
→第1次世界大戦
→政治家として平和・反戦を唱える


8-3. 不幸の原因
…自己没頭、自分のことばかりに意識がいく
→子供時代に満足を奪われた経験があると1種類の満足を追求するようになる
→自己没頭するようになる

❶罪びと
…自分はダメだという気持ちで終わる人、罪の意識に取りつかれてそれを変えようと戦わない人、親・世間から理想を押し付けられた人は縛られ続ける
→親・世間から刷り込まれた信条・愛情の圧政から自分を解放しろ

❷ナルシスト
…世間からの賞賛・承認を過度に求め続ける人、虚栄心は無気力・退屈をもたらす、あらゆる事を純粋に楽しめない
→自分が好きなことをやり遂げて自信を育てろ、承認を求めるのは自信がないから

❸誇大妄想狂
…権力・畏怖されることを過度に求め続ける人、アレクサンダーは幸せだったのか
→権力なんてただの言葉・システムにすぎないと理解する


8-4. 不幸の最大の原因
…過度な自意識による被害妄想
→人間は自分を過度に重要視する、自分という存在・自分のした仕事・行動が世界に及ぼす影響を無駄に大きく見積もるため不当にストレスを感じ不当に悩む
→数字による評価が基盤になる現代社会は過度な自意識が生まれやすい
→過度な自意識を排除することで不幸の要因の多くを消し去ることができる
→物質的に満たされているのに不幸だという人間を検証する


8-5. 競争
…競争に勝つことばかりに囚われてはいけない
→プロスペクト理論、成功したという気持ちが得られれば楽しいが成功・経済力への喜びはある程度を超えると感じなくなる
→ある程度のところで脱却する必要


8-6. 妬み
…他人と比べることばかりに囚われてはいけない、人間の特徴の中で最も不幸になるもの
→他人と比べずに過去の自分と比べろ、歴史の中で自分よりすごい人間はいくらでもいる
→不必要な謙遜もやめろ、必要な謙遜とは何かを言語にしろ
→宇宙の広さを想像して全てを宇宙視点で見れば自分・悩みは小さく見える


8-7. 世間の視線を気にする
…世間の視線に囚われてはいけない、成長はしない
→世間の視線に無関心であることは行動のエネルギーであり幸福の源泉である


8-8. 幸せの源泉
❶人生の目的があり首尾一貫していること
→仕事は人生の目的を具現化する手段、人生の目的・仕事の目的を一致させろ

❷仕事を面白くする
…面白くできる仕事の要素
→技術の駆使、熟練を要する、技術が変化に富んで無限にレベルアップする
→建設性、最初はぐちゃぐちゃだが最後には1つの目的に具体化される、完璧な完成形がない

❸興味の幅を広くする
…私心がない興味が大事、損得・競争がなくやってるだけで楽しい興味を持つ
→思考を新しいチャンネルに切り替える

→❶❷を満たす椅子は限りがある可能性、早く気づいて座った者勝ち
→自分が人生の目的・仕事の目的を一致させて面白くできる仕事に就けている場合、自分以外の人間には椅子がない可能性、自分以外の人間は人生の目的・仕事の目的を一致させれずに面白くできる仕事に就けれない可能性
→他人の幸せなんて求めても仕方がない


8-9. 幸福
❶地味・動物的・感情的な幸福、読み書きができない人間が手にする幸福
❷複雑・精神的・知的な幸福、知ってしまった人間が手にする幸福
→知らないままでいることが難しい現代人は必然的に❷を目指さないといけない
→カウンター寿司を知らない人間は回転寿司だけで幸福を感じれる、
カウンター寿司をSNSなどで知ってしまった人間は自分の勝手な判断で回転寿司で幸福を感じられない、優劣がないにも関わらず

→他人と比べて成功することが重要なのではなく自尊心を獲得することが重要、仕事も皆が思うものでなくてもいいのでは?
→熱意・努力があれば仕事・趣味などで自尊心を持つことができる、
自尊心を持てれば家族・友人に対して愛情を与える余裕が生まれる、
それ仕事・趣味以外の時間を幸福でみたす
→熱意・努力・仕事・趣味・家族・友人・愛情が幸福を獲得するために必要な要素では?


エミール・オーギュスト・シャルティエ (アラン)

8-10. シャルティエの幸福論
…食事・運動を大切にして心をポジティブにして忙しく生きることで、
もともと苦しいのが当たり前の人生をポジティブに捉えて、
不機嫌を遠ざけることができるため幸福になれる
→詩的・抽象的・精神的


8-11. プロポ
…今でいうコラム、原稿用紙2枚くらいの短い文章
→人生で5000以上のプロポ、ジャンルも多種多様だった


8-12. 人生は本質的に苦しいもの
…何も意識・行動しないなら苦しい、悲観主義
→人生は本質的に苦しいものだからこそそれをポジティブに捉えることが重要、自分の心次第
→人は幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ
→外的な環境の変化によって内的な変化を起こすのではなく、
内的な変化によって外的な行動を変化させる
→食事・運動が重要、肉体がポジティブな状態に変化して目の前の現象を幸福と認識できる、物理主義的に捉える、人間が自由にコントロールできるのは判断力ではなく筋肉の動きだけ
→受動的に気分で生きていると不機嫌に関心を持ってしまう、
能動的に意志を持って不機嫌を遠ざけることが必要
→うつ状態は自然な現象、ダメなのはうつ状態を受けて自分を嫌いになること
→暇だと不機嫌に関心を持ってしまうため忙しくする、一番いいのは仕事


8-13. ネガティブな感情との付き合い方
…どんな状況でどんな人がどんな行動をした時に自分がどんな行動をしてネガティブな感情になるか記録する
→原因は自分にも環境にも焦点を当てる、自分が悪い・環境が悪いという楽な思考に逃げてもネガティブな感情は続くだけ


8-14. 感情にとらわれない瞬間を作るために
…思考せずに行動して感情を消す
→余裕がなくなるから感情が消える、態度・仕草・表情、感情は人に伝染する
→現代社会、これをやり過ぎて鬱になる


8-15. 働くことの心得
…自分のレベルで適度に考えてこなせる仕事ができれば幸せですよ
→現代社会、こういった仕事はAIに取られていく


8-16. 喜びを感じるために
…傍観者を卒業する、作られたものを楽しむだけでなく自分でも作ってみる、人間の一番深い喜びはここにある
→現代社会、一番できそうなこと


8-17. 人間関係に悩まないためには
…人間関係において敵は自分だけ、自分を不幸せだと感じさせるのは自分だけ、他人は関係ない
→敵を他人に設定すると楽だから敵を他人に設定するよう脳がプログラムされてるだけ
→現代社会、できそうなこと


8-18. 幸せの源泉
…1番大事なのは礼儀作法
→態度・仕草・表情でネガティブな感情を抑えてポジティブな感情を増やせる
→礼儀作法を自分に求めて行うことが大事、他人に求めてもネガティブな感情が抑えられない、本末転倒


カール・ヒルティ

8-19. ヒルティの幸福論
…不幸・不機嫌を感じたら訓練だと思うことで、
自分でコントロールできないものをコントロールできるという思い込みから解放され、
自分でコントロールできるものに集中して生きることができるため幸福になれる
→論理的・実用的・ストイック


8-20. プロテスタント的なキリスト教・ストア哲学が根底にある
…享楽を避けるべき、喫煙・飲酒はダメ


8-21. 人間は生まれつき怠惰である
…何も考えずに生きていると受動的・怠惰な存在になってしまう
→自分でよく考えることが重要
→不幸は必ずやってくるためそれを自分でどう処理するかによって幸福かが決まる


8-22. 不幸の原因
…自分でコントロールできないものを自分でコントロールできると思い込むこと
→自分でコントロールものには一定量の運・偶然の要素が含まれていている、それにも関わらず自分でコントロールできると思い込むと勝手に不幸になる
→自分でコントロールできる内的なものに集中する必要
→内的なもの・外的なものを明確に区別する必要
→モノは外的なもの、モノがどうなるかを自分でコントロールできない、
大事にしてても壊れる・無くすことがある、これを理解していればモノを失って悲しむことはなくなるはず
→所有するのではなく借りているという感覚が必要


8-23. 不幸・苦しみを直視することが幸せをもたらす
…ダメな自分の弱さに向き合って戦うことで生きる喜びが手に入る


8-24. 信念の旗
…絶対的に拠り所になるもの


8-25. 習慣の力を使う
…人間は生まれつき貪欲・怠惰、いい習慣をつければ人生の難易度は下がる
→ずっと続けていれば抵抗感はなくなる


8-26. とにかくやりたい事を始めろ
…初動してから覚悟を決めろ、人間は怠惰だから始めるまでの覚悟を決めれない
→作業興奮、最初の1回をやればそれ以降の作業は楽に感じるという人間の習性を使う


8-27. 一番いけそうなタスクからルーティン化しろ
…初動はスピードが命、簡単なとこ・得意なとこ
→迷ってる時間はない、迷っている間にチャンスは失われる、人間は死に向かって進んでいる
→一番いけそうなタスクは詳細に洗い出す、それ以外は要点だけ洗い出す
→多くを望まずに捨てていく、捨てるべきところは捨てる


8-28. 疲れたり飽きたりしたら別のタスクに切り替える
…何もしないという時間を作らないことが重要
→朝のゴールデンタイムは意思決定に使う、情報収集はそれ以外の時間でいい、意思決定と情報収集では意思決定の方が重要で優先順位が高い


8-29. 教養は必要
…精神的に満ち足りた人生を送れる
→教養は人柄・人に対する接し方に滲み出る
→人間には自分を一番に考えなきゃいけない時期がある、成長期
→そこを過ぎると他人のために生きれるようになる


8-30. 偽りの教養人
❶暮らしが贅沢
…衣食住といううわべのものに価値を感じている、気品とシンプルさがない

❷本を読む習慣がない
…本を買うお金があって本を読まないのは教養に興味がないということ、本を読む時間がなければ不必要な事をやめろ、付き合わなくていい人間関係が多いだけ、必要ないノイズとしての情報収集をして満足してるだけ

❸騒がしくて慎みがない
…公共の場で大声を出す、自分・自分のビジネスを大きく見せる

❹働けるのに働かない
…働かない自分を自慢する、教養は他人や社会に施しをするという仕事によって鍛えられる

❺仕事の奴隷となっている
…仕事のし過ぎは貪欲さからくる、貪欲は怠惰と変わらない罪、名誉に価値を感じている

❻カネに対して誤った認識をしている
…カネは目的ではなく手段、それすらもわからないのは教養がないということ

❼立場の弱い人・強い人で態度を変える
…マウンティングをするとは教養を実践できていないという事、誰に対しても同じように接することができない


8-31. ライフステージは人生を完璧にさせない
…ライフステージによって目的・課題は異なる
→四季と花、冬に春の振る舞いをする植物をどう思うか、自然な発育を妨げるとエラーが生じる、実がまずい
→各ライフステージを全て完璧にクリアしようとしない、それがあなたという個性・人間らしさ


8-32. 人間の想像力は最大の味方であり敵
…想像力は恐怖を作り出す
→想像力で恐怖を乗り越えて喜びを感じることもできる
→必要なのは恐怖を乗り越えるための覚悟


9. フェミニズム 19項目

…多様性が日常生活と切っても切り離せなくなった

9-1. フェミニズム
…女性に対する差別・不平等の解消を主張する考え
→男性嫌い・男性敵対主義も混じってきた


9-2. 産業革命で民主化が進んだ
→フェミニズム第1波、フェミニズムの始まり、女性の権利獲得、フランス革命、フランス人権宣言、人間と市民の権利を主張
→人間とは主に男性を指していた、貴族から市民へと権利の譲渡があったもののその権利は女性には与えられなかった
→オランプ・ド・グージュ、フランス、女性および女性市民の権利宣言、反革命の容疑でギロチン
→メアリ・ウルストンクラウト、イギリス、男女の教育の機会均等を求める、男性が女性の知的な向上を妨げているため女性は男性に依存するしかない、それが堕落した男性を作る
→エリザベス・キャディ・スタントン、アメリカ、女性参政権運動、セネカフォールズ会議
→ウジェニー・ニボワイエ、フランス、女性の声、2 月革命、
革命の中心にいたのがプロレタリアート、多くの人が政治に関心を持った
→サフラジェット、イギリス、エメリン・パンクハースト、法を破るのも辞さないという姿勢


9-3. 産業革命で労働を担っていた女性は必要なくなり、
専業主婦としての役割を分担されるようになった、ステレオタイプの形成
→フェミニズム第2波、女性らしさからの解放、女性というステレオタイプへの反発
→シモーヌ・ド・ボーヴォール、フランス、第二の性、人は女に生まれるのではなく女になるのだ
→ドリス・レッシング、イギリス、黄金のノート、
女性の置かれた状況をリアルに言語化し精神的支柱になった
→ベティ・フリーダン、アメリカ、新しい女性の創造、女性の苦悩を取材、
教育を活かせていない、女性が無意識に諦めていた状況を示しそうではない可能性を提案
→キャロル・ハリッシュ、個人の悩みは個人の感じる些細なものではなく政治が解決する問題、働きかけることで変えることができる


9-4. 第1次世界大戦・第2次世界大戦で労働を担っていた男性は戦場へ行き人手不足になった
→ウーマンリブ、女性は社会進出により自立に関する自信を得る、
ベトナム戦争反対とともに女性のあるべき姿からの解放を訴える、
男女の雇用の機会均等・人口中絶の権利と性暴力の撤廃を求める

→ケイト・ミレット、アメリカ、性の政治学、家父長制の解体を求める
→MLF、5月革命、女性の失望から始まる、新しい活動の中においても女性の扱いは脇役だった、男女の雇用の機会均等・人口中絶の権利と性暴力の撤廃・家父長制の解体を求める
→国際女性年、1975 年、第1回世界女性会議
→女子差別撤廃条約、男女の完全な平等を求める
→フェミニストが目指す理想的な女性像を形成、女性はこうあるべきという価値観の押し付け


9-5. フェミニズムの内部分裂
❶平等派、男女の性差に同一性を見る
❷差異派、男女は存在論的に異なるもの
❸マルクス主義フェミニズム、資本主義が女性を抑圧する
→LGBTQ・人種・階級・身分で差別される人を排除してしまっている

→フェミニズム第3波、フェミニズムの再定義、個人主義・多文化主義が土台
❹リベラルフェミニズム、法によって男女平等を実現できる
❺ラディカルフェミニズム、男性は抑圧者で男女は必然的に敵対する、ポルノの存在を社会的に容認することは女性蔑視を再生産し女性解放の障害になる
❻セックスポジティビティ、性産業に規制を設けても性産業従事者が刑罰を受けるべきでない、セクシャルハラスメント・ドメスティックバイオレンス・セカンドレイプなどの概念が浸透
→自分たちの女性らしさは自分たちで定義する、フェミニストが勝ち取った権利は当たり前のものになっていて固定化する危険性

→ライオットガール、アメリカ、私たちなりの生き方を積極的に発信、ガールパワー、パンクミュージックの流行と政治運動を組み合わせたサブカル運動
→インターショクショナリティ、キンバリー・クレンショー、ブラックフェミニズム、被差別属性を持つアイデンティティが複合すると別の特別な差別が生まれる


9-6. X 世代、ラリー・ペイジ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、SNS の登場
→フェミニズム第4波、SNS などを活用したオンラインアクティビズム
→#MeToo 運動、性的嫌がらせを受けた女性が metoo と書き込めば
この問題の大きさを人々に知らせることができるのではないか?
声をあげることは勇気がいることだったため
→被害者は声をあげて当然であるという常識を提示、フェミニズムの裾野を広げる、
男性のフェミニストも増える
→#BringBackOurGirls 運動、ボコハラムが300名近い女子を拉致、ナイジェリアのイスラム過激派
→スラックティビズム、一見社会運動に参加しているように見えても実際は効果がなく自己満足


ジュディス・バトラー

9-10. ジェンダートラブル
…フェミニズムの現状に問題提起
❶性別の二分法とその分類は正しいのか?
❷フェミニズムの主体は誰なのか?
❸フェミニズムが取るべき戦略とは?


9-11. セックス
…生物的な性、身体的特徴
→生まれつき、遺伝
→変えることはできない


9-12. ジェンダー
…社会的な性、精神的特徴
→作られる、服装・感情・仕草
→変えることはできる


9-13. ジェンダー規範
…男女はこうあるべきという社会的通念
→ジェンダーは記号のようなものではないか?
→引用と反復により性現象が顕在する
→日常のシーンでこういう場合にはこういうべきという雛形がありそれを引用しているだけ
→赤ちゃん、元気な男の子、元気なという特別でない言葉が男の子を表す記号となっている、女の子の場合は元気なが可愛いに変わる
→成長するとこのような引用と反復を浴びる、性の規範が強化される
→セックスすらも記号の引用と反復で強化されているのでは?
→セックスはすでにジェンダー化されているのでは?
→セックスとジェンダーの2つに分けるのはおかしいのでは?牛と動物のような


9-14. フェミニズム第2波の失敗はこの間違いにあるのでは?
…フーコーの生産的権力を使って説明
→同性愛者と異性愛者における分断の問題には同性愛者という概念の主張にこそ原因がある


9-15. 生産的権力
…概念によって新しく生まれる新しい力

→フロイト、ノイローゼ患者の心には性への無意識的抑圧が生きていると考えた、解放することで症状を消失させられる
→フーコー、解放とは抑圧という概念によって生み出されたもの、
抑圧されているという事実を強調すると事後的に解放されているという状態が規定される
→新しい概念は常に元の集合でないものとして処理され元の集合を強化し浮き彫りにする
→同性愛者という概念が生まれると二分法が強く意識され、
異性愛者のノーマル性が強くなり、同性愛者の排除傾向が強くなる
→ジェンダーという概念が生まれることで二分法が強く意識される


9-16. フェミニズムの主体とは?
…フェミニズムにおける主体を強く規定したのがフェミニズム第2波
→主体を設定することで外部として存在し元の集合と対立
→フェミニズム第3波では誰のことも指していないのでは?
→カテゴリーや主体を設定するとその中に押し込むことは可能だが個を無視することになる、多様性を否定することになる


9-17. フェミニズムが取るべき戦略とは?
…ジェンダーを真偽で語ってはいけない、ジェンダーは行為遂行的で成功・失敗を問うもの
→引用元をずらしながら反復する必要がある、身体的アクションも含む
→ドラグクイーン、女性を過剰に演出することで女性のパロディを演じて
ジェンダー解釈に疑問を投げかける
→セックス・ジェンダー・セクシャリティの一貫性とはパロディ・幻想である
→身体的アクションは言語を超える過剰なものであるため多くは失敗する
→失敗こそにパロディの本質があり引用のずれた行為を反復することに意味がある、解釈が少しずつ変わっていく
→失敗前提のパロディを作り出すことこそ、内部を強化することなく解釈を変えることができる
→フェミニズム第3波の浸透に貢献したのでは?


9-18. 事実確認的発話
…何かしらの事実についての発話
→真偽を判断できる


9-19. 行為遂行的発話
…状況を変化させる発話
→成功・失敗が起きうる


10. 反出生主義 17項目

10-1. 反出生主義
…出生を否定、生は苦である、出産は悪
→人間が滅亡するしかないという結論に持ってきがち
→本当にそうか?という視点で見ていく


10-2. グノーシス主義
…世界に苦しみがあるのは世界を作った神が悪だから、魂は善、身体は悪

→神が善である真の世界はどこかにある、魂は真の世界を目指すべき
→人間は存在すべきでない、禁欲的・反出生


10-3. 東方グノーシス主義
…グノーシス主義+ゾロアスター教
→弾圧される、西方はアウグスティヌス、東方は浄土宗


ショーペンハウアー

10-4. 生への意志
…植物も動物も人間も物理法則ですら宇宙の何らかの意志に則って生き残ることに執着
→無限な欲望なので満たされず苦痛、満たしても退屈で苦痛

→苦痛にまみれた人生をどうやって生きていけばいいのか?
→芸術に触れる、他者と関わる、一時的
→禁欲と朗らかさ、生への意志を捨て去れ、客観(苦)と主観(朗)
→最良の方法はそもそも存在を生み出さないこと


デイヴィッド・ベネター

10-5. 快楽と苦痛の非対称性
…快楽と苦痛・存在と非存在のマトリクス、非存在者にとって剥奪される快楽が存在しない
→非存在の方が存在より価値が高いと言える、地球上の理想の人口は0である
→自殺を否定、生まれてしまった生を無理に終わらせる必要はない

→存続しているのは
❶性欲を満たした副産物
❷生む側のエゴ
❸QOL を過大評価(ポリアンナ症候群)


ピーター・ウェッセル・ザプフェ

10-6. 成熟した意識
…過去と未来を認識、未来を予測できる、人間特有、進化の過程で手に入れる

→いずれ死ぬという確信、生きることに意味があるという想定、動物的でない
→意識が原因となる欲望を人間は満たせない、苦痛を引き起こす
→人間の意識は成熟し過ぎて人間を苦しませる原因になっている
→存続しているのは意識の要請を無視して苦痛から目を逸らしているから
❶孤立、意識からもたらされる破壊的思考から離れる、生への失望を見ないようにする
❷固定、意識の中で何かを信じることで本質から目を逸らす、神・宗教・運命・道徳
❸気晴らし、別のことに集中して意識を見ない、仕事・子育て
❹昇華、意識からもたらされる破壊的思考をポジティブに変換、芸術
→人間は人間にならないように全ての時間を費やしている
→苦痛を断ち切るには人間が滅亡するしかない


フリオ・カブレラ

10-7. 存在の終末性
…生が否定される理由、人間を苦しめる要素はいつか臨界点に達し人間を滅亡させるだろう
❶確定した腐敗、生まれた瞬間から死に向けて進む苦痛
❷摩擦、身体的痛み・精神的痛み・他者への攻撃性という 3 つの苦痛
❸防衛、生きるために❶❷に対抗する本能、ザプフェ


10-8. 構造的不可能性
…人間は攻撃をしてしまうのは必然、そういう構造の中に生きている
→教育では他者への攻撃をコントロールできない
→人間が滅亡するしかない


10-9. 出産の同意における非対称性
…子は生まれる前に同意できない、出産は人間を苦痛に送り込む、芥川龍之介の河童
→出産は親の利益のみ考慮し子の損失に無関心だからこそ実行されるもの
→生殖をしないという行動は自分でコントロールできる


カール・ライムント・ポパー

10-10. 負の功利主義
…人間全体での最小苦痛の追求、快楽が苦痛に勝ることはない
→人間が滅亡すれば苦痛は0で最小となる


ヤン・ナーベソン

10-11. 出生に関する非対称性
…出産には道徳的義務はない、出産しないには道徳的義務がある
❶子供が幸福になると確信できても出産に道徳的義務はない
❷子供が不幸になると確信できれば出産しない道徳的義務がある
❸どちらもわからない場合出産に道徳的義務はない


ブルーノ・コンテスタビーレ

10-12. オメラスから歩み去る人々、アーシュラ・K・ル=グウィンの SF 小説
…自分から遠い存在の苦痛を無視することによって自分の幸せが成り立っている
→全体の苦痛を自分のこととして考えれば世界に嫌悪感を抱くはずでは?


エミール・ミハイ・シオラン

10-13. 生誕の厄災
…人間存在の無意味性
→人間の人生はいつか終わるという希望のみ抱くことができる
→自殺の肯定、合理的な人間は自殺以外の行為を剥奪されていることに気づく


10-14. カイエ
…生まれてきたことに対する後悔、全てを疑いそこから生まれる新しい結論ですら放棄する
→世界に対しての希望や興味を失いただ絶望だけを生産


10-15. 仏教と反出生主義
…ブッダは一切の苦難の源として生まれるという事件を置いた、十二因縁


10-16. 四法印
❶諸行無常、変わらないものなどない
❷諸法無我、全ては関係で成り立つ
❸涅槃静寂、無情を知り悟りに至る
❹一切皆苦、人生は思い通りにならない


10-17. 六道輪廻
…生まれる可能性がある世界
❶地獄界、言葉では表せない最も苦しい世界
❷餓鬼界、飢えと渇きに溢れた世界
❸畜生界、動物の世界
❹修羅界、争いだらけの世界
❺人間界、私たちの世界、解脱の可能性、出生の肯定
❻天上界、最も楽しい世界


11. 時間 15項目

…時間とは何か?存在するのか?

アリストテレス

11-1. 時間とは変化を計測した数
…動きの痕跡、時間は相対的

→日時計は太陽の位置の変化を計測、お風呂の時間は料理を作るのと同じ時間
→変化が0の場合を実現できれば時間も変化しない

・空間に空っぽの場所はなくお互いの位置を決めるための相互作用の中に存在、空間は相対的


アイザック・ニュートン

…万有引力の法則

11-2. 時間とは一定の速度で流れる
…時間t、時間は絶対的、相対的な時間を認めた上で

→あらゆる物理理論が発達、世の中が発展
→この時間・空間の感覚が刷り込まれる
→超マクロレベルでは通用しない

・空間に空っぽの場所がある


アルベルト・アインシュタイン

…重力理論

11-3. 時間とは伸び縮みする
…重力・光速という絶対的なものの影響、時間は相対的

→GPS、人工衛星への重力・速度を加味して計算をして現在地を表示
→超ミクロレベルでは通用しない、量子は確率のまま存在、重力の力が弱い
特異点では通用しない、ブラックホール、重力の強さが強い

・空間も伸び縮みする、観測者の立場によって互いに変わる


マックス・プランク

…量子論

11-4. 時間とは向きが確定できないもの
…光はエネルギーを持った量子の集まりである

→アインシュタイン、光量子仮説、光電効果、物質に光を照射した際に電子が流れる
→ミリカン、光量子仮説の証明、油滴実験
→ブロイ、物質波、光子の粒子的・波動的性質を物質粒子に拡大
→シュレディンガー、シュレディンガー方程式、波動関数
→ボルン、波動関数はそこに量子があるかもしれないという確率分布、量子は確率的?
→ハイゼンベルク、不確定性原理、量子の位置・運動量を同時に正確に求めることは不可能
→ノイマン、人間の意識によって波の収縮が起こるのでは?


11-5. 量子の特徴
⑴粒状性、物理的変数が離散的・不連続で粒状
⑵不確定性、状態が不確定
⑶関係性、周囲との関係に依存して相互作用する


ルドルフ・ユリウス・エマヌエル・クラウジウス

…エントロピー増大の法則

11-6. 時間とは過去と現在の差異
…エントロピー増大により時間の向きを見れる
→自然を近似的・統計的に記述した時に初めて生じる、人間の仕方でパターン認識する


カルロ・ロヴェッリ

…ループ量子重力理論
→マクロな世界の重力理論とミクロな世界の量子論を統合しようとする

11-7. ループ量子重力理論
…世界は量子で満たされていてその量子の確率的なパターンによって構築される
→素粒子には全てのパターンを表現する情報が備わっている
→物体の運動を計算する際に時間・空間の変数を必要としない


11-8. 時間とは存在しない、空間も存在しない
…仏教の悟りとは自分の記憶や時間・空間からの解放なのかもしれない

→正しいとしても人間の感覚がアプリオリに備え付けられているならば、
その想定内の時間を超えた世界を認知することはできない
→解説しようとしても認知の縁をなぞっているだけ、本質には触れられない


11-9. 世界の 4 つの力
❶電磁気力、電力と磁力を合わせた力
❷強い力、クオーク同士を結びつける力
❸弱い力、クオークの性質を変える力
❹重力、質量をもつものを引きつける力、引力しか持たない
→重力を量子化しなくてはならない、割り算が必要
→0が含まれる、無限大になる、マクロはミクロに押し込んできた


11-10. 重力場は量子でできていると考える
→重力場は時間・空間を表象
→時間とは量子でできている、空間も量子でできている
⑴粒状性、時間・空間は不連続なはず
⑵不確定性、時間・空間は不確定なはず
⑶関係性、時間・空間は関係性を表しているはず
→時間・空間には最小単位が存在、0ではない、プランクスケール


11-11. プランク時間
…$${10^{-44}}$$秒、時間の最小単位


11-12. プランク長
…$${10^{-33}}$$cm、空間の最小単位


11-13. スピンネットワーク
…グラフ理論のような量子同士のネットワークを想定、ノードという点、エッジという線
→スピンという量子の回転の方向が相互作用しパターンが構築される
→重力を表す輪っかがある、ループ


11-14. 量子の非可換性
…A×B=B×A ではない、原因と結果は双方向に開いている


11-15. 視界のぼやけ
…世界には量子によるあらゆるパターンが存在するが人間はあるパターンでしか認識できない
→その結果現れるのが時間・空間
→トランプ、赤 6 枚連続・黒 6 枚連続、エントロピーが小さいと感じる
シャッフルするとエントロピーが増大したように見える
→両者を比較すると後者が後の配置だと認識できる


12. 新実在論 13項目

…存在とはなにか?世界とは何か?

12-1. 形而上学による科学信仰
…絶対的な真理がある→それを解明するのは科学→科学は正しい、それ以外は間違い
→全体主義、科学が言及できる世界は人間が想像するより遥かに小さいのに


12-2. 構築主義による分断
…真理は認識不可能→相対的な認識がある→共通の物差しで測れない、メランコリー
→相対主義とニヒリズム


マルクス・ガブリエル

12-3. 新実在論
…存在とは個性によって意味の場に浮き出ている状態、あらゆる存在を認める
→世界は存在しない、世界と認識しているのは特定の意味の場における特定の表現でしかない
→全てを包括する真理はないが一人一人に真理はある、真理は共通の物差しで測れる
→人間は意味のない存在ではない、苦労して分かり合おうとすることが生きる意味ではないか?


12-4. アリストテレス、形而上学、人間は世界をありのままに認識できる、実在
→デカルト、それまでの哲学を一旦捨て哲学の再構築しようとする
→カント、構築主義、人間は世界をありのままに認識できない、観念
→ポストモダン、人間同士でもその認識を共通の物差しで測れない、分かり合えない


12-5. 形而上学においての世界、現実に成立している事柄の総体
…現実に成立しているとはどういうことか?空想は現実に成立しているのか?
→認識というフィルターは邪魔、人間を排除
→人間を排除した世界を現実に成立している事柄の総体と呼んでいいのか?


12-6. 構築主義においての世界、現実に成立している事柄はなく表れている限りでの事物だけが存在
…構築される前の対象自体の存在は認められないのか?
→対象が認識によって構築されていても構築される前の対象が存在しないことにはならない
→構築主義自体が構築物であり矛盾が生じる
→認識は構築物ではなく実在である


12-7. 物理主義
…全ての現象は物理学的理論で説明できる、認識論的、認識の可能性について、必然的に唯物論


12-8. 唯物論
…世界には物質しかない、存在論的、存在の事実について
→想像による表象は物質的でない、想像する脳は物質的
→物質的でない表象を否定するために表象の存在を認めなければならない


12-9. 宇宙は自然科学(物理学)の対象領域
→世界は宇宙を含めた全ての対象領域、科学の対象ではない様々な要素を含む
→物理主義が正しいとしてもあくまで宇宙について、世界ではない


12-10. 椅子の存在を考える
…形而上学、椅子だけが存在する、実在が存在する
→構築主義、それぞれの認識に椅子が存在する、コウモリの認識ではわからない、観念が存在する
→新実在論、考えうる全ての椅子が存在する、実在も観念も存在する
→存在とは個性によって周りから浮き出るもの、だから認識できる
→意味の場という前提の中で個性が浮き出る、意味の場は別の意味の場の中で浮き出た存在

→レストランを探すという意味の場では椅子は存在として浮き出ない
レストランの内装という意味の場では椅子は存在として浮き出る
→世界とは全ての意味の場を収納する意味の場なのでは?
→世界は浮き出てこない、世界はフラクタル構造


12-11. フラクタル構造
…全体を部分に分解したときにその部分で全体と同じ形が再現されていく構造
→始まりと終わりがない、全体という概念が存在しない
→全ての要素を包括する絶対的な何かはない、一元論を否


12-12. 宗教とは人間の存在に意味を付与するもの、自分に意味を付与したいという欲求の現れ
❶フェティシズム、自然物・人工物に神秘的な力があると信じて信仰・儀式の対象にする
❷無限なものに対する感性、無限・始まりと終わりのような理解できない問いに答える
→神が表しているものは人間の感性では捉えられない無限性
→科学も宗教の一種、何らかの意味を付与するための存在、信じて生活するようになっている


12-13. 芸術とは人間に意味を直面させるもの、目の前のものがどのように現象しているかを突きつける
…何かの意味を炸裂させなければ芸術は存在しない、認識の数だけ真実がある
→芸術を鑑賞することで同じものに対してあらゆる捉え方・考え方があることを理解できる
→包括する真理を探そうとする思考を克服できる


13. 思弁的実在論 11項目

クァンタン・メイヤスー

13-1. 思弁的実在論
…相関を前提にしてもその外にある絶対的なものにアクセスできる

→絶対的なものとは何かについて考える
→ポストカントの人間中心主義・形而上学的実在論へ批判的
→特定の方法で認識方法の外にアクセスできるのではないか?
→命題に向き合う上での道具を紹介
→いかなるようにも、そうであるように存在し、そうであり続ける理由はない
→世界は次の瞬間に全く別の世界になる可能性がある


13-2. 絶対的なものとは何かを考える
…目の前にリンゴがある、人間はリンゴがあると認識できる
→何を認識しているのか?絶対的にそこにあると言っていいのか?
→猫は人間と同じようにリンゴを認識するのか?
リンゴを空間から独立した特定の存在として区別するのか?
→絶対的にそこにあると言えない気がする
→光の刺激を受け取って波長を感覚的に解釈してリンゴみたいな存在だと判断
→人間はリンゴがあると認識しているとき、リンゴそのものを絶対的に認識しているのではなく、
人間の認識とリンゴだと認識できる何らかの存在による相関的関係を見ているだけでは?


13-3. 思弁的実在論の構成
…独断的形而上学を否定
→理由律を否定
→相関主義の問題点を挙げる
→非理由律を獲得する
→非理由律を原則にし相関主義を再解釈し、モノ自体(絶対的なもの)が確かに存在することを証明、
ヒュームの懐疑論に何らかの結論を提示


13-4. 独断的形而上学
…ある実体はただ存在する、独断的に絶対化
→絶対的なものは相関と無関係に存在、カント以前では絶対的なものとは何かが最大の関心
→古代ギリシャ、世界の始まりを求めた、相関と無関係な絶対的なもの、原子論へ到達
→プラトン、絶対的なものをイデアに見る、魂はそれに触れられる
→中世、絶対的なものを神とし、それを証明しようとする
→デカルト、我思う故に我ありから神の存在を証明しようとする
→ライプニッツ、理由律、〜が存在しているのには〜という理由が必ずある
→ヒューム、相関主義、因果は存在しないのではないか?習慣による勘違い


13-5. カント、形而上学的実在論
…現象(人間が認識したもの)とモノ自体(絶対的なもの)という 2 つの概念で考える
→相関、現象とモノ自体の関係
→相関主義、主観(人間の認識)は現象を認識できてもモノ自体を認識することができない、現象とモノ自体の関係性だけ認識できる
→人間には固有の認識方法がある、その外にアクセスすることはできない
→強い相関主義、相関の外のモノ自体は思考することすらできない、
相関は絶対的かもしれないし絶対的でないかもしれない、
相関は絶対的か考えた時点で相関の外に触れる、
ギリギリ考えられるのは相関が存在しているという確からしい事実だけ、
ヴィトゲンシュタイン、ハイデガー
→主観主義的形而上学、主観の存在を絶対化する、相関は絶対的で必要とされる主観も絶対的、
間がいなくなっても主観は存在していて絶対的な相関も存在する、
フッサール、ヘーゲル、ニーチェ、ショーペンハウアー
→相関を前提にしないと実在について語れない
→神の存在証明は相関的循環に陥っている、
神は存在する(と私たちは思っている)(と私たちは思っている)(と私たちは思っている)…


13-6. デカルトの神の存在証明
…方法的懐疑をを使って全ての存在を棚上げにしてあらゆるものについて思考して疑う
→あらゆるものは疑えるが、思考して疑っていることは疑いようがない
→思考する自分の存在は確実である
❶アポステオリな証明、その自分の意識から出発する
❷アプリオリな証明、神の概念から帰結する、神は完全、存在してないものは不完全、よって神は存在する
→❷に着目、存在するという述語は存在を表せない、存在することを前提にして述べている、神は完全であることは神の存在を前提にしている
→実在必然性を主張できない、存在が必然的に存在するという哲学は全て独断的
→理由律も否定、無限に理由が連なる、自分を理由とするような絶対的な存在がある
→相関主義を否定することはできない、実在必然性を主張することになる
→独断的形而上学と相関主義をエポケーさせて新しい立場を模索


13-7. 相関主義の問題
❶祖先以前的言明を理解できない
…主観を前提とした相対的な言明に閉ざされる
→絶対的なものを思考する可能性を認める必要

❷隠された真実から逃れられない
…信仰主義との類似
→バイデンが大統領になる、トランプ側は表の操作が行われたと主張
→証拠がない、通常のは証拠がないことは言明の不正当性を表す

→陰謀論、不合理な信念を隠された真実で正当化、
隠された真実があること自体が正当性を表すという考え
→宗教、この教えは不合理でも何か深い意味があるはずだ
→隠された真実が相関の外でも存在しないことを証明しなくてはならない
→相関の外で機能する思考原理が必要


13-8. 人間が認識しているのは実在ではなく現象という言明を再解釈
…人間の認識の外には何かがある
→強い相関主義を対立
→強い相関主義の論法の矛盾を考える、不可知論的
→死後についての主張
❶キリスト教的独断論、人間は死後も存在する、相関の外に存在する神、相関の必然性
❷無神論的独断論、人間は死とともに存在しなくなる、相関の外には何も存在しない、相関の偶然性
❸強い相関主義的不可知論、人間の死後のことはわからない、相関の外はわからない
→無意識に相関の偶然性を前提としているのでは?
死によって相関が失われるということは相関がなくなることを前提としている
→事実性の絶対性の証明は偶然性の必然性を用いる必要、
偶然の必然性は相関が存在しない可能性を含む
→非理由律の獲得、〜が存在しているのには〜という理由がない
→別様である可能性、どんなものも今そうであるように存在しそのようにあり続ける理由はない、非存在の可能性を含む、相関の外にある概念
→別様である可能性を絶対化できれば相関の外にアクセスできる

→モノ自体は無矛盾である、モノ自体は確かに存在する
という2つのテーゼを非理由律で証明できるのか?
→必然的存在者は不可能、矛盾した存在者は必然的なもの、矛盾した存在者は絶対的に不可能
→矛盾した存在者の必然性の証明に何を使うかが問題になる、
無矛盾律を使用すると循環論法に陥る、無矛盾性を導出するために無矛盾性を使っている
→無矛盾律でなく非理由律によるものである、まず〜であり次に〜となる
→カオスの全能性、物事は理由なく変化する→矛盾した存在者は時間経過による変化とは関係なしに存在しつつ存在しない
→矛盾した存在者は存在しないかつ存在するを真にする、存在しないかつ存在するは必然的な存在を示す、矛盾した存在者は必然的に存在する
→モノ自体は無矛盾であることが示せたが、モノ自体は確かに存在することを示せないといけない
→モノ自体は確かに存在する、無ではなく何かが存在するのか?
というライプニッツのテーゼに置き換え可能
→非理由律を用いる、偶然的なものが必然的に存在する、
ものの存在が偶然的であるためには別様である可能性がないといけない
→強い解釈が残る、偶然的なものが存在しなくてはならない
→存在しないこともありうるが存在する、存在しうるが存在しない、
偶然性を後者のみの属性を持つものとして思考できる
→存在が偶然的であればずっと存在するもずっと存在しないもありうる、
ずっと存在しないケースで無ではなく何かが存在するとは言えないのでは?
→どちらかのパターンだけを考慮できない、
存在しうるが存在しないでは絶対的に偶然性が前提となるため存在する
というパターンを無視することはできない
→モノ自体は確かに存在することが示せた


13-9. 事実論性の原理
…非理由律はものが〜という理由で存在するというような必然性を否定、
相関の外のものについて肯定的な言及を可能とする
→世界を司る法則が次の瞬間に別様に変わる可能性
→あまりに直感に反する
→因果律の破綻を思考しても矛盾は生じない、
法則の安定性を無視するような結果を予測しても矛盾は生じない
→因果律に時間的な概念を取り入れると確定していない事象を述べることになるため、確定していない事象に対して因果に反する予想をしてもありうる事象として認めざるを得ない
→論理だけを頼りに因果律を考えると因果に従った結果と因果に反する結果は全くの同値、因果に従った結果を優先する根拠はない
→人間は習慣ゆえに因果律の必然性を信頼している、信頼しないと生きていけない
→自然法則は安定しているのでは?
→自然法則は理由なく頻繁に変わらない
→宇宙は無限の目をもつサイコロ、
→サイコロの目が頻繁に変化しないからサイコロの目は必然的、
偶然的ではないと考えるのはサイコロの裏に隠された理由(イカサマ)があると考えている
→自然法則が安定していることに隠された理由を仮定すること自体が無矛盾律に矛盾する
→宇宙に確率論を適用しなければならない


13-10. カントールの定理
…任意の集合 A に対して、A の全ての部分集合の集合は A よりも大きい濃度をもつ
→集合 A の部分集合からなる集合の要素の方が多い
→少なくとも 1 つの公理系において試行可能なものの全体は試行不可能
→宇宙に確率論を適用することはできない、
宇宙で起こる全ての現象に対して確率論を適用しようとしても数的全体を規定できない、サイコロの目が全部で何個かわからない
→宇宙に確率論を適用しないことができる
→別様である可能性に対する反論として実際の頻繁さを用いることはできない
→自然法則は安定しているのでは?は反論になっていない、
偶然的な自然法則がごく稀に変わる可能性を否定できない、
自然法則が安定しているという事実は法則の偶然性と矛盾しない
→世界が別様である可能性が保持できた


13-11. 祖先以前的言明への向き合い方
…独断的形而上学、絶対的必然者の存在証明により肯定
→形而上学的実在論、相関主義、今の人間が考える後方投射、
自分たちが存在しないときのことは認識できないが、そうだと考えると過去を語ることはできる
→思弁的実在論、科学は隔時性の問題を扱うことができる
→地球は45億年前に誕生したというとき、そこに人間の存在の有無は考慮されていない、存在していなくても地球は45億年前に誕生した
→ガリレオにヒント、自然科学に数学を取り入れ原理を見出す、
数学化された世界は相関とは独立した世界
→人間中心的な経験科学から脱人間中心的な数理科学へ、思考の脱中心化
→カント哲学は思考の中心化、プトレマイオス的反転、脱人間中心的な数理科学への反発
→科学と哲学は対立していないように見えて大きな対立が存在、
哲学は科学における隔時的なものに対する絶対的認識を認めることができない
→思弁的実在論はそれに対するコペルニクス的転回、哲学側から科学を認める方法の模索
→数理的科学が絶対的なものにアクセスできる可能性はあり、
同時に絶対的なものはどこまでいっても偶然的なもの
→科学的認識は絶対的なものにアクセスできると科学的認識は必然性を欠く
という言明は矛盾なく共存できる可能性
→自然の数理的科学は可能か?という問題を解決する必要
❶数学的言明は隔時的な言明だと証明、主観のない世界を語れているという事実を立証するか
❷カントール的非全体の絶対化、全ての公理系を包括する定理で証明しなければならない
→❶❷を行う上での条件、非理由律に従うこと、モノ自体の無矛盾性と存在を認めること、
独断的形而上学・相関主義に従わずコペルニクス的脱中心化に従うこと、
数学的に思考可能なものは絶対的に可能であるというデカルトのテーゼを堅持すること
→相関の外を思考するための十分条件ではない


おわりに

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